「コンクリートが危ない」小林 一輔
2019/02/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(67点)
■内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
の講演会に参加しました。
https://sip-hokuriku.com/wp-content/uploads/2018/05/2018.5.11.pdf
金沢大学の鳥居教授によると
北陸、東北のコンクリートにおいて、
今まで凍害、塩害と言われていたものは、
実はアルカリシリカ反応(ASR)が
原因となっているものが多いとのこと。
アルカリシリカ反応(ASR)とは
コンクリートのガンと言われ、
骨材として含まれる岩石が
コンクリート内のアルカリと反応して膨張、
ひび割れが発生するものです。
1980年代にコンクリートに洗浄されない
海砂が使われアルカリシリカ反応(ASR)を
誘発し、短期間にひび割れ、
大問題になったことがありました。
アルカリ総量規制や骨材を制限するなど
対策は取られてきたはずなのに
どうしてこんなことになっているのか。
ということで当時の書籍を購入しました。
・アルカリの総量規制による防止策は、
わが国においても採用されている。
なぜ、海砂の使用がアルカリ骨材反応と
関わってくるのであろうか?それは、
海砂中の塩分がコンクリート中で
アルカリをつくりだすからである(p80)
■鳥居教授の話では、砂との
アルカリ骨材反応により微小な亀裂ができ、
そこに水が進入して凍害となる。
または、亀裂から融雪剤の塩分が進入して
アルカリ骨材反応を加速させ、
鉄筋を腐食させるというのです。
アルカリ量と骨材の制限により
アルカリ骨材反応が生じる可能性は
ほとんどないと考えられていましたが、
実際には凍害、塩害の影に隠れて
アルカリ骨材反応が起きているのです。
・通常のセメントに含まれているアルカリ量は
0.6%前後であって、このていどのアルカリを
含むセメントによって、アルカリ骨材反応が
生じる可能性はほとんどない(p78)
■鳥居教授によると
アルカリシリカ反応(ASR)は
セメントの20%をフライアッシュと
置き換えるだけでほとんど予防できるという。
そして、欧米では
アルカリシリカ反応(ASR)防止のために
フライアッシュをコンクリートに
混ぜることは常識だという。
※フライアッシュ・・火力発電所で石炭を燃焼させた後に
発生する石炭灰。微細な球状。
海外と日本でフライアッシュの利用に
差があるのは不思議なことですね。
今後も調査していきたいと思います。
小林さん
良い本をありがとうございました。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・第一段階の長さで新たに明らかになったのは、
骨材としてアルカリ反応性の岩石が
含まれていたことである。
それは、火山ガラスを含む安山岩と、
微小石英を含む砂岩および粘板岩(p15)
・アルカリ骨材反応による劣化の兆候が
出はじめるのは、一般に建設後約10年であるが、
阪神高速道路の高架橋の場合には、
コンクリート施行後四年後に
異常なひび割れが発見され、
フランスのダムの例では建設後、
40年も経ってからアルカリ骨材反応による
ひび割れが発生している(p90)
・1995年1月の阪神大震災では、高度成長期に
建設された多くのコンクリート構造物が破壊された。
これらの構造物のコンクリート破片を観察すると、
不思議なことに、砕石粒や砂利など大粒の骨材が
ひじょうに少ないことに気がついた。
コンクリート全堆積の約40%は、
砕石や砂利などの大粒の骨材で
占められているはずである・・
どこに消えてしまったのか?(p147)
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【私の評価】★★☆☆☆(67点)
■目次
1 コンクリート構造物に異変
2 コンクリート構造物の寿命
3 腐食する山陽新幹線高架橋
4 コンクリートのがん
5 コンクリートが分解する
6 明るみになった手抜き工事
7 高度成長の負の遺産
8 良質な遺産を残すために
付 分譲マンションへの対策