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「図解入門ビジネス 最新水素エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本」今村雅人

2021/10/02公開 更新
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「図解入門ビジネス 最新水素エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本」今村雅人


【私の評価】★★☆☆☆(64点)


要約と感想レビュー

 最近の水素エネルギー関連の情報をまとめた一冊です。日本国の水素基本戦略は、2030年には商用規模のサプライチェーンを構築することです。しかし、私には「なぜ水素なのか」ということが理解できていませんでした。そこで、この本を読んでみたのですが、一般的な情報をまとめただけで、理解は進みませんでした。


 とりあえず、今、わかっている情報で水素の可能性について考えてみましょう。水素の可能性を考えるうえで、まず水素をどこから作るのかが重要です。考えられるのは、現状と同じように化石燃料から水素を製造することと、余剰の電気から水素を作ることです。


 まず化石燃料から水素を製造することを考えてみましょう。メタンから水素を作ると、熱量が半分になります。つまり変換効率は50%くらいです。トヨタのミライのような燃料電池車だと小型なので効率が40%くらいとすれば、最終効率は20%くらいでしょう。自動車の効率はせいぜい15%くらいなので、水素の設備のコストを考えると、現状の化石燃料を使う自動車といい勝負だと推定されます。また、メタンから水素を作ると、熱量が半分になってしまうのですから、発電するならメタンで発電すればよいのであって、水素を使う意味がよくわかりません。


 では、石炭から水素を作るのはどうでしょうか。日本国の戦略では、オーストラリアの褐炭から水素を作り、水素のまま日本に輸送するとしています。電中研の報告書では水素を日本に輸送するだけで30円/Nm3と計算しています。LNG価格が10ドル/MMBtu(CIF価格)であれば、熱量換算で水素13.3円/Nm3とされていますから、褐炭コストを0としてもLNGと同等にするためには技術革新によって水素設備費を三分の一にする必要があります。


 次に余剰の電気から水素を作ることを考えてみましょう。水を電気分解するとだいたい効率は半分です。そして発生した水素を燃料電池で電気に変えても効率は半分くらいです。結局、余剰電力を保存するために水素を使うと、50%×50%=25%でだいたい3割しか保存できないのです。揚水発電で保存すると効率は70%くらいですから、水素にして電気を保存することに優位性がありません。


 このように水素の利用を考えてみると、褐炭の水素化して日本に輸送するのが可能性として残ります。ただし、LNGと同等となる条件としては技術革新によって水素キャリアコストを3分の1以下とすることです。その可能性は、私には限りなく難しいと感じますが、難しいからこそ研究していくということなのでしょう。今村さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・中東のギガソーラーで約3円/kWh、欧州の洋上風力で約6円/kWhという公表データがあります。そのような安価な再生エネの電力を用いて水を電気分解し、水素を製造することで、安価に水素を調達することができます(p61)


・メチルシクロヘキサン(MCH)・・を用いる有機ケミカルハイドライド法では、水素ガスを1/500程度の容積の常温・常圧の液体として貯めて、運ぶことができます(p88)


▼引用は、この本からです
「図解入門ビジネス 最新水素エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本」今村雅人


【私の評価】★★☆☆☆(64点)


目次

第1章 水素エネルギーの基本
第2章 水素エネルギーの社会実装へ向けた最新動向
第3章 水素エネルギービジネスの全体像
第4章 水素の製造
第5章 水素の輸送・貯蔵
第6章 燃料電池
第7章 燃料電池自動車
第8章 水素発電
第9章 CO2フリー水素
第10章 水素社会へ向けて



著者経歴

 今村雅人(いまむら まさと)・・・環境エネルギーライター/ビジネスライター。1962年熊本県生まれ。国立八代工業高等専門学校機械電気工学科卒業。慶應義塾大学経済学部(通信教育課程)卒業。産能大学大学院経営情報学研究科(MBA)修了。化学メーカー住宅設備機器部門の設計部技師を経て現在、有限会社キーアドバンテージ代表取締役。経営コンサルタント。中小企業診断士。2004年からライターとして、取材・執筆を手掛けている。大学の最先端の研究やベンチャー企業経営に関する取材記事を250件以上執筆


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