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「新版 焼かれる前に語れ 日本人の死因の不都合な事実」岩瀬 博太郎

本のソムリエ 2021/10/01メルマガ登録
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「新版 焼かれる前に語れ 日本人の死因の不都合な事実」岩瀬 博太郎


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

 日本の変死体は、明らかに犯罪性が強く疑われるものしか司法解剖されません。著者は死因解明の仕組みが、江戸時代と変わらないと批判しています。つまり、日本では変死体は検視官が外観を見て司法解剖するかどうか判断しており、死体に外傷がなければ、ほとんど病死扱いになっているのです


 薬毒物や外傷を与えない方法で殺害するなど意図的で巧妙な犯罪の多くが、見逃されていると著者は推定しています。実際、20体の変死体をCT撮影したところ、そのうち4体の死因が、警察官や検案医の検死結果と異なっており、外観を見ただけでは正確な検死は不可能なのです。


・検死にあたる警察官は、「五官」を使って死体の見分を行うのだという。「五官」とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・・・犯罪性が疑われる死体は司法解剖を行うため、裁判官に「礼状」を請求する(p18)


 現状では、検視官が目視で判断しているため明らかな犯罪性がなければ、わざわざ面倒な司法解剖は行われません。仮に、どこかに真面目な検視官がいたとしても、司法解剖の予算は少なく、司法解剖のできるインフラも少ないのが現状なのです。これは外国並に司法解剖ができるような体制づくりの要請を、長年、厚生労働省、警察庁、法務省が無視し続けてきた結果なのです。


・想定されている司法解剖数は年間5000体にも届かず、1体7万円の解剖謝金のトータルは、すべて合わせてもわずか3億2000万円にすぎない(p25)


 イギリスの解剖率は40%、スウェーデンでは95%であるのに対し、交通事故死における解剖率は、神奈川県31%から広島県2%と低く、かつ、差が大きいのが実態です。いかに検視官の恣意的な判断が横行しており、予算が少なく、正しい死因を究明しようという意思がないということなのでしょう。


 こうした状況に対し、著者の岩瀬教授はCT車を大学で購入して、変死体をCTで検死する取り組みをはじめました。日本軍の本に書かれていた、「現場は有能だが上層部は無能」という言葉を思い出しました。岩瀬さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・極力面倒な解剖にまわさずに済ませることができることをよしとしているためである(p40)


・司法解剖にまでこぎつけても、薬毒物の精密な検査はほとんど行われていない(p55)


・「内臓破裂なんてのはねー、身体を見ればわかるんですよ・・・某司会者の発言・・・公共の電波を使ってこんないい加減なコメントができるのか・・・あのコメントは、完全に間違いだ(p111)


・「鑑定謝金」の行き先もまちまちで、すべて個人口座に入れる教授もいれば、大学に全額入れる教授もいる(p39)


▼引用は、この本からです
「新版 焼かれる前に語れ 日本人の死因の不都合な事実」岩瀬 博太郎
岩瀬 博太郎, 柳原 三佳、WAVE出版


【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

第1章...あまりにお粗末な「死因究明」の現状
第2章...本当の死因はどこに? ~千葉大学・CT検視への取り組み~
第3章...遺族の思い、法医学者の使命
第4章...見逃される保険金・薬毒物殺人
第5章...もの言えぬ乳幼児の死因解明と「法歯学」
第6章...さまざまな「死」を考察する
第7章...医療事故死はどう扱われていくのか
第8章...日本の「死因統計」は信用できるか



著者紹介

 岩瀬博太郎(いわせ ひろたろう)・・・1967年、千葉県木更津市生まれ。解剖医、千葉大学大学院医学研究院法医学教室教授。東京大学医学部医学科卒業。同大学法医学教室を経て2003年より現職。2014年より東京大学大学院医学系研究科法医学教室教授併任、千葉大学附属法医学教育研究センター設立に伴いセンター長併任。


 柳原三佳(やなぎはら みか)・・・1963年、京都府京都市生まれ。ノンフィクション作家。交通事故、死因究明、司法問題等をテーマに執筆。


検視解剖の課題関連書籍

死因不明社会―Aiが拓く新しい医療」海堂 尊
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監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない」上野 正彦


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