「監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない」上野 正彦
2016/08/23|

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【私の評価】★★★★★(93点)
■著者は、東京都監察医務院で30年間、
変死体の死因解明をしてきた
鑑定のプロフェッショナルです。
退官後に300件以上の再鑑定を行い、
何度もの逆転判決を勝ち取りました。
この本では、そのいくつかの事例を
教えてもらえます。
■再鑑定で不思議だったのは、
しごく当然のことのように
鑑定を否定していることです。
著者は理由として、
地方では監察医制度がないこと。
大学の教授は殺人事件のような
司法解剖しかしたいため、
病死や自殺、災害事故などの
検死、解剖の経験が少ないことを
挙げています。
鑑定のプロを育てる仕組みに
課題があるのですね。
・監察医制度がない地方では、青酸毒物による自殺者などの解剖経験があまりないから見誤るのも無理はない。しかし、このように検査結果が変転すると捜査は大いに混乱をきたすことになる(p193)
■また、一つ気になったのは、
著者が何度も、依頼人の要求に合わせた
鑑定はしない、と断言していることです。
ということは、・・
要求に合わせた鑑定をする人が
いるということ?!
「真実はいつも一つ!」
をリアルで実現しいる著者に
驚きました。
上野さん、
良い本をありがとうございました。
───────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・被害者の首についた索条痕が斜めについている・・他人が殺した場合、私がこれまで検視してきた結果からしても、斜めにつくことはない。他人が絞めた場合は、ネクタイを締めるように索条痕は水平に頸部を一周する(p137)
・溢血点の形状の違いを見抜けるようになるには、数多くの検死、解剖を体験しなければならない。なぜならば、この現象をそこまで分析し解読した教科書や文献がないからである。(p151)
・溺れて亡くなると、肺は溺水で満たされ、浮袋の役目はなくなり、水中に沈むことになる・・殺されて川に捨てられた。肺には空気が入った状態だから、死体は沈まない。(p84)
・溺死体の場合、肺に水を大量に吸引し、水を含んだスポンジのような溺死肺(水性肺水腫)という状態になる。溺死肺の重量は、800から1200グラムとかなり重くなる。(p81)
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【私の評価】★★★★★(93点)
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■目次
1.顔から消された痕跡
2.見逃された証拠品
3.誰が嘘をついたか
4.執念の再鑑定
5.疑惑の踏切
6.海外で起きた謎
7.小さな溢血点
8.溺れたのか殺されたのか
9.兄の涙