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「カーボンニュートラル もうひとつの"新しい日常"への挑戦」巽 直樹

本のソムリエ 2021/12/26メルマガ登録
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「カーボンニュートラル もうひとつの


【私の評価】★★★☆☆(70点)


要約と感想レビュー

 都市銀行、電力会社、監査法人、コンサルティング会社と渡り歩いた著者の懸念は、カーボンニュートラルも再生可能エネルギーもエネルギーコスト上昇を伴うということです。結果的に日本の産業の競争力を維持できなくなるのではないか、と問題を投げかけています。再生可能エネルギー発電促進賦課金は、2兆円を超え、消費税1%相当を超えているし、政府の審議会では、2050年カーボンニュートラル達成で電力コストが2倍以上に上昇すると試算されているのです。


 そもそも地球温暖化が進んでいることと、二酸化炭素排出がどの程度リンクしているのか、科学的には推測の粋を出ていません。政治的にも各国は2050年カーボンニュートラルを宣言していますが、地球温暖化ガスを大量に排出している中国もアメリカも口先だけで、中国は2060年と10年先送りしているし、米国に至っては議会の反対で約束を齟齬にする可能性が高く、実質的にやる気はないのです。そうした中で、日本だけがクソ真面目にカーボンニュートラルを目指して、エネルギーコスト上昇することになれば、国内産業が海外に出ていくことで空洞化が加速するのではないかと、心配しているわけです。


 再生可能エネルギー買取制度のために、既にエネルギーコストは上昇しています。そして、地方で風力発電をするために長距離送電設備の増設が必要であり、そのコストは、再生可能エネルギーの賦課金と託送料金で回収する方向で政府審議会で議論されています。国民負担がその程度の議論で決定され、どんどん国民負担が増えていくことを、許してよいのか疑問を呈しているのです。スイスでは2021年6月「温室効果ガスの排出削減に関する連邦法」が51.6%の反対で否決されました。これは、温暖化ガス排出量を半分にするための法案でしたが、スイスの排出量が世界の0.1%に過ぎないのに、費用対効果に疑問を持つ人が多かったということです。同じように、世界の3%しか排出していない日本がカーボンニュートラルを達成したとしても、ほとんど世界に影響はないのに日本のエネルギーコストだけは確実に2倍以上となるのです。そのことを、納得した上で判断するのですか、ということです。


 なお、EUやバイデン大統領は、国境炭素調整措置という炭素の排出量に応じて負担を求める仕組みを検討しています。著者は、これは地球温暖化対策というよりも、炭素を多く排出している中国を狙い撃ちした貿易戦争と考えているようです。こうした環境の中で、日本のエネルギー調達をどうするのか、決めていかなくてはならないわけで、基本を学ぶための参考となる一冊でした。


 巽(たつみ)さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・地球温暖化対策を進めていくと、この対策に熱心な国とそうではない国に分かれる・・・製造業が規制の緩い国や地域へ生産拠点を移す国外移転が起こり、規制が厳しい国では産業空洞化が進む(p119)


・トランプ前大統領はパリ協定から脱退した。バイデン大統領の「2030年に二酸化炭素排出50%削減」の宣言についても、最終的に米国議会が承認するかどうかは現時点ではわからない(p6)


・国境炭素調整措置は実質的に保護主義貿易であるため、・・・この制度がもたらすものは、地球温暖化対策への世界共通の取り組みではなく、貿易戦争なのである(p120)


・アンモニアのコストは、現状でLNGの2倍程度ということで、水素よりも現実可能性は高い(p201)


・脱炭素の取り組みが世界で広がるのであれば、これまではコストを掛けてまで省エネルギーに取り組まなかった国々で、日本の技術へのニーズが高まる可能性がある(p65)


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▼引用は、この本からです
「カーボンニュートラル もうひとつの


【私の評価】★★★☆☆(70点)


目次

第1章 カーボンニュートラルとは何か
第2章 日本におけるカーボンニュートラルの論点
第3章 2030年の現実解と2050年への展望
第4章 脱炭素経営
第5章 テクノロジーによるイノベーション
第6章 投資とファイナンスの進化


著者紹介

 巽 直樹(たつみ なおき)・・・KPMGコンサルティング プリンシパル。1989年中央大学法学部卒、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。東北電力、新日本監査法人などを経て、2016年、KPMGコンサルティング入社、2019年より現職。東北大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経営学)。


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