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「官僚たちの夏」城山 三郎

2016/08/12公開 更新
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官僚たちの夏 (新潮文庫)


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー

■私はホンダのオデッセイに乗っていますが、
 実はホンダの車に乗れなくなる
 可能性があったのです。


 それは1960年代に通産省が検討していた
 「特定産業振興臨時措置法(特振法)」
 です。


 もし、この法律が成立していれば、
 自動車会社によって作る車が決められ、
 新規参入もできないことになった。


 もちろん、バイクを作っていたホンダは
 自動車に参入はできません。


・自動車産業では、欧州車など外車の輸入増大が続き、まだ基盤の固まらぬ自動車メーカーに脅威を与えている。・・通産省としては・・早急に自動車産業の競争力を強化する必要があった。(p48)


■この本では当時の通産省の内幕を
 異色の官僚"風越"を通して
 描いています。


 通産省のキャリアーは、
 民間企業を行政指導して、
 産業を育成しようと考えます。


 その答えが、産業の統制、
 役割分担の明確化だったのです。


 現在の石油業界の設備廃棄を推進する
 エネルギー供給構造高度化法(高度化法)や
 産業競争力強化法に似ていますね。


・日本の産業界は、いまや総力をあげて外資を迎え撃たねばいかんところへ来ている。みんなが自分のことばかり考えていたのでは、日本は滅びる。戦争中と形こそちがうが、挙国一致のときなのだ(p248)


■官僚が保護した産業は弱くなる、
 という本を読んだことがあります。


 そのことを証明しているような
 本だと思いました。


 いくらもっともらしい方針であっても
 経験と責任がない人に、
 正しい判断は難しいのでしょう。


 城山さん、
 良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・うらみにも、いろいろとある。ひとつは、役所に突き放された、たとえば、行政指導がきびしすぎるというやつ。だが、それは、天下国家のためを思って、突き放しもし、きびしくするものであって、それがいつかは回り回って、その業界の役にも立つのに、彼等には、それが見えん(p38)


・外務省が本質的に対外協調で、開放的。わるくいえば、対外追随であるのに対し、通産省は自立論。民族主義的とさえいえる(p93)


・国内産業の保護育成を優先するか、それとも、通商貿易中心に考えるかで、考え方に微妙な差が出てくる。風越の重工業局など原局筋が、前者、つまり「産業派」「民族派」であるのに対し、通産局・貿易振興局系統は、「通商派」「国際派」と目される(p107)


・<役人は誇りを持て>」というのが、風越の信条であった。<財界の大物に対しても、頭を下げるな。むしろ、お高くとまれ>といい、風越自身、そうした姿勢を貫いてきた(p204)


・おれたちは、国家に雇われている。大臣に雇われているわけじゃないんだ(p8)


・今度の人事は、明らかに政治的雑音によるもの。たとえ形式的に大事に任命権があるとしても、次官や省内の意向を無視しての発令は、筋ちがいも甚だしい(p277)


・通産省は外務省とはちがう。先輩たちの例を見ても、次官の本命を行く連中は、海外勤務を経験していない(p25)


官僚たちの夏 (新潮文庫)
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城山 三郎
新潮社
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【私の評価】★★★☆☆(73点)



著者経歴

 城山三郎(しろやま 三郎)・・・(1927-2007)名古屋生れ。本名、杉浦 英一(すぎうら えいいち)。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。一橋大学を卒業後、愛知学芸大に奉職し、景気論等を担当。1957(昭和32)年、『輸出』で文学界新人賞を、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受賞し、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞を受賞した『落日燃ゆ』の他、『男子の本懐』『官僚たちの夏』『秀吉と武吉』『もう、きみには頼まない』『指揮官たちの特攻』等。2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞。


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