【書評】「使える地政学 日本の大問題を読み解く」佐藤優
2018/04/15公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
地政学は地理的要因で、国際関係や歴史を読み解こうという考え方です。佐藤さんは地政学がすべてではないとしています。地政学もあるが、それ以外のイデオロギーもあるのです。
また、国家が侵略するときに、侵略を正当化するのが地政学です。そして他国から自国を守るためのロジックも地政学が使われるのです。こうした国歌の政策の理由として使われる地政学を、私達は理解しておく必要があるのでしょう。
本音は別にあるにしろ、地政学という考え方をもっと勉強したくなりました。佐藤さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・国家が膨張政策をとるときの正当性を地政学で説明する。あるいは他国の脅威から自国を守るための安全保障政策を合理化するためにも地政学は使われている・・ナチス・ドイツ関連の本を読んだことのある人ならば、生存圏(レーベンスラウム)という言葉を目にしたことがあることだ(p22)
・戦前の日本でも、1931年、のちに外相になる松岡洋右が「満蒙は日本の生命線」と唱え、広く人口に膾炙した。生存圏という考えに通じることがわかるだろう(p23)
・民族問題はエスニッククレンジング(民族浄化)では解決しないと言われるが、それは嘘だ。民族問題はたいていの場合、民族浄化か暴力によって解決されるものなのだ(p39)
・天皇や皇族が国民に「見られる」ことによって、国の隅々まで支配者と政治体制が変わったことを周知させ、その権力の正当性を認識させるのだ。戊辰戦争で最後まで政府軍に抵抗した東北の旧諸藩の地を訪れる目的は、「頑愚ノ旧夢ヲ嗅覚シ、開明ノ曙光ヲ認見セシムル」(東北の民に、いまだ頑で愚かな昔の夢を見ていることに気づかせ、新しい時代の幕開けを認めさせる=「全国要地巡幸の建議」)とされた(p135)
・フェルガナ盆地は権力の空白地帯だ。「権力は真空を嫌う」の言葉にならえば、どの主権国家も優位性を保つことができない地域において、国家に対抗できる武力をもつ組織は支配的地位に立ち、その空白を埋めることが可能だ(p192)
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朝日新聞出版 (2016-05-13)
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
第1章 私と地政学の出会い
第2章 ロシアと中東をめぐる勢力図
第3章 「パナマ文書」と地政学
第4章 ネット空間と地政学
第5章 国家統合と地政学――沖縄編――
第6章 国家統合と地政学――EU編――
第7章 中国の海洋進出が止まる日
著者経歴
佐藤 優(さとう まさる)・・・1960年生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了。外務省入省。在英国日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館。95年より外務本省国際情報局分析第一課。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年、執行猶予付き有罪判決を受ける。控訴中。