「花咲舞が黙ってない」池井戸 潤
2018/02/23公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
花咲舞は臨店指導グループで業務監査
半沢直樹で銀行の内部を描いた池井戸さんが、今回は、東京第一銀行の花咲舞という空気読めない女性銀行員を生み出しました。花咲舞は、臨店指導グループで業務監査をする立場です。
業務監査をしながら、情報漏洩、不正融資、ヤクザや政治家との結び付き、役員の言いなりの上司など銀行の暗部を描写していきます。倍返しの半沢直樹さんも合併交渉先の調査役として出てきます。
銀行はいい学校を出て、口が達者で上司に取り入るのが上手い人が出世していく世界として描かれていますが、著者の池井戸潤さんもいろいろな体験をしたのでしょう。
私は、世の中の正義より、銀行の利益を常に優先してきました。正義に損得はない。そして損得にも正義もない。私たち銀行員は常にその境界線上にいて戦っているんだ。違いますか・・・そのとき君は、果たして正義を取るだろうか、利益を取るだろうか(p302)
部門利益しか考えない人たち
面白いところは、役員がらみの表に出せない融資があるというところでしょうか。飛ばしや粉飾で破綻した山一証券や長期信用銀行を思い出しました。
不良債権や不正融資が見えないと正しい経営判断ができず、会社が消滅することもあるのです。この本では、花咲舞の東京第一銀行とライバルの産業中央銀行との合併が決まり、その膿が表に出ることになります。
こうした小説の良いところは、グチばかりの人や、部門利益しか考えない人や、足をひっぱる人がいるという現実の組織が理解できることです。悪いところは、そんなにうまくいくかい!と思ってしまうこと。池井戸さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・銀行というのは、月初めこそ忙しいものの月中にかけて商い閑散、つまり暇になっていき、やがて十五日頃から忙しさを増して、二十日、二十五日、そして月末という繁忙日を迎えるというサイクルになっている(p62)
・君に頼みがあるんだが、そのメンバーに加わることを承諾してくれないだろうか」・・「私でお役に立てるでしょうか」やんわりとだが、紀本は消極的な姿勢をアピールして見せた(p339)
▼引用は下記の書籍からです。
中央公論新社 (2017-09-05)
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
第一話 たそがれ研修
第二話 汚れた水に棲む魚
第三話 湯けむりの攻防
第四話 暴走
第五話 神保町奇譚
第六話 エリア51
第七話 小さき者の戦い
著者経歴
池井戸 潤(いけいど じゅん)・・・1963年生まれ。三菱銀行勤務を経て、「果つる底なき」で江戸川乱歩賞受賞。著書多数。
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