「空飛ぶタイヤ」池井戸 潤
2012/03/13公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
「下町ロケット」が良かったので、読んでみた一冊です。流れは「下町ロケット」と同じ。トラックのタイヤがはずれて、歩いていた主婦にぶつかり死亡してしまいました。そのため事件を起こしたトラック運送会社が、倒産の危機に瀕するというストーリー。
手のひらを返したように、取引先が取引停止。銀行の追加融資も停止。タイヤがはっずれた自動車を製造していた自動車メーカーからは相手にもされないという八方ふさがりです。銀行と企業との密接でドライな関係、そして大企業と中小企業のぶつかり合いが面白いのです。銀行にいた著者だから書ける内容なのでしょう。
・当行としては、社会的関心も高まっている事件でもありますし、今の状況では御社への追加融資を行うのはかなり難しいといわざるを得ません(p40)
圧巻は、やはり社長のつらさでしょう。事故があれば社長の責任。金策に銀行へ行くのは社長。得意先に行けば、仕事を切られるのも社長。家に帰れば、報道でタイヤで人を殺した会社の社長の子どもとして、いじめられてしまうのです。
世の中、一度うまくいかなくなると、すべてがうまくいかなくなる。それでも自分を信じて、事故の真の原因を追究し、自分の会社を守ろうとする社長は、頑張るのです。ここで挫けてしまったら、物語になりません。
・この苦しみがわかるか。悲しみがわかるか。小さな男の子を置いて逝っちまった母親の悔しさと悲しみが、あんたたちにわかるのか。(p477)
三菱自動車のリコール隠しをネタに使っているようですが、実際は小説とどれくらい違って、どれくらい同じだったのでしょうか。どうせなら、ノンフィクション小説にしても面白かったかもしれません。池井戸さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・貴様、自分が何を言っているのかわかってるのか。本来リコールすべきものをだな、評価替えして社内で対応するってのは要するに・・リコール隠しだ(p72)
・降格も許されない。もっとさりげなく、しかし、本人にしてみれば許容し難いところへ異動させろ、いいな。退職の理由はあくまで、自己都合でなければならん(p205)
・財務上の損益は、解釈の問題である・・匙加減ひとつ、解釈ひとつ変えれば、その損益は大きくもなり小さくもなる(p297)
・ここに来て捜査方針を変えればいい笑いものですよ。整備不良で赤松運輸を引っ張りましょう。ホープ自動車の報告書はお墨付きみたいなものなんですから、それを根拠にすれば後で問題になることはないと思います(p390)
▼引用は下記の書籍からです。
実業之日本社
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【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
序 章 決して風化することのない、君の記憶
第一章 人生最悪の日々
第二章 ホープとドリーム
第三章 温室栽培群像
第四章 ハブ返せ!
第五章 罪罰系迷門企業
第六章 レジスタンス
第七章 組織断面図
第八章 不経済的選択
第九章 聖夜の歌
第十章 飛べ! 赤松プロペラ機
第十一章 コンプライアンスを笑え!
第十二章 緊急避難計画
終 章 ともすれば忘れがちな我らの幸福論
著者経歴
池井戸 潤(いけいど じゅん)・・・1963年生まれ。三菱銀行勤務を経て、「果つる底なき」で江戸川乱歩賞受賞。著書多数。
読んでいただきありがとうございました!
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