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「家族よ、ボケと闘うな!」長尾和宏、近藤誠

2015/11/05公開 更新
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家族よ、ボケと闘うな!  誤診・誤処方だらけの認知症医療


【私の評価】★★★☆☆(76点)


要約と感想レビュー

 「65歳以上、5人に1人が認知症」という2025年の推計ニュースを聞いて読んだ一冊です。認知症とは、病気なのか、それとも、物忘れが増えただけなのか。お医者さんの間でも、議論があるようです。


 例えば、薬の使い過ぎで認知症が増えていると考える人もいます。1抗認知症薬の副作用で眠れない→2では、睡眠薬を出しましょう→3睡眠薬のせいでぼーっとしています4では、(興奮作用のある)抗認知症薬を増やしましょうかとどんどん薬を増やす医者が存在するのです。著者は「抗認知症薬をたった1剤やめるだけで、別人のように回復したケース」をたくさん診てきたというのです。


認知症は、「老化」でもあるし、「病気」でもあるといえばいいのか・・認知症は病気だ!と言い切る医者ほど、とにかく薬で治そうと必死になり、いや、老化だ!と割り切る医者ほど、治療よりケアの部分に重点を置いて対応しようとします(p11)


 意外だったのは、認知症になって困るのは、本人ではなく家族ということ。ふつうのパターンは、認知症で家族が困っているので、認知症薬でおとなしくさせることが多いのだという。本当は、家族が困っているのですから、家族に薬を処方すればいいのでは?と、この本では提言しています。


 さらに言えば、離れて暮らせば問題解決、ということもあるようです。親子関係によっては、親がボケたら一緒に住まずに、一定の距離を置いたほうが、お互いが不幸にならずに済む場合も多いのです。


・夜中じゅう歌を歌い続ける寝たきりのおばあちゃんがいたとします。ある家族は「なんとかしてほしい」・・ある家族は「いい子守唄だ」と言って喜ぶ・・前者には睡眠薬を処方します。おばあちゃんに?いえ、家族にです(p18)


 認知症を薬で治そうとする医療への問題提起だと思いました。薬を処方する前に、やることがあるのではないか。その治療は、本当に患者のためになっているのか。そうした問いを患者側の私たちも考えておく必要があるのでしょう。


 長尾さん、近藤さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・抗認知症薬の副作用には、「イライラする」という状態があります。・・介護者のストレスとなり、結局本人の環境悪化に繋がるだけです・・服薬のタイミングを少々送らせてでも、ますは、環境改善を目指すべきではないでしょうか(p41)


・「うつ病」と「うつ状態」は違うもの・・・「うつ状態」とは、ショックな出来事をきっかけに、食欲もなくなって、何もやる気が起きない状態。・・一方、気づけば全く覇気がなく、以前好きだったことに興味がなくなった、朝早く目覚めて午前中は調子が悪いというなら、恐らく「本物のうつ病」です(p84)


・大切なことは、あれこれ考えているだけではなく、思いつけば試してみることです。そのアイデアが、本人に合わなければ、変えていけばいいだけのこと。「治す」「治さない」よりも、本人に「合う」「合わない」を探していくこと(p164)


家族よ、ボケと闘うな!  誤診・誤処方だらけの認知症医療
長尾 和宏 近藤 誠
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【私の評価】★★★☆☆(76点)


目次

1・認知症は老化ですか? 病気ですか?
2・治る認知症、ゆっくり付き合う認知症
3・早期発見、早期治療に意味はあるの?
4・どの科に駆け込むのが正解か?
5・長谷川式か? MMSEか?
6・進行が止まる人、止まらない人
7・4つの薬が有効とされているけれど......
8・なぜ医者は薬の処方を間違えるのか?
9・認知症をうつと誤診する医者
10・「コウノメソッド」で何かが変わる?
11・医者を信じるな? 薬を信じるな?
12・中核症状と周辺症状、どちらを重視する?
13・被害妄想から考える、関わりと環境
14・エビデンス主義は誰を幸せにするの?
15・放置プレイという見守り方
16・介護も進化できるのか?
17・家族よ、ボケと闘うな! 患者よ、ボケを怖がるな!



著者経歴

 長尾和宏(ながお かずひろ)・・・1984年東京医科大学卒業、大阪大学第二内科に入局。1995年兵庫県尼崎市で開業。複数医師による年中無休の外来診療と在宅医療に従事。医療法人裕和会理事長、長尾クリニック院長。医学博士、日本尊厳死協会副理事長、日本慢性期医療協会理事、日本ホスピス在宅ケア研究会理事、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本在宅医学会専門医、日本内科学会認定医、関西国際大学客員教授、東京医科大学客員教授。


 近藤誠(こんどう まこと)・・・1948年生まれ。1973年、慶應義塾大学医学部卒業。同年、同大学医学部放射線科入局。1979-1980年、米国へ留学。1983年より同大学医学部放射線科講師。がんの放射線治療を専門とし、乳房温存療法のパイオニアとして知られる。患者本位の治療を実現するために、医療の情報公開を積極的にすすめる。


認知症関連書籍

認知症からあなたと家族の財産を守る方法」木下 翔太郎
「家族よ、ボケと闘うな!」長尾和宏、近藤誠
ボケ日和―わが家に認知症がやって来た! どうする?どうなる?」長谷川 嘉哉
認知症に備える」中澤 まゆみ , 村山 澄江


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