「国富215兆円クライシス 金融老年学の基本から学ぶ、認知症からあなたと家族の財産を守る方法」木下 翔太郎
2022/08/16公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
認知症になると騙される
2019年頃、報道されていた「かんぽ生命の不適切販売」では、郵便局員が保険の延長手続きを「新規の契約」として別途契約させたり、多数の保険契約を結ばせていました。メディアによれば、実は、被害にあった顧客には高齢者が多く、契約結びやすい高齢者を「ゆるキャラ」「半ぼけ」「甘い客」などと呼び合い、不要な保険や投資信託を販売していたというのです。
郵便局でさえ高齢者をカモにしているのですから、一般的にも高齢者や認知症の人をターゲットにしたビジネスがどれだけ多いのかということです。2020年の認知症の人は約631万人になるとも推計されており、明日は我が身。私たちはいつなるかわからない認知症に対してどう対処すればよいのでしょうか。
ゆうちょ銀行においても、70歳以上の高齢者に対し、健康状態や商品の理解度を確認せずに、不適切な形で投資信託の契約を行った事例が19591件(p125)
成年後見人はコストがかかる
認知症で最初に問題となるのは、お金の使い方がわからなくなって、無駄な金品を購入してしまうことです。無意味なリフォームや健康食品を買いすぎてしまうなど注意が必要です。対策としては、通話録音装置などを設置して、証拠を記録しておくことが考えられます。
さらに認知症が進行すると、判断能力がないとみなされ、本人の貯金の移動や、本人名義での介護サービスの契約などができなくなってしまいます。そこで登場するのが「成年後見制度」です。成年後見人が代理で契約や預金の引き落としができるのです。ところがこの「成年後見制度」は非常に問題が多いというのです。
まず、成年後見人は家族がなれるのは20%程度で他は弁護士、司法書士などが指名されてしまうこと。そして、年間費用が24万円かかり、辞めることができないこと。さらに、家族のためにお金を使うことが制限されること等です。そもそも成年後見人が不正を行う場合もあるというのですから、闇は深いようです。
認知症が進行すると「意思能力」が無効になり、資産が動かせなくなる(p46)
任意後見制度か家族信託を検討すべき
ところが認知症が進行してしまえば、家族が選択できるのは「成年後見制度」しかないのです。ですから認知症になる前に対策を考え、実行しておく必要があるのです。
具体的には、将来的に意思能力が低下した場合に備えて、事前に本人の希望を踏まえて代理人に誰がなるかを公正証書の形で契約を残しておく「任意後見制度」があるという。また、家族信託することで認知症が進行しても家族がお金を使うことができるという。
いずれにしろ認知症が進んでしまえば、どうにもならないので、健康なうちに家族会議を行って、事前の対策を実行しておく必要があるのです。親が認知症になってから、後悔しないように準備していきたいと思いました。木下さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・任意後見・・家族信託(民事信託)・・・後見制度支援信託、後見制度支援預金(p71)
・認知症が進行する前・・・家族会議の実施、遺言の準備、任意後見制度の利用、家族信託の活用、通話録音装置などの防犯対策(p88)
・遺言能力が十分にあるかどうかを評価し、結果を記録しておく(p82)
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
第1章 認知症の現在
第2章 なぜ「認知症とお金の問題」なのか
第3章 家庭における認知症とお金の問題
第4章 企業の視点からみた認知症とお金の問題
第5章 社会における認知症とお金の問題
著者経歴
木下 翔太郎(きのした しょうたろう)・・・慶應義塾大学医学部助教、精神科医。1989年、神奈川県生まれ。千葉大学医学部在学中に国家公務員総合職採用試験に合格し、卒業後は内閣府に入府。高齢社会対策、子育て支援などに従事し、高齢社会白書の作成にも携わる。内閣府退職後、東京女子医科大学東医療センターを経て、現在は慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室に所属。精神科医・産業医として勤務する傍ら、医療政策や予防医療などの研究に従事。
認知症関連書籍
「認知症からあなたと家族の財産を守る方法」木下 翔太郎
「家族よ、ボケと闘うな!」長尾和宏、近藤誠
「ボケ日和―わが家に認知症がやって来た! どうする?どうなる?」長谷川 嘉哉
「認知症に備える」中澤 まゆみ , 村山 澄江
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