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「それでもがん検診うけますか」近藤誠

2004/06/06公開 更新
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それでもがん検診うけますか (文春文庫)


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー

 私もがん検診は受けていますが、その有効性、被曝量、バリウムの危険性などまったく説明されていなかったことに驚きを受けました。インフォームドコンセプトのイの字もないのですから、あきれてしまいます。結局は、自分で現実を学ぶしかありません。


 厚生省研究班の報告書では、「胃X線検査による胃がん検診」「視触診とマンモグラフィの併用による乳がん検診(40歳台)」「胸部X線検査と高危険群に対する喀痰細胞診の併用による肺がん検診(日本)」は、「I-b 検診による死亡率減少効果があるとする、相応の根拠がある。」に分類されています。


 ところが、肺がん検診(レントゲン)の有効性の関する外国での大規模調査(無作為比較法)はすべて否定的な結果を得ているというのです。ということは・・・・・・。今後も、がん検診については調査を続行いたします。


この本で私が共感した名言

・日本国民の大部分は、おそらく毎日毎日外出しているでしょうが、それで交通事故にあって死亡するのが一年を通して、十万人に十人なのです。それにたいして内視鏡は、一回受けただけで十万件につき三人が死亡するのです。(p52)


・胸部のレントゲン撮影で肺が被ばくする線量は0.1ミリシーベルトで、胃透視で胃が被ばくするのは4ミリシーベルトといいます。・・・乳房のマンモグラフィに関する全国調査では、・・・最大では28ミリシーベルトといいます。


<実は胃がんの集団検診では、間接撮影のため、9.5ミリシーベルトの被ばくだそうです。年間の自然被ばく線量は2ミリシーベルトと言われていますから、胃がん検診で5年分の被曝になるんですね。250ミリシーベルトで白血球の減少が見られ、1000ミリシーベルトから頭痛、めまいの症状がでるので、そのリスクをどう見るかですね>


・がん検診では、見落としもつきものです。


<胃がんでは10~40%の見落としがあるそうです。>


・臓器を切除してみたら、がんがなかった、ということがあります。(p95)


・がんの"良性""悪性"の判断基準は医師によって違う(p107)


・「病名」をつける第三の理由は、保険請求の問題です。・・・医療保険組合への請求書(レセプト)に「異常なし」と書いたら、診察料の残りを支払ってもらえないので、やむなく「乳腺症」「胃炎の疑い」などという、意味のない診断名をカルテに記載するはめになるわけです。(p129)


<今はどうなっているのでしょうか>


・千人に一人のがんをみつけるために、999人の検診と、9ないし149人の精検がムダになっています。つまり、現在の検診システムでは、精検の大部分がムダになり、多数のノイローゼ患者を量産することになっているのです。(p134)


・肺がん検診は、くじ引き割り付け試験でその効果が否定されたので、世界では行われていないわけですが、これも日本では国の施策となって全国展開されています。(p208)


・検診に根拠のないことを知っている人が検診を広めた・・・乳がん検診については現在の視・触診ではほとんど有効でないことは先生のいうとおりと思っております(研究班のひとり)(p211)


・商品という点で今いちばん問題なのは、大腸ポリープの内視鏡による切除です。一件九万円という高収入なので、「大腸ポリープは宝の山」と検診関係者の間でひそやかにささやかれています。・・・しかし、ぽりーぷの発見は無意味とさえいえる(132頁参照)のですから、国民は検診機関に膨大な無駄金を払っていることになります。(p140)


それでもがん検診うけますか (文春文庫)


【私の評価】★★★☆☆(73点)


目次

第1章 がん検診・百害あって一利なし
第2章 がん検診にはこんな危険がひそんでいる
第3章 日常化したがん検診の見落としと誤診
第4章 がん検診が人の心にもたらすストレス
第5章 がん検診の有効性を否定する
第6章 根拠のないがん検診がどうしてここまで広まったのか
第7章 それでも検診をあきらめきれない人のために



著者経歴

 近藤誠(こんどう まこと)・・・1948年生まれ。1973年、慶應義塾大学医学部卒業。同年、同大学医学部放射線科入局。1979-1980年、米国へ留学。1983年より同大学医学部放射線科講師。がんの放射線治療を専門とし、乳房温存療法のパイオニアとして知られる。患者本位の治療を実現するために、医療の情報公開を積極的にすすめる。


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