「抗がん剤 10の「やめどき」あなたの治療、延命ですか?縮命ですか?」長尾 和宏
2015/09/16公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
町の開業医による抗がん剤治療の現状報告です。
「がん」になれば、手術、抗がん剤、放射線などいろいろな治療が行われます。この中で抗がん剤とは、毒によってがんを叩く薬です。同時に自分の正常な細胞も叩くことによって、副作用で苦しむことになります。
・抗がん剤は延命治療の道具にすぎない。良い悪いではなく、やめどきを考えることが大切である(p272)
例えば、胃がんであれば、進行度や悪性度によって違いますが、胃を切除して、抗がん剤治療という標準治療があります。
問題は、ある程度年齢の高い人の抗がん剤治療です。そのまま様子を見て、穏やかな死か免疫力による延命か自然治癒に望みを託するのか。
それとも、確実な副作用の苦しみといくらかの延命効果または奇跡的な回復を望むのか。
・抗がん剤治療とは「宝くじ」のようなもの。・・誰にだって宝くじを買う権利はあるのだ・・医師が本当に伝えるべくは、・・・「この宝くじを買うと、どんなリスクがあるか?」を懇切丁寧に説明することだと思っている(p67)
結局、抗がん剤がどの程度効くのかは、相性があるのでわからないのです。そこにあるのは、抗がん剤の統計的なデータだけ。
がんをそのまま放置した場合と抗がん剤治療をした場合と正確に比較することはできません。それを選択するのは、人生の所有者である患者自身でしかありえないのです。
長尾さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・75歳以上の後期高齢者には積極的な抗がん剤治療をしてほくはないと思う・・治療をせずに定期的に様子を見ていくという方法は十分、説得力がある(p61)
・「腫瘍マーカーが下がらなくても、抗がん剤ができなくなるまで続けましょう」だと?そんなの、主治医が決めることではないだろう。患者さん本人が決めることだ(p145)
・本人に本当のことを伝えずに、人生の大切な選択肢を隠し通すことが愛と言い切れるのか・・「黙っていてくれと言ったのに本当のことを言った」ということでご家族から訴えられたという医師を知っている(p156)
・腹水・胸水を抜いてはいけない・・腹水・胸水を抜くということは、血液を抜くことに近い。しかも一度抜けば終わりではない。また溜まる。溜まったら、また抜きたくなる(p196)
・がん拠点病院から患者さんが退院するには本当にやっかいな手続きを踏まないとならない・・終末期の患者さんの場合、退院支援や退院調整で足止めをくらっている時間ほど、無駄なものはない(p199)
・病院側は、状態の悪い末期がん患者を退院させることが異常だと思っている・・・これはもう、入院ではなくて軟禁だろう(p199)
・もっともわかりやすい老化の定義は、髪の毛の減り具合でも、小皺に数でもなく、実は「筋肉量の減少」だと私は考える(p238)
・再発とは厳しい言い方をすれば、「取り残し」であり、「術前検査では見つからなかった遠隔転移」でもある(p255)
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【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
第一章
町医者が見た あるがん患者の物語
第二章
抗がん剤 10の「やめどき」
1 迷った挙句、最初からやらない
2 抗がん剤開始から二週間後
3 体重の(15%程度の)減少
4 セカンドラインを勧められたとき
5 「腫瘍マーカーは下がらないが、
できるところまで抗がん剤をやろう」と主治医が言ったとき
6 それでもがんが再発したとき
7 うつ状態が疑われるとき
8 一回治療を休んだら楽になったとき
9 サードラインを勧められたとき
10 死ぬときまで
読んでいただきありがとうございました!
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