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「原子力防災―原子力リスクすべてと正しく向き合うために」松野 元

2015/03/14公開 更新
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原子力防災―原子力リスクすべてと正しく向き合うために


【私の評価】★★☆☆☆(66点)


要約と感想レビュー

 2011年3月の福島第一原子力発電所事故の4年前に発行された一冊です。この本で著者は、日本の原子力の専門家が、「チェルノブイリ発電所事故などは数万年に一度起きる程度のものだから現実の生活では起きないと考えてよいだろう」としていることに疑問を呈しています。原子力災害が、人間のミスや天災によって想定される確率をはるかに超えて発生する可能性を指摘しているのです。


 つまり、原子力防災に取り組んだ著者だから感じる違和感は、原子力防災は基本的に大事故は起こらない。格納容器は壊れないという前提で、原子力が計画されてきいるということです。日本ではチェルノブイリ発電所事故のような大事故は起きないことになっているため、日本の原子力防災が重点的にカバーしている範囲(EPZ)は発電所から8~10kmの範囲でしかないのです。


 福島第一原発事故で明らかになったことの一つに、外部電源が長時間なくなることを前提としていないという矛盾もありました。四国電力社員である著者がまじめに取り組み、こうした矛盾に非常に苦しみ、この本の出版となったのでしょう。


 松野さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・日本の重大事故、仮想事故の安全評価は、無条件で原子炉格納容器の健全性を仮定している・・(p91)


・現在、事故時にオンラインで発電所と結ばれるのは、回線容量の都合で1プラントだけである・・・2000年の同時多発テロの際に同時に数カ所が狙われたことを考えると、数カ所同時事故対応が可能なようにしておく必要がある(p132)


・2005年7月23日(土)に首都圏で震度5の地震が起きたとき、都の防災対策住宅に住んでいる都職員34人のうち20人が参集してこなかったという(p145)


原子力防災―原子力リスクすべてと正しく向き合うために
松野 元
創英社/三省堂書店
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【私の評価】★★☆☆☆(66点)


目次

第1章 原子力利用の概要
第2章 放射能と放射線
第3章 原子力災害
第4章 緊急時対応体制
第5章 原子力防災の緊急時支援システム
第6章 原子力防災研修
第7章 原子力防災啓蒙



著者経歴

 松野元(まつの げん)・・・原子炉主任技術者、第1種電気主任技術者。1945年愛媛県松山市生まれ。1967年3月、東京大学工学部電気工学科卒。同年4月、四国電力(株)に入社、入社後、火力発電所、原子力部、企画部、伊方原子力発電所、東京支社等で勤務。2000年4月、JCO臨界事故後の新しい原子力災害対策特別措置法による原子力防災の強化を進めていた経済産業省の関連団体である(財)原子力発電技術機構(現在の独立行政法人原子力安全基盤機構)に出向。同機構の緊急時対策技術開発室長として、リアルタイムで事故進展を予測し、その情報を中央から各原子力立地点のオフサイトセンター等に提供して、国の行う災害対策を支援する緊急時対策支援システム(ERSS)を改良実用化するとともに原子力防災研修の講師も担当し、経済産業省原子力防災専門官の指導にも当たった。2003年3月出向解除。2004年12月四国電力(株)を退職


福島原発事故関連書籍

「レベル7福島原発事故、隠された真実」東京新聞原発事故取材班
「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」門田 隆将
「原発再稼働「最後の条件」:「福島第一」事故検証プロジェクト最終報告書」 大前 研一
「原発と大津波 警告を葬った人々」添田 孝史
「FUKUSHIMAレポート~原発事故の本質~」
「ザ・原発所長(上・下)」黒木 亮


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