「日本が危ない―危機逆転への戦略」糸川 英夫
2014/02/23公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
■世界には多くの予言の書がありますが、
「ノストラダムスの大予言」に匹敵する
一冊だと思います。
この本が発行されたのが1987年。
バブル最盛期です。
この本の予言しているのは次のとおりで、
ほとんど当たっているのが、怖い。
日本経済バブルは大恐慌と同じ状況
八郎潟の干拓はムダ
円高誘導は、日本経済を潰すため
日本人は円高でも頑張るから、もっと円高になる
欧米の裁判で、多額の賠償金を取られ続ける
ハイテクは簡単に真似できるので儲からない
ディスプレーは薄くなる
物を輸出するのではなく、日本の文化を輸出する
日本の海外進出が進む、でもまた戻ってくる
日本人もユダヤ人のように差別される
・(秋田県の)八郎潟の干拓が計画されていた・・私の考えは・・二十年もかかって完成が昭和50年になるようなものなら、おやめになったほうがいい。たぶんそのころには、日本はお米があり余っているだろうから、それは無駄な計画ですよ(p23)
■糸川さんは「天才」と言われますが、
本当に未来を見通せる人がいることに
驚きました。
その考え方は、逆張りです。
視点を変える。
普通とは違った視点を持つ。
カッコよく言えば、パラダイム変換でしょうか。
(本人は、"デセンター"中心をずらすと表現)
・コンピュータの世界は、日進月歩で、・・どんどん進んでいくのに、表示装置のブラウン管は、50年前の技術とほとんど変わりがないのである・・コンピュータの表示を見るというのは、平面に描いてある絵や字を見ることと同じだから、一枚の絵と同じ厚さでいいはずだ(p190)
■糸川さんは、日本の経済が低迷するのは、
他国からの敵意(嫉妬)がなくなるので、
逆に良いのだとも言っています。
日本人は、キリスト教、
イスラム教から見れば、
ユダヤ人以上に異端なのです。
一人勝ちはあぶない。
糸川さん、
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・日本の航空母艦には非常に優秀な艦載機が搭載されていたが、敵の航空機を打ち落とすための高射砲の数が少なかった・・・軍部上層部に、空を守るという発想が欠落していたのだ(p20)
・1973年に起こったのが、第一次オイルショックである・・・この事件が起こる少し前、経団連の国際会議場で「日本のエネルギーの将来を考える」というシンポジウムがあった・・私は・・石油の値段は上がるのではないだろうかと主張した。
案の定、私は大変な非難を浴びた(p26)
・"財テク"狂奔は「花見酒」の愚行・・土地の値段というのは、主としてそれがどれだけ生産性をもつかで決められるべきなのに、現在のような値上がりを待つだけの土地投機ということになると、これはギャンブルである・・1929年の世界大恐慌も株と土地の投機が引き金であった(p38)
・日本はもう一年半も円高に悩まされ続けている・・・ふと太平洋戦争中の新聞論調を思い出してしまった。緒戦では「勝った、勝った」の大合唱、B29の空襲を受けると、今度は「一億玉砕、百年戦争」の大合唱、真相をついたものはなにもなかった(p265)
・『USニュース&ワールド・リポート』という週刊誌がある・・1985年9月2日号で、「USvsジャパン」という大特集・・「アメリカの労働者たちは闘いに勝てるだろうか」・・・日本にはなぜこのような議論がないのだろうか・・日本人の"繁栄ボケ"のあらわれの一つと言えるかもしれない・・労働者一人当たりの生産性では、アメリカのほうが約20%高い(p86)
・日本政府の国債発行高は140兆円に達している。赤ちゃんからおじいさん、おばあさんまで含めて、国民一人当たりから約百万円の借金をしている勘定になる。政府の収入は年間300兆円で、そのうち140兆円が借金(p154)
・日本にはかなりの量の石炭がある。あるにもかかわらず、炭鉱はつぎつぎに閉山で、石炭の火はまさに消えようとしている。・・「なければ、あるところから買えばいい」といった調子で、日本人は苦労をしていないため、考え方が非常に安易である(p127)
・日本の教育は、明治以後、なんでもヨーロッパの真似をして制度だけをつくった。敗戦後も占領軍の意向にしたがってアメリカの制度に合わせたものをつくった。・・・日本民族に合った教育制度を確立することが先決だろう(p264)
・古代イスラエル王国がローマ帝国に西暦紀元一世紀ごろ滅ぼされたあと、ユダヤ人は世界に散っていく・・・日本人も、言うまでもなくアーリアンではないし、キリスト教とは違った宗教をもち・・・もし日本がヨーロッパにあったとしたなら、その迫害のされ方は、ユダヤ人以上であったに違いない・・日本人も遅かれ、早かれユダヤ人と同じ道を歩まされる恐れがある(p109)
・55歳で定年を迎えても、平均寿命80歳だから、単純計算してもあと25年残っている。ここからもう一度、新しい人生が始まるのだという考えをもって、具体的なプランを立てなければいけない・・・(p222)
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1章 なぜ、いま危機的日本論か
第2章 「ゴキブリ日本人」の繁栄ボケ
第3章 極度の逆境を知らない日本人の脆さ
第4章 大破局への予兆
第5章 日本人を待ちうける意外な陥穽
第6章 危機逆転へのイノベーション
著者経歴
糸川 英夫(いとかわ ひでお)・・・・日本の工学者。(1912年7月20日生まれ、1999年2月21日没)専門は航空工学、宇宙工学。ペンシルロケットに始まるロケット開発で「ロケット開発の父」と呼ばれる。1967年、東大を退官し組織工学研究所を設立。
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