「日本復興計画 Japan;The Road to Recovery」大前 研一
2012/05/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
非常用電源の確保が必要
2011年4月30日に発行された一冊です。驚くのは、この時点で原発の状況を的確に説明している点です。(3号機の爆発は水素爆発であることも予測)
さらに、柏崎刈羽原発での事故後に、1 複数の原子炉を同一敷地に置くのは危険。2 非常用電源の絶対的な確保が必要。応急処置として、原理の異なる小型の発電機を設置。という提案もしています。電源がなければ冷却できない原子炉の弱点と、10台もの原子炉が集中立地するリスクは、事前にわかっていたということです。
東電という会社は、トップに原子炉のプラントで育った人がいなくなってしまった。原子力で発電量の35%を賄っていながら、現場を熟知した原子炉の専門家がトップにいない。・・柏崎刈羽の事故で全員パージされてしまった(p53)
原子力は国営化するべき
そしてこの本では、復興への対応策も示しています。まず、燃料プールの使用済み燃料は、シベリアか福島に埋める。
計画停電は最悪の対処法で避けるべきで、そのために電力ピークのみ減らすよう休日をずらしたり、時間帯別電気料金でピークを高くします。
復興の費用をまかなうために、期間限定の消費税増税を行います。そして、民間企業で原子力リスクは取れません。原子力は国で運営する。まったくその通りだと、私も思います。
計画停電の愚かしさについては、政府・民主党の最大の罪だったと思う・・・夜はピークを下回っているのに節電しても何の意味もない・・・電力需要のピークを下げることだけを集中的に考えると、料金を時間帯によって変えるなど、アイデアは何十と出てくる。(p98)
本質的改革は難しい
大前さんには、現実と未来が見えるようです。そして本質的な解決策を提案する力をもっています。それが"本質的"であるからこそ、大前さんの提案は受け入れられないのでしょう。
長期的な利益のために、短期的な痛みを受容するには、それを押し切れるリーダーが必要なのです。大前さんの期待は、橋本氏のような変人政治家。変人にしか現実は変えられないのです。大前さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・国民の家計所得をみたときに、日本は1991年に比べて、総額で12%も減っている・・米・英・仏で同じく家計所得の総額をみてみると、それぞれ約2~2.5倍になっているのである(p9)
・地域の繁栄をもたらすための道州制・・・国家財政が破綻するまで赤字国債を発行して、では日本全体が繁栄できたかといえば、補助金という酸素吸入がある限りはなんとかなるけれど、停止した途端に突然死、というのが現在の自治体の状況である(p107)
・「あなたにはセカンドライフで約8万時間もの自由になる時間があります。一日12時間として、それが20年続くと8万時間。さあ、何をしますか」(p122)
▼引用は下記の書籍からです。
文藝春秋
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【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
第1章 これで原子力の時代は終わった
第2章 三分の二に縮小する生活
第3章 日本復興計画
著者経歴
大前 研一(おおまえ けんいち)・・・1943年生まれ。経営コンサルタント。マサチューセッツ工科大学博士。日立製作所、マッキンゼー日本支社長を経て、1992年に「平成維新の会」を設立。1994年マッキンゼーを退職し、「一新塾」「アタッカーズ・ビジネス・スクール」を設立。現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授、スタンフォード大学経営大学院客員教授等を務める。
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