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「松下幸之助の哲学」松下幸之助

2011/06/18公開 更新
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松下幸之助の哲学 (PHP文庫)


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 1948年から1952年にかけて松下幸之助が書き綴った文章です。人間というもの、自然の法則というものについて思索しています。結論としては、世の中の実相に合った対応をすれば成功する、それに反すれば失敗するということです。


 松下幸之助は、こうした心の状態を「素直」と表現しています。素直に現実を見て、工夫と努力をすれば成功するのが当たり前ではないかということです。


・ではどのようにしたら、このような素直な心になれるのでしょうか。・・・素直な心の初段になるには碁と同じように一万回、みずから工夫し、思念しなければなりません。すなわち、自分の心の素直さを呼び戻そういう工夫と信念と努力とが肝要なのであります(p14)


 個別に宇宙の法則を見ていくと、人間には欲望と理性がある。それをうまく使うと、人間は優れた力を発揮する。また、収入以上の支出はできない。多く支出すれば、それは借金として将来に禍根を残す。当たり前のことですね。こうした文章が書かれてから10年後、1965年から「歳入欠陥を、国債でまかなってはいけない」と禁止されている赤字国債が発行されることになるのは、また残念なことであります。


 また、役人の数が多いことを指摘しています。人が多いと多くの仕事ができるわけではなく、多すぎると逆に能率が下がってしまうというのが、松下の知っていることなのです。いかに人の能力を発揮させるのか、とういことは、役人にも該当することなのでしょう。


・国民所得と国費との平衡が欠けている・・・いかなる場合でも、収入を無視した支出はありえないのであります(p251)


 松下幸之助は、「私には学がない」と常に言っていましたが、これほど真摯に世の中の実相を考えた人がいたのでしょうか。ドラッカーの本のように面白みはありませんが、ドラッカー以上の深さだと思います。松下幸之助さんに会いたくなりました。良い本をありがとうございます。


この本で私が共感した名言

・人間には偉大な力が与えられていると申しましても、実は一人だけの力では、とてもその偉大さを発揮することはできないのであります。・・・そのためには衆知を集めなければならないのであります。(p75)


・腹がへれば食べたい、喉が渇けば飲みたい、疲れると休みたい - これは疑うことのできない人間の一面であります。しかし、渇しても盗泉の水を飲まないということも、また明らかに人間の一面であります。このように人間は、動物的な欲望をもちながら、一方に善悪正邪を判断するところの理知的な面を備えております。これが人間の本質であります(p81)


・生成発展とはひと言で申しますと、日に新たということであります。毎日毎日が新しい人生であり、一瞬一瞬が新しい"生"であるということであります・・・これをいいかえますと、古きものが滅び、新しきものが生まれるということであります(p18)


・自分に与えられた天分を完全に生かすことが、真の意味の成功であり、ここに人間としての成功がある・・・人間はこの天分に生きることによって初めて、真の幸福というものを味わうことができる(p146)


・アメリカでは、子どものしつけは厳重で、十八、九の一人前になるころまでは、とても厳しく行なうということであります・・・やがて一人前になると、今度はほとんど干渉せずに、子ども自身の判断に任せ、自由に行動させる(p189)


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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

[1]自然・宇宙 
[2]人間 
[3]人生 
[4]社会 
[5]政治



著者経歴

 松下 幸之助(まつした こうのすけ)・・・パナソニック(旧松下電器)グループ創業者。PHP研究所創設者。1894年生まれ。9歳から火鉢店、自転車店に奉公し、大阪電灯(株)勤務。1918年松下電器を創業。1946年PHP研究所を創設。1989年94歳で永眠。


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