「天馬の歌 松下幸之助」神坂 次郎
2009/06/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
親族を亡くした松下幸之助
松下幸之助、幼少の頃から昭和36年に社長を引退し、会長に就任する頃までのお話です。火鉢屋、自転車屋、大阪電灯、そして独立と、エピソードとともに、松下幸之助の人生を味わうことができました。
松下幸之助はよく「運がいい」「私には私の道がある」などと言っていますが、この本を読んで、そう思わざるをえない人生であったのだと思いました。両親が他界し、七人いた兄弟姉妹もすべて病気で他界しているのです。そして、自分自身も病弱であり、いつ死んでもおかしくない状況だったのです。自分は生きている間に何ができるのだろうか、と考えていたと思うのです。
「僕には強い運がついちゃある」幸之助は、そう信じ、それを言葉にして語った。(p120)
電気の時代の到来を見定める
ですから、「自分は生かされている」「自分の人生の使命はなんなのだろうか」と考えていたのではないでしょうか。だから、これからは電気の時代だと、電灯から電車、電信が普及し、電気が使われる時代と感じたのです。実際、関西電灯に就職して仕事をしていたことも影響しているのでしょう。
電気の時代の到来を見定めた松下幸之助が、経営者として「生産活動による貧乏の撲滅」を使命として確信したとき、そこに相手を失神させてしまうほどに叱る強さを持てた理由のような気がしました。
人が叱っているとき、相手が腹の中で笑うような叱り方ではいけない。いっぺん叱ったら、いつまでも効くような叱り方でなければならない。(p303)
松下幸之助の人生
松下幸之助は、宗教法人を見学したとき、人は正しいことに向かって進むとき、力強くなれることを知りました。自分の事業経営もまた、人間としての生活に必要な物資を生産する聖なる事業と確信したのです。
このように、たんたんと松下幸之助の人生を仮想体験し、エピソードを感じるには良い本だと思いました。本の評価としては、★3つとします。
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この本で私が共感した名言
・幸之助は、この店番の時間が愉しみであった。幸之助は、表戸を閉めるまでの二時間ちかく、冬なら火鉢にもたれて、すきな講談本を夢中になって読みふけった(p93)
・十年も十五年も電池づくりをしていた君が、なぜ電池の気持ちがわからんのや。モノというものは、目の前に置いてにらめっこしたり、撫でてやったりすると、そっと話しかけてくるものや。(p359)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
ベソかき幸之助
旦那の下駄屋
さまざまな別離
ひとり旅
火鉢屋の小僧
自転車屋のコマンジャコ
大阪チリリン節
自転車選手 幸吉
幸吉っとんの慈母観音
船場学校の土性っ骨
著者経歴
神坂次郎(こうさか じろう)・・・1927(昭和2)年、和歌山市生れ。1982年『黒潮の岸辺』で日本文芸大賞、1987年『縛られた巨人―南方熊楠の生涯―』で大衆文学研究賞を受賞。1992(平成4)年には、皇太子殿下に自著『熊野御幸』を二時間半にわたって御進講した。2002年南方熊楠賞、2003年長谷川伸賞を受賞。他の著書に『元禄御畳奉行の日記』『今日われ生きてあり』『海の稲妻』『海の伽倻琴』など。
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