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「構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌」竹中 平蔵

2007/01/24公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

 小泉内閣で金融の部門で構造改革を推し進めた竹中元大臣の一冊です。竹中大臣の業績は、不良債権処理、郵政民営化、経済財政諮問会議などですが、その裏側で何が起こっていたのかを教えてくれます。


 私は、金融、経済、財政について詳しくありませんので、その政策について評価するつもりはありません。この本が面白いといえば、政治がどのように動き、役人がどのように動くのか知ることができることでしょう。特に笑えるのが、役人の行動です。面従腹背そのものであり、裏でいろいろと画策しているようです。


 例えば、郵政民営化では竹中さんは、「完全民営化」を目指していました。ところがこの表現が「完全に民営化」となると「特殊会社」「民間法人」「完全民営化」の三種類のどれかというのが官僚の定義なのだというのです。だから役人は、特殊会社でもいい「完全に民営化」の表現を狙って文章を作成し、しかも、閣僚が一年で一番忙しい時期に、持ち回りの決済を取ろうとしていたという。


 こうした役人の抵抗の中で、郵政民営化が進んだのは、選挙の争点とした小泉総理の覚悟があったのです。


・総理は、「民営化法案が否決されたが、郵政民営化を本当にしなくていいのか、国民に聞いてみたい。国民が反対なら、私は退陣する」と述べた。(p224)


 また、面白いのは、なぜ住宅金融専門会社(住専)に公的資金が投入されたのかという理由です。それは、住専が倒産すれば、最大の資金提供者である農協の経営が揺らぐからだというのです。本来住専は、国民の預金を受け入れる機関ではないので、公的な資金を使うのは筋が違うのです。農協の負担を減らすために政治的に住専に公的資金を使ったというのは、それだけ農業が伏魔殿ということなのでしょう。


 消費税を引き上げたい財務省に対し、竹中氏は批判的です。高い消費税引き上げを主張する人は、政府・日銀の財政運営がうまくできないので、国民に高い税金を負担してほしいと主張しているに等しいと批判しています。


 役人からすれば、それまで自由に政策運営をコントロールしていたのに、外から学者がやってきて、方針を決めてしまうことは、とても許すことができないという気持ちは理解できます。しかし、土地規制、グリーンピアなどの官僚のやってきたことの結果を思い起こせば、自分の政策・経営能力の程度はわかるはずです。


・官邸事務方の幹部から直接電話があった。「竹中大臣はシナリオの公表を考えているらしいが、それに数値を織り込むのは絶対にやめてもらいたい」高圧的な内容の電話だった。・・・私は、一歩も譲る気がないことを明確にし、その官僚を突き放した。(p254)


 郵政民営化の裏側を、竹中さんの解説で読みながら、本当に小泉さんは自民党(それまでの政治)をぶっ壊したんだな・・・と感じました。★3つとします。官僚の抵抗もマスコミを動かし、相当のものだったようです。ご苦労さまでした。


この本で私が共感した名言

・小泉総理に対する「変人」という形容は、実は前向きな意味で見事に本質を突いていたと私は思う。(p18)


・共産党は政府の失業予測がでたらめであり、このままいけば膨大な失業者が発生すると、我々を批判した。・・・テレビ朝日「ニュースステーション」でも、この共産党の主張とほとんど同じことが主張されていた。(p252)


・小泉内閣以前は、政府経済見通しが前年の12月に取りまとめられると、以降一年間経済情勢が変化しても見通しの改定は原則行われないことになっていた。いかにも、数字を出したくない官僚的発想の表れだった。(p280)


▼引用は、この本からです。


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

序章 改革の日々が始まった
第1章 小泉内閣という"奇跡"
第2章 金融改革の真実―"不良債権"という重荷
第3章 郵政民営化の真実―改革本丸の攻防
第4章 経済財政諮問会議の真実―政策プロセスはどう変わったか
終章 日本経済二つの道



著者経歴

 竹中 平蔵(たけなか へいぞう)・・・1951年生まれ。日本開発銀行、大蔵省財政金融研究所、大阪大学経済学部助教授、ハーバード大学客員准教授、慶応義塾大学総合政策学部教授などを経て2001年経済財政政策担当大臣。02年に金融担当大臣。2004年には郵政民営化担当大臣を兼務。2005年総務大臣。2004年には参議院議員当選。2006年小泉内閣とともに政界引退。現在、慶応義塾大学教授グローバルセキュリティ研究所長など。


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