「アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役」稲盛 和夫
2006/11/23公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
稲盛経営の一つの大きな柱といえば、アメーバ経営でしょう。会社を小さな組織に分割し、それぞれの組織(アメーバ)を一つの会社のように取り扱うのです。小さな組織に分割することで、どんぶり勘定の状態を避けるのです。
社外のみならず、アメーバ同士の取引についても、それぞれのアメーバの利益を乗せた価格で取引が行われ、それぞれのアメーバが決算を行っています。社外と取引しているアメーバは市況により取引価格を変えるため、社内のアメーバ間の取引により、市況がすぐに全社に共有されることになるのです。
・アメーバ経営では、製品の市場価格がベースとなり、社内販売により市場価格が各アメーバに直接伝えられ、その社内販売価格をもとに生産活動がおこなわれている。(p135)
決算といっても、会社の決算とはちがいます。労務費は経費に参入せず、その代わり、付加価値を労働仕事で割った数字を見るようにしています。それも月次で時間当たり採算表を見るだけでなく、日々集計をおこない、その結果を現場の運営に活かしているというのです。
これは、アメーバが、人件費をコントロールできないこともありますが、時間あたりの付加価値を把握することで、労務費単価と比較することで、利益が出るか出ないか把握できるからでしょう。
こうしたアメーバ経営を進めていくと、アメーバ間で自分の利益を最大化するために多くの問題が発生します。そうした問題を解決するために、各アメーバのリーダーに理念を教育したり、全体最適を考えることのできる部門リーダーの育成が必要なのです。
・アメーバ経営を実践していくと、担当している事業を守り、また伸ばしていくために、リーダーが優秀な人材を自部門に囲い込むようなことが起こる。・・・しかし、それでは適材適所の人材配置ができなくなり、会社全体の進歩発展が阻害されてしまう。(p242)
また、外注を増やすことで、自部門の従業員を減らして、「時間当たり」をよくすることは可能であるとしています。しかし、それでは永続して付加価値を高めていくことはできないとしています。つまり、製造業であれば自社内で重要な技術を蓄え、創意工夫を重ねる人材を増やしていくことが王道なのです。
このようにアメーバ会計を維持するのは、たいへんなことだとわかりました。それでも独自の管理会計としてアメーバ会計を推し進めのは、ドンブリ勘定に対する稲盛さんの危機感だと思いました。アメーバ会計だけでなく、経営そのものについて示唆に富む内容の一冊でしたので、★5つとします。
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この本で私が共感した名言
・金銭により人の心を操るような報酬制度を京セラはとっていない。・・・アメーバがすばらしい実績をあげれば、会社に大きく貢献してくれたという理由で、信じ合う仲間たちから賞賛と感謝という精神的な栄誉が与えられる。(p84)
・技術的優位というのは、このように永遠不変のものではない。だから、企業経営を安定させようと思うなら、たとえ技術的にさほど優れていなくとも、どこでもやれるような事業を優れた事業にすることが大切である。(p92)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1章 ひとりひとりの社員が主役
1 アメーバ経営の誕生
2 市場に直結した部門別採算制度の確立
3 経営者意識を持つ人材の育成
4 全員参加経営の実現
第2章 経営には哲学が欠かせない
1 事業として成り立つ単位にまで細分化
2 アメーバ間の値決め
3 リーダーには経営哲学(フィロソフィ)が必要
第3章 アメーバの組織づくり
1 小集団に分け、機能を明確に
2 市場に対応した柔軟な組織
3 アメーバ経営を支える経営管理部門
第4章 現場が主役の採算管理
1 全従業員の採算意識を高めるために
2 「時間当り採算表」から創意工夫が生まれる
3 京セラ会計原則の実践
4 実績管理のポイント
5 収入のとらえ方 他
第5章 燃える集団をつくる
1 自らの意志で採算をつくる
2 アメーバ経営を支える経営哲学
3 リーダーを育てる
著者経歴
稲盛 和夫(いなもり かずお)・・・1932年生まれ。鹿児島大学工学部卒業。1959年京都セラミックス(現京セラ)を設立。66年社長。1985年会長。1984年に第二電電(現KDDI)を設立。1987年セルラー電話会社を設立し、会長に就任。京セラ名誉会長。
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