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【書評】認知症の親にどう対応するべきなのか「アドラー式 年老いた親たちとのつきあい方」熊野 英一

2025/05/02公開 更新
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「アドラー式 年老いた親たちとのつきあい方」熊野 英一


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー


その問題はだれの問題ですか?

認知症の親に対し、私たちはどうあるべきなのでしょうか。


著者は子育て支援をしながら、アドラー心理学を活用した家族カウンセリングを行っています。お客様から、「親の認知症が始まり、コミュニケーションがとれずイライラします」と相談された場合、「あなたが悩んでいるその問題は、本当は、だれの問題ですか?」と質問するという。


これはアドラー心理学における「課題の分離」です。親とコミュニケーションが取れないのは「自分の課題」です。その原因を「親の課題」として親に改善を求め、改善されないとイライラするのはお門違いなのです。


また、他には認知症の親に同情し、不安になる人もいると思います。しかし、同情とは「親の課題」を自分の課題として勝手に引き受けて、親を助けてあげなければならないという上から目線の考え方とも考えられるのです。


周囲のいうことを聞かず頑固に運転免許証を返納しようとしない・・これらはすべて「親の課題」です(p24)

親の認知症は「親の課題」

では、認知症の「親の課題」に対して、私たちはどう対処すればいいのでしょうか。


それは、親と対等な目線で親に共感し、「親の課題」にはおせっかいを焼かず、まずは信じて見守ることです。また、親の認知症は「親の課題」ですから、深刻になりすぎず、親の不適切な行動に注目せず、できているところに注目するのもよいでしょう。


実際、著者の家族カウンセリングでは、現状の悩みを把握し見える化したうえで、「課題の分離」を行うという。そして、親との関係の改善目標を設定し、課題解決のためのアクション・プランを作り、実行していくというのです。


例えば、「自分の課題」として、親とのコミュニケーションが取れないのであれば、専門家に相談したり、家族会議で議論してみる。


「親の課題」として、親が免許証を返納しないのであれば、親に老人の事故のデータを説明したり、万が一の場合の対策を考えるように促すこともできるわけです。


老いた親・・同情とは、親の課題に土足で介入し、勝手に自分の課題として引き受けてしまうおせっかいな態度です(p32)

罪悪感や劣等感を克服する勇気

家族カウンセリングの中で著者が感じるのは、親は無意識のうちに、子どもは勇気をくじき、罪悪感や劣等感を植え付けることがあるということです。つまり、過剰な親の期待によって、「これができなければ、親に愛してもらえないのでは?」と、罪悪感や劣等感を感じ、自己肯定感が低い人が多いというのです。


ある母親の例では、息子には甘いのに、娘には上から目線でダメ出しをして勇気くじき、自分の理想の女性像を押しつける人がいるという。そして、こうした体験から罪悪感や劣等感に縛られたままの人もいるし、勇気を持って前向きに生きている人もいるのです。


アドラー心理学では人は過去のトラウマなどの「原因」によって縛られるのではなく、今の「目的」に沿って、与えられたものを使って「変わりたい」と思えばいつでも人生をデザインしなおして生きていけると考えます。


私たちは親からの影響で与えられた罪悪感や劣等感から、勇気を持って離れ、他者に貢献しようという考え方に変わることができるはずなのです。


アドラー心理学では、現実から目をそらすことを目的に、過去を持ちだして、現実を変える努力をしないことを正当化しません(p54)

介護は親からの最後の課題

著者は介護とは、あなたの親があなたに最後に与えてくれた、自らの共同体感覚を発揮するための課題であると定義しています。つまり、親の老いに向きあうことで、自分自身の生き方、考え方を「自分が認められたいから、他人に貢献したい」に見直すのです。


例えば、あの時、親にひどく叱られたのは、これまで自分のトラウマだと思っていたが、実は、あれは親の愛情の裏返しだったのではないだろうかなどと気づくこともあるわけです。


アドラー心理学の活用方法が、具体的にわかりました。熊野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・フロイトの考え方は・・子どものころにいじめられたことが原因=トラウマとなって、「人とコミュニケーションをとるのが怖い」。だから、「外に出ることができなくなった」と考えます。一方、アドラーは・・「外に出ない」という目的のために、引きこもりという手段を選んだと考えます(p53)


・「勇気」とは、困難を克服する活力のことだ。勇気のない人が困難に出合うと、人生のダークサイドへと落ちていってしまう・・ダークサイトどは、例えば、アルコール中毒や神経症になることです(p178)


・自分の課題には、他者の介入を認めない・・他者のせいにして、依存的な解決を求めない・・自分で解決しようとする(p26)


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「アドラー式 年老いた親たちとのつきあい方」熊野 英一
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熊野 英一(著)、海竜社


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次


第1章 老いた親とのつきあい方を見直す
第2章 10分でわかるアドラー心理学
第3章 あなたが幼いころに身につけたライフスタイル
第4章 老いた親とのつきあい方まずは親の老化ぐあいを知る
第5章 アドラー式 親との向きあい方5ステップ
実践編
第6章 過干渉型の親とのつきあい方
第7章 あなたを今なお呪縛する親とのつきあい方
第8章 自立が困難になってきた親とのつきあい方
第9章 介助なしでは生活できなくなった親とのつきあい方
第10章 まもなく死を迎えようとしている親とのつきあい方)
最終章 あなたは自分の人生をどう終えますか?


著者経歴


熊野 英一(くまの えいいち)・・・株式会社子育て支援/ボン・ヴォヤージュ有栖川代表。1972年フランス・パリ生まれ。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員。アドラー心理学にもとづく家族カウンセラー。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国インディアナ大学に留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライリリー米国本社および日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。2007年株式会社子育て支援を創業。保育サービスを展開するかたわら、アドラー心理学に基づくファミリーカウンセリングを行う。アドラー心理学をベースとした、人材育成に関する企業研修や、子育て、働き方、介護、夫婦関係など多岐にわたるテーマでのセミナーや講演会を行う。


アドラー心理学関連書籍


「生きる意味―人生でいちばん大切なこと」アルフレッド・アドラー
「アドラー心理学入門」岸見 一郎
「自己肯定感を高める、アドラーの名言」桑原晃弥
「定年後の人生を変えるアドラー心理学Adler's Barへようこそ」八巻 秀


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