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「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」ダニエル・ソカッチ

2023/11/01公開 更新
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「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」ダニエル・ソカッチ


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

パレスチナ問題の歴史

イスラエルとハマスとの軍事衝突が、イスラエルのガザ地区で起こっています。この問題について語るために、何冊か読んでみたなかで一番わかりやすかったのでご紹介します。


そもそもの発端は、国を失ったユダヤ人が各地で迫害され、聖書で「約束の地」と言われるパレスチナに移住しはじめたことからはじまります。当時パレスチナはイギリスが支配しており、イギリスはパレスチナへユダヤ人が移住することに賛同していたのです。


その後1939年となると、イギリスはユダヤ人移住者の増えたパレスチナをアラブ人とユダヤ人が共同統治とし、ユダヤ人のさらなる移住を制限すると表明しました。ところが、第二次世界対戦でイギリスの力が低下し、ナチスによるホロコーストでユダヤ人はますますパレスチナに移住してくることになるのです。


パレスチナでのユダヤ人とアラブ人の対立が深まる中、ユダヤ人の人口が三分の一となった1948年、ユダヤ人はイスラエルの建国を宣言します。この建国宣言はアラブ側を刺激し、第一次中東戦争が始まります。その中で、70万人ものアラブ人がパレスチナから追放されることになったのです。


・1948年から49年にかけて、パレスチナのアラブ人の大々的な追放と逃亡を引き起こした・・いまなら多くの人が民族浄化と言うだろう・・(p81)

イスラエルの占領地入植は国際法違反

1967年にはエジプト、シリア、ヨルダンとイスラエルの対立から、第三次中東戦争が起きます。6日でイスラエルの圧勝で終わったこの紛争に対し、国連安全保障理事会は紛争で占領された領土からのイスラエル軍の撤退を求める決議242号を採択しています。その後のすべての和平交渉は、この決議を拠りどころにしているのです。したがって、イスラエルの占領地への入植は国際法違反であり、占領地が自国の民間人を占領地域に移送することを禁ずるジュネーブ第四条約に違反していると考えられています。


こうしたイスラエルの占領政策に対して、パレスチナ人は投石やデモによる民衆蜂起(インティファーダ)で対抗し、イスラエルは催涙ガス、ゴム弾、ときには実弾で鎮圧してきたのです。現在、多くのイスラエル人にとって、入植地は自国領ではないけれども、実質的には自国の一部です。2012年にイスラエル政府が入植地のアリエルにある公立大学を総合大学として認可した際、「密かな併合」と批判されたことがあるという。


イスラエルの中にも、右派と左派があり、現在のネタニヤフ首相の右派の「リクード」は、大イスラエルを主張し、領土拡張を目指しており、イスラエルの領土拡張に対し、アラブ側が反発する構造は変わることがないのでしょう。


・イスラエルがアパルトヘイト国家かどうかは、最も議論が沸騰する問題の一つだ・・(p317)

正義による武力闘争の歴史

イスラエルとパレスチナは、和平を目指し、その和平案は強硬派が武力闘争で破壊するという歴史を繰り返していることがわかります。イスラエル建国から75年が経ち、現在、イスラエルには920万人が住んでおり、紛争の相手であるパレスチナ人は475万人で人口構成は逆転しているのです。


ここまでくると、どちらにも正義があるわけで、アメリカやオーストラリアが原住民に対して対して行ったように、「保護と管理」という名の下に人種隔離されてしまうのでしょうか。日本でも5万人の島に1万人くらいの中国人がやってきて、建国を宣言して75年も経てば既成事実が作られてしまうんだなと、妄想してしまいました。ソカッチさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・イスラエルから逃亡した、あるいは追放された70万人のパレスチナ人はどうなったのだろうか?大半はトランスヨルダン、トランスヨルダン支配下のヨルダン西岸、レバノン、シリア、エジプト、エジプト支配のガザ地区に渡った(p87)


・ユダヤ系イスラエル人男性の大半は、現役の兵役を退いたあとも数十年間にわたり毎年、最長で一カ月ほど定期的に予備役に就く(p110)


・アメリカ人のおよそ四分の一が福音派キリスト教徒を名乗り、そのうち80%が、ユダヤ人のイスラエルへの帰還と国家建設が「イエス・キリストの帰還が近いことを示す聖書の予言の成就」だと信じているという(p327)


▼引用は、この本からです
「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」ダニエル・ソカッチ
ダニエル・ソカッチ、NHK出版


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

第1部 何が起こっているのか?
1章 ユダヤ人とイスラエル
2章 シオニストの思想
3章 ちょっと待て、ここには人がいる
4章 イギリス人がやってくる
5章 イスラエルとナクバ
6章 追い出された人びと
7章 1950年代
8章 ビッグバン
9章 激動
10章 振り落とす
11章 イスラエルはラビンを待っている
12章 賢明な希望が潰えて
13章 ブルドーザーの最後の不意打ち
14章 民主主義の後退
第2部 イスラエルについて話すのがこれほど難しいのはなぜか?
15章 地図は領土ではない
16章 イスラエルのアラブ系国民
17章 恋物語?
18章 入植地
19章 BDSについて語るときにわれわれが語ること
20章 Aで始まる例の単語
21章 Aで始まるもう一つの単語
22章 中心地の赤い雌牛
23章 希望を持つ理由



著者経歴

ダニエル・ソカッチ(Daniel Sokatch)・・・社会活動家。イスラエルの民主主義を名実共に達成させるためのNGO、「新イスラエル基金(New Israel Fund)」のCEO。同基金は、宗教、出身地、人種、性別、性的指向に関わらず、すべての国民の平等を確立すること、パレスチナ市民やその他の疎外された少数派の保護、およびあらゆる形態の差別と偏見をなくし、すべての個人と集団の市民権と人権を確立すること、イスラエル社会の本質的な多元性と多様性を認識し、それに対する寛容性を強化すること、マイノリティの利益とアイデンティティの表現および権利のための民主的な機会の保護、自国および近隣諸国と平和で公正な社会を構築し維持すること、などを目標に掲げて活動している。妻と二人の娘と共にアメリカ、サンフランシスコに在住。


イスラエル関連書籍

「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」ダニエル・ソカッチ
「イスラエル ユダヤパワーの源泉」三井 美奈
「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策」ジョン・J・ミアシャイマー
「イスラエル秘密外交: モサドを率いた男の告白」エフライム・ハレヴィ
「続 まんが パレスチナ問題 「アラブの春」と「イスラム国」」山井 教雄
「だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる」バヴア(Bavuah)


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