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「だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる」バヴア(Bavuah)

2023/11/21公開 更新
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「だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる」バヴア(Bavuah)


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

イスラエル内でも分断がある

北アフリカ系ユダヤ人の母と日本人の父を持つ井川氏と、東京大学でパレスチナ問題について研究している戸澤氏が、「まんが」でイスラエルを伝える一冊です。イスラエルの基礎知識がないと「まんが」を理解できないので、三分の二がイスラエルの歴史の説明となっています。


イスラエルには三種類のユダヤ人がいることがわかります。イスラエルを建国したヨーロッパ系ユダヤ人(通称アシュケナジーム)と、アラブ系イスラエル人とミズラヒーム(中東・北アフリカ出身ユダヤ人)です。特に中東・北アフリカ出身のミズラヒームは差別を受け、経済的にも貧困層が多いというのです。アラブではユダヤ人と呼ばれ、イスラエルでは中東出身と差別されているのがミズラヒームなのです。


・イスラエルを建国したヨーロッパ系ユダヤ人(通称アシュケナジーム)の人々と比べ、ミズラヒームは社会経済的に低いステータスにいる(p8)

どうして他民族に同様の苦しみを負わせることができるのか

イスラエルでは政治的には右派と左派にわかれており、宗教シオニストたちは右派政党を結成し、入植地建設を進め、左派は、パレスチナとの二国家建設を目指しているという。現在の与党のリクードは右派政党です。


そもそも19世紀後半に、ヨーロッパや東欧、ロシアで差別されていたユダヤ人がアラブ人が暮らしていたパレスチナ地方に移住しはじめたのがことのはじまりです。パレスチナを委任統治していたイギリスの支援も受けながら、ユダヤ人の人口が増えていくにつれて、地元のアラブ人との対立も激化していきます。1948年にイスラエルは建国を宣言し、そのエリアに済んでいた75万人ものパレスチナ人が難民として追い出されたのです。


著者はユダヤ人のホロコーストの苦しみは想像を絶するものだが、どうして他民族に同様の苦しみを負わせることができるのか理解できないとしています。


・ヨルダン川西岸地区・・まず驚いたのが、巨大な壁(2002年から建設が始まり、総距離712キロメートルで高さ6~8メートルの壁)・・監視塔も「ここは監獄なのだろうか?」と思わせる(p18)

ユダヤ人の率直さ、大胆さ

こうしてイスラエルの歴史を見ていると、アメリカもメキシコの領土を奪ったし、中国もウイグルの領土を奪ったのであって、弱いものは抑圧されるという現実を知ることになりました。一方、なぜユダヤ人がこれだけパレスチナ人を抑圧できるのか?という著者の疑問への答えはありませんでした。


ヒントとしては、イスラエルは敵に囲まれているという厳しい環境があります。一度でも戦争に敗れれば、国家喪失の可能性があるからです。また、ヘブライ語で「フツパ」といわれるユダヤ人の率直さ、大胆さもあるでしょう。イスラエルではバスや店の列への割り込みや、学校の授業で先生を無視して私語をしたり、初対面で真っ先に「あなた何歳?」と聞くなど、常識を超えた傲慢さを体験するという。


イスラエルを理解するのには、時間がかかりそうです。バヴアさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・ユダヤ人口の4割はユダヤ教の教義や戒律をほとんど守っていない世俗派(ヒロニーム)と呼ばれる人達でもある(p41)


・LGBTQを支援する大規模なレインボーパレード・・「民主主義国家」であるというイメージ作りによって、パレスチナ占領やパレスチナ人への抑圧を隠そうとしている(p45)


・イスラエルでは兵役を終えると一市民として認められるだけでなく、就職先や住宅購入時の住宅ローン受給資格の獲得が可能になるなど、兵役が社会経済的な資格としてみなされている(p67)


・イスラエルには、タブーとされているトピックが数多くあります。たとえば、ホロコースト、軍、戦争による犠牲、神様(p197)


▼引用は、この本からです
「だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる」バヴア(Bavuah)
バヴア(Bavuah)、花伝社


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

グラフィックノベルで架橋する社会
中東に跳びこむ(戸澤典子fromバヴア)
「二重の移民」を生きる(井川・アティアス・翔fromバヴア)
イスラエルってどんな国?
エルサレム・ビーン
ただいま
声たちが見える
アーク
イスラエルの日常を描く―イスラエル人アーティストへのインタビュー
ルトゥ・モダン
アサフ・ハヌカ
ギラッド・セリクター
ヤルデン・ヴァッサ



著者経歴

バヴア(Bavuah)・・・井川・アティアス・翔と戸澤典子が2017年にイスラエルで設立したグラフィックノベル制作ユニット。井川はイースタン・メノナイト大学で紛争解決の修士課程修了、戸澤は東京大学大学院総合文化研究科博士課程後期に在籍。それぞれ社会学の知識を生かしながら、イスラエル・パレスチナの様々な人びとのストーリーに耳を傾け、マンガ作りに励む。今後は活動の場を日本へ広げ、日本の人々の多様性を描いていきたい。


イスラエル関連書籍

「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」ダニエル・ソカッチ
「イスラエル ユダヤパワーの源泉」三井 美奈
「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策」ジョン・J・ミアシャイマー
「イスラエル秘密外交: モサドを率いた男の告白」エフライム・ハレヴィ
「だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる」バヴア(Bavuah)


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