【書評】陸上自衛隊の猛者たち「戦う者たちへ (日本の大義と武士道)」荒谷卓
2020/09/30公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
建前ばかりの法律と憲法
著者は陸上自衛隊初の特殊作戦群を作り上げ、初代群長となった人です。憲法で戦力不保持とした日本では自衛隊は戦力ではないのであり、建前ばかりの法律とそれを放置する政治家、実戦を考えない自衛隊幹部に、自衛隊員は日々管理されています。
さらには外国勢力と連動した政治家、教師、マスコミからは、憲法上存在してはならない暴力装置として批判される日々なのです。そうした環境の中で現場の自衛隊員はなぜ自分は戦うのか、何のために命をかけるのか悩むのだという。
現実問題として、戦後、自衛隊は政治的に「存在すること」だけを期待され、国土防衛といいながら、現実味のない教育訓練を繰り返してきたのだという。当然、隊員は、大過なく退職を迎えることを当然と感じ、「死」に直面する本当の戦場の訓練を受けてきていないというのです。
自衛隊を運用する気構えもない政治指導者と、実戦に使われることなど考えもしない自衛隊上層部に管理されて、自衛隊の中の真の戦闘者たちは日々悶々とした状態にあった(p189)
日本が戦後に失ったもの
日本という国は一見平和なようですが、戦後、大切なものを失ったのではないかというのが著者の考えです。それは、不当なことには戦う心。世のため、人のためという公共心。そうした影響が靖国神社問題となったり、拉致問題の解決を難しくしているというのです。
つまり、敵意のあるものに対して、一方が「戦わない」と宣言したからといって、平穏でいられることなど、現実にはありえないということです。著者は、戦後の日本人が憲法精神に従って放棄したのは「戦争」ではなく、「戦うことも辞さない正義心を持った生き方」なのではないかと問いかけるのです。
今も日本の大切なものを破壊しようとする勢力、政治家、マスコミ、学者、知識人といわれる人たちが存在しているのです。
靖国神社問題・・・国の命令により参戦し命を落とした人々を冷淡に扱い、挙句の果てに外国勢力と声を合わせて批判までする有り様だ。英霊にこのような仕打ちをする国は他に例がない(p91)
憲法改正の意味
安倍政権が憲法改正を目指したのは、戦後75年間の矛盾を解消するためであったように感じました。現状を変えることはなかなか難しいことですが、誰かが変えなくてはなりません。
私が気になったのは、日本人拉致問題への著者の意見です。つまり、拉致現場は日本全国のみならず海外にまで及ぶのに、拉致に加わった犯人が、いまだ一人も捕まっていないということです。拉致した被害者を国外に連れ出すのに、少なくとも十名以上の協力者が必要であり、組織的なものなのです。
まずは、自分自身のできる範囲であるべき姿を考えてみるということでしょうか。荒谷さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・自衛隊でしばしば耳にする「命令ならば戦います」という戦闘者のモチベーションとは何か・・・多くの場合、仲間外れになりたくないという「愛と所属の欲求(帰属欲求)」、あるいは、褒めてもらいたいという「承認欲求(評価欲求)」であろう(p90)
・戦場ストレスに悩む患者のほとんどが、「あのとき、なぜ自分は人を殺してしまったのか」と、自責の念にかられているという(p80)
・「国体」を英訳すれば「コンスティチューション」、つまり「憲法」である。憲法を抜本的に変えるということは、国体を変えるということに他ならない。さらには、憲法と並ぶ皇室典範が内容を改竄され、一法律に置かれたことの意味は大きい(p23)
・テレビでは、下品な人間が崇高な考えの人間を批判し、社会の水準を下へ下へと引きずり下ろそうとする(p68)
・少し前までは、「世のため人のために働く」ことを誇りとした日本人が、「自分のために好き勝手なことをするのは当たり前だ」というようになってしまった(p73)
・己れに克つとは、「わがままをしない。無理押しをしない。固執しない。我を通さない」ということ(p75)
【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
第1部 大義の下の戦い
1日本人が忘れたもの
2「大義」を喪失した日本
3 戦わない日本人
4グローバリズムのもたらすもの
5「人権思想」の限界
6個人の「自由」が暴走する社会
7普遍的な神道の考え方
8日本建国の理念
9人間の真心を具現する武士道
10武士道の体現者
11自然の摂理に従い生きる
12共存共栄をめざす武士道精神
13武士道精神が世の中の邪気を祓う
第2部 戦う者たちの武士道
14戦いの目的
15行動する勇気
16持続する気力
17実効性ある能力
18力の組織化
著者経歴
荒谷 卓(あらや たかし)・・・昭和34年(1959)秋田県生まれ。大館鳳鳴高校、東京理科大学。理科大在学中は極真空手流山道場、明治神宮の武道道場・至誠館で稽古を重ねる。卒業後、昭和57年陸上自衛隊に入隊。福岡19普通科連隊、調査学校、第一空挺団、弘前39普連勤務後、ドイツ連邦軍指揮大学留学(平成7~9年)。陸幕防衛部、防衛局防衛政策課戦略研究室勤務を経て、米国特殊作戦学校留学(平成14~15年)。帰国後、編成準備隊長を経て特殊作戦群初代群長となる。平成20年退官。1等陸佐。平成21年、明治神宮武道場「至誠館」館長に就任。
自衛隊関係書籍
「自衛隊が世界一弱い38の理由―元エース潜水艦長の告発」中村 秀樹
「自衛隊、そして日本の非常識」清谷 信一
「戦う者たちへ (日本の大義と武士道)」荒谷卓
「徴兵制が日本を救う」柿谷 勲夫
「真説・国防論」苫米地 英人
「国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動」伊藤 祐靖
「自衛隊失格:私が「特殊部隊」を去った理由」伊藤 祐靖
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