「「朝日」ともあろうものが。」烏賀陽 弘道

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「朝日」ともあろうものが。

【私の評価】★★★★☆(83点)


■烏賀陽(うがや)さんは1986年
 朝日新聞に入社し、1991年から
 2001年まで「アエラ」編集部記者。
 2003年にフリーになっています。


 著者がなぜ朝日新聞を辞めたかというと
 良い記事を書けば評価されるのではなく
 他社より先に報道するだけで
 評価されるからです。


 さらに、記事の内容よりも
 朝日の方針を忖度して
 現実を加工して報道することが
 出世の最低条件だった。


 良い記事を書いても評価されない
 こと、現実を歪めて報道することに
 著者は耐えられなかったのです。


・当時のぼくを毎日激しく苦しめたのは・・・「特ダネ」を書かないと社内で努力を認めてもらえないということだった・・ここでいう「特ダネ」は・・期日が来れば発表されてしまうようなものでも構わない(p46)


■その他、著者の経験が続きます。


 あるデスクは仕事中に酒を飲み
 自分の捏造記事を自慢する。


 自費のアメリカ大学院留学を
 罵倒した人が取締役になる。


 アシスタントが書いた記事を
 自分の署名記事として
 報道する記者がいる。


 他社の失敗は攻撃し、
 自社の不祥事は握りつぶす。


 朝日新聞は普通の日本の
 マスメディアだったのです。


・朝日ともあろうもの・・経費やタクシー券をチョロまかす同僚であり、記事の捏造を部下に強要するデスクであり、「前例がない」と言って原稿をボツにする上司であり、社用ハイヤーで奥様とフランス料理を食べに出かける幹部(p10)


■著者は社内で夕刊廃止や、
 すべての記事に署名を入れること、
 記者クラブ廃止を提案するなど
 かなり先進的な人のようです。


 そうした著者は、朝日新聞には
 合わなかったのでしょう。


 著者から見ると、
 こんな人が出世するのか?!
 ということもあったようですが、
 それが現実であり、
 その現実を知っている人が
 出世するのです。


 烏賀陽(うがや)さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・評価されるのは「努力」ではなく「苦労」である・・重要なのは「どんな記事を書いたか」よりは「ミスなく過ごしたかどうか」(p129)


・「特ダネって、どんな話ですか。不祥事ですか」編集委員氏、わからんヤツだと思ったのかだんだん不機嫌になった。「何でもいいんだよ。発表してない話なら」・・冗談のように聞こえるかもしれないが、彼は本気だった(p137)


・「一年の担当の間に社会面に載る特ダネを一本は書け。そうでないとサツ回り失格」と、上司や先輩に宣告された(p48)


・「息子の遺作となったポスターを手にする母○○子さん」・・ただでさえわが子を失って悲しみに暮れる母親を、どうして紙面に引っ張り出す必要があったのだろう・・ぼくは子を失った母親の悲しみを自分の功名心のために利用したのだ(p62)


・ぼくが「現実を加工して取材する」ことに初めて遭遇したのは、新人記者として津市に赴任して10日ほど経った86年の4月20日である・・「・・客がたくさん写っている絵はないのかね」「ありません。全然客がいないんです・・」「そういう時は、そこらにいる職員にお客さんのふりをしてもらうんだよ」「へ?」(p201)


・ぼくの上にいたデスクのように、・・「バレなきゃいいのさ」・・とささやく先輩か上司がいたはずだ。そうでなければ、捏造そのものを思いつかない(p199)


・バレたサンゴ・カメラマンはクビになり、バレなかった捏造デスクや百円ラーメン記者は処分なしでは、不公平なのだ・・・ぼくのように捏造を報告しても、管理職がそれを握りつぶす・・不正を黙認する組織をどうやって信用しろと言うのだ・・朝日は自らのことになると腰が砕ける。ぼくはこういう「偽善」が嫌いだ(p209)


・朝日のニューヨーク支局に・・アメリカ人青年がアシスタントとして働いていた・・「朝日の記者は記事を盗むのか」という。彼が取材、インタビューした記事を、記者が自分の署名を入れて紙面に出してしまうというのだ・・彼は朝日を辞め、日本に関する仕事からも離れた(p176)


・「再販制度によって、レコード会社が価格を決めてしまい、小売店が値引き競争できないことが背景にあるのではないか」という趣旨の分析をした・・・担当デスクがすぐ反応した。「あまりあからさまに再販制度を批判しないようトーンダウンしてくれ、と編集長が言っている」というのである(p90)


・記者クラブに入ると・・・ボールペン、Tシャツ、時計・・・お土産も途切れることがない・・図書券、商品券、テレフォンカード・・名古屋市からのお中元も、ぼくの自宅に届いた(p107)


・上司に留学の計画を打ち明けてみた・・・「留学ってお前、そんな教養を深めるなんてことのために会社は時間をやれないぞ」・・「やる気がなくて仕事から逃げたがっている証拠」としか見なかった・・ぼくを恫喝したデスクの方は、02年に取締役になった(p164)


・ぼくがアメリカの大学院へ留学を決め、上司や先輩に挨拶をして回ったときも、真顔でこう言う人がいた。「ウガヤ君、そんなことをするとみんな嫉妬するよ。この会社は嫉妬社会だからね。周りに嫉妬された者は生き残れないんだ」(p237)


「朝日」ともあろうものが。
烏賀陽 弘道
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【私の評価】★★★★☆(83点)

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■目次

ぼくはなぜこの仕事を選んだのか
みじめでまぬけな新米記者
パワハラ支局長
高校野球報道って偏向じゃないの
記者クラブには不思議がいっぱい
夕刊は不要どころか有害
朝日の人材開発は不毛の荒野だった
ぼくが初めてハイヤーに乗った日
捏造記事はこんな風につくられる
上祐へのインタビュー原稿がオウムに渡っていた
「前例がない」の一言でボツ
かつて愛した恋人、アエラ
さようなら。お世話になりました。


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