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「世界標準の戦争と平和-初心者のための国際安全保障入門」烏賀陽 弘道

2019/12/02公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

 著者は朝日新聞入社、アエラの記者となり、国際政治を学ぶために自費でアメリカ留学したという変わり種です。この本はアメリカで学んだ地政学、国際政治について解説する一冊となっています。著者がアメリカで学んだことは国際政治は力と力のぶつかり合い。軍事力、核兵器の有無が大きな影響力を持ってるということです。


 留学先のラギー学長は国際紛争の予防や解決を国際機関に委ねる「インスティテューショナリスト」(国際機関主義者)でしたが、そんな人でも「国際政治の現実の基盤には軍事があり、核兵器がある」と言っていたという。そして、国際関係の情報分析では、現実と希望・願望を混同してはならないと説いたというのです。北朝鮮が核兵器にこだわるのも合理的な判断なのでしょう。


・1992年から94年、私が・・コロンビア大学国際公共政策大学院の2年間の修士過程で学んだ時・・ラギー学長が講義・・・国と国との政治とは、究極的には力と力のぶつかり合いである・・二極構造が崩れた世界は多極化して制御が効かなくなり、混迷を深めるだろう。そんな話でした(p41)


 国と国の間には法律がありません。国際法というものがありますが、これを守らなくても罰則はないのです。アメリカはハワイを併合した。中国はチベットを併合した。ロシアはクリミア半島を併合した。弱い国に平和は保証されないのです。


 例えば、尖閣諸島は沖縄と台湾と中国本土の中央に位置し、尖閣諸島を軍事基地化してもらては困るのです。「取られるより先に取ってしまおう」というオプションもありえるわけです。また、ロシアが米軍が北方領土に展開しないと保証しろと言うのも当然のことなのです。


 日本は食料の62%とエネルギーの92%を海の輸送路(シーレーン)に依存しています。日本は石油を禁輸させられて、太平洋戦争に突入しました。こうした弱肉強食の国際社会の中で非武装中立で平和が保たれると考えるのは、現実を理解していないということなのでしょう。


・「核兵器なき国には血なまぐさい虐殺がある。一方、核兵器のある国には平和と繁栄がある」今人類が手にしているのは、そんなアイロニーと矛盾に満ちた、ねじれた現実なのです(p38)


 著者は「平時の軍事力は、家の戸締まりのようなもの」と説明しています。現状の自衛隊で、戸締まりは十分なのかどうか、もう少し調べてみたいと思います。


 日本人はとても優秀な民族だと思いますが、上に行くほど無能だという。これは無能というよりも現実に即した方針・政策を示す人が上に行けない、現実に合わない人が出世してしまう文化にあるのかもしれません。烏賀陽(うがや)さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・(ポリシーペーパー。政策提案書)・・「取りうる政策オプション」をすべて提示すること・・そして、それぞれのオプションを実行した時に予想される"Benefit(得るもの)""Loss(失うもの)"を併記しなくてはなりません(p291)


・ロシアほど外洋に出る船のルートが他国にブロックされている国は珍しい・・ここ(クリミア半島)にあるロシア郡の拠点のある都市がセバストポリ。ロシアの黒海艦隊の基地です(p89)


・ロシアが外洋への出口を求めようとすると、クリミア半島~黒海~ボスポラス海峡・ダーダネルス海峡というトルコの領土をくぐり抜けねばならない(p89)


▼引用は下記の書籍からです。


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

第一章 海と核兵器
第二章 シーパワーとランドパワー
第三章 「安全保障イコール軍事」という誤解
第四章 ケーススタディ尖閣諸島
第五章 普遍的な見方



著者経歴

 烏賀陽弘道(うがや ひろみち)・・・1963年、京都市生まれ。京都大学経済学部卒。1986年、朝日新聞社に入社し名古屋本社社会部などを経て1991年からニュース週刊誌『アエラ』編集部員。1992年に米国コロンビア大学国際公共政策大学院に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号を取得。1998~1999年に『アエラ』記者としてニューヨークに駐在。2003年に退社してフリーランスの報道記者・写真家として活動している。これまでに19冊の著作がある


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