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「異常気象が変えた人類の歴史」田家 康

2018/10/17公開 更新
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異常気象が変えた人類の歴史 日経プレミアシリーズ


【私の評価】★★★☆☆(77点)


要約と感想レビュー

地球温暖化が話題となっていますが、地球は歴史上、温暖化と寒冷化を繰り返してきました。2世紀頃にローマ温暖期が終わり、地球全体で気温の低下傾向が現れます。ローマ帝国ではドイツ北東部にいた部族が寒冷化が原因で南西方向への移動を開始しました。その後、中世温暖期に入りますが、13世紀から小氷期に突入し、現在に至っているのです。15世紀には寒冷化により海面水位が1メートル以上低下したと推定されています。さらに、1950年代末から1970年代初めにかけて地球は寒冷化し、1970年代には氷河期が到来すると主張する科学者もいたのです。最近になって温暖化傾向になったことから、温室効果ガスの大気放出も影響しているのではないか、との学説が出てきたわけです。


こうした気候変動の原因は、太陽の活動と火山噴火と考えられています。特に火山噴火は歴史上記録されており、寒冷化を引き起こすと考えられているのです。例えば、イロバンゴ湖の噴火について東ローマ帝国の秘書官プロコビウスは、536年の太陽は月のように弱々しく、その姿もはっきりとは見えず日食のようだったと記録しています。スカンジナビア半島の年輪でも過去1500年間で540年がもっとも狭く、次いで536年が狭いというデータがあるのです。


・過去2000年の気候変動をもたらした大きな要因を2つあげるとすれば、太陽活動の変化と火山噴火である。20世紀後半になると、人為的な温室効果ガスの排出が加わる(p100)


歴史を見ると、大きな気候変動があると、民族が移動しようとすることで戦乱が起きることがありました。栽培されていた作物が不作となり、新しい作物を求めなくてはならなくなったこともあります。海面水位が変われば、漁業や海岸へ住んでいる人に影響が出るのでしょう。気候変動が私たちの生活を変えるのです。


例えば、14世紀以降の小氷期では、小麦栽培が困難になる一方、冷涼湿潤な気候に適っていたのだジャガイモの栽培が行われました。ジャガイモがヨーロッパの人々を救ったのです。アイルランドでは単位面積あたりジャガイモは小麦の2倍の食料が得られたという。


ただし、気候変動は予測できない部分が、大きいのです。そもそも気候変動の要因には、温室効果ガスだけでなく、太陽の活動量の変化もあるし、10万年単位の氷河期のサイクルもある。さらに予測できないところでは、巨大火山の噴火、巨大小惑星の衝突でも寒冷化が起こるのです。


氷期・間氷期のサイクルがおよそ10万年単位で訪れることがよく知られており、現在は10万年続いた氷期の後の間氷期が1万年続いています。次の氷期がいつ来るのか?というのも興味深いところです。10年後には何かしらの原因で地球が寒冷化して、地球を救うために温室効果ガスをもっと出そうとなっているかもしれません。田家さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・サハラの砂漠化傾向が顕著になった時期は、5500万年前から5000年前にかけてだ・・・乾燥化した地域はサハラだけでなく、中国、インド、中東、メキシコでも証拠がみつかっている。ヨーロッパ、アフリカ南部、北アメリカ、ニュージーランドでは寒冷化した(p51)


・紀元前2200年前頃から同1800年前頃にかけて、文明発祥の地とされるエジプトやメソポタミアの一帯で・・降水量が減少し、干ばつによる飢饉に発展した・・死海の湖面水位も、この時期に一気に100メートル低下した(p56)


・確率的にみると、地球規模で自然災害を起こす大きさである直系1キロメートル以上の天体の落下は60万年に1回である。直径200メートル以下なら5万年に一度、直径50メートル級であれば2000年から3000年に一度となる・・超巨大火山噴火の発生確率は5万年に一度とされ、直径1キロメートル以上の小惑星・彗星の衝突よりも10倍以上高い頻度である(p199)


・7万4000年前(±4000年)、インドネシア・スマトラ島北部のトバ火山が超巨大噴火を起こした・・トバ火山の噴火は地球全体の気温を最大で15度低下させ、噴火後の5年間は5度の低下が続いたという。トバ・カタストロフ理論といわれ、急激な気温の低下により人類は危機に瀕し、人口が激減したと主張している(p29)


異常気象が変えた人類の歴史 日経プレミアシリーズ
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田家 康
日本経済新聞出版社
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【私の評価】★★★☆☆(77点)


目次

第1章 現世人類の最初の試練――先史時代
第2章 海風を待ったテミストクレス――BC3500年~AD600年
第3章 京都東山のアカマツ林の過去・現在・未来――700年~1500年
第4章 ストラディバリウスはなぜ美しい音色を奏でるのか――1550年~1850年
第5章 破局的な自然災害をもたらすもの――1900年~未来



著者経歴

田家 康(たんげ やすし)・・・1959年神奈川県生まれ。1981年横浜国立大学経済学部卒。同年農林中央金庫に入社。有価証券投資、リスクマネジメント関連部署、農林水産金融部部長(森林部門担当部長)を経て現職。2001年気象予報士試験合格 現在、農林漁業信用基金漁業部長、日本気象予報士会東京支部長。


人類の進化関係書籍

人類進化の700万年」三井 誠
人類大移動 アフリカからイースター島へ
「異常気象が変えた人類の歴史」田家 康
ヒトは食べられて進化した」ドナ・ハート ロバート W.サスマン
ホモ・デウス」ユヴァル・ノア・ハラリ


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