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「気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年」田家 康

2023/03/28公開 更新
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「気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年」田家 康


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

地球の気候変動

主に日本における干ばつや飢饉の記録から、気候変動について考察した一冊です。地球の気候は、人間の産業活動のない時代から変動していたことがわかります。


まず大きな気候変動として知られているのは、10万年続く氷期と温暖な間氷期のサイクルでしょう。また、太陽活動も約11年の周期があるだけでなく、不規則に変動することで地球の気候に影響を与えています。例えば15世紀前半のシュペーラー極小期には太陽の活動た低下し、世界的に冷夏と長雨が続く時代となっています。この時期は1440年代から火山噴火が激増しており、火山噴火が冷夏の原因となった可能性があるとしています。


このように現在は二酸化炭素が気候変動の原因と言われていますが、二酸化炭素が増える前から、地球の気候は変動していたのです。その原因は、太陽活動、火山噴火などが考えられますが、すべては解明されていないのです。


・嘉吉の徳政一揆や文安の土一揆を起こした冷夏・長雨という天候不順は、シュペーラー極小期に入ったことによる太陽活動の低下だけでなく・・1440年代から火山噴火が激増しているのだ(p168)


海面水位の変動

驚いたのは、1000年単位で海面水位が変動しているということでしょう。国後島の地層、湖沼コアの花粉から海面水位の変動を推定したという研究があり、次のように数メートル!も海面水位が変動しているというのです。
 5000年前+3m
 4500年前-4m
 4000年前+2m
 3000年前-1.5m
 2500年前+1m
 2000年前-1.5m
 1000年前+1m
 600年前-0.4m

 
この海面水位の変化は気候変動によるものであり、二酸化炭素がない時代から、海水面は気候変動で大きく変動してきたのです。ただ、東京湾での干満差が2メートルくらいで、東京湾での地盤沈下が50年で3メートルくらいですから、ゆっくりとした変化ではあるのでしょう。


この本で日本の異常気象の歴史を見ていくと、二酸化炭素濃度の上昇があるなしにかかわらず、干ばつと飢饉が周期的に起きていることがわかります。高温になれば干ばつとなりがちであり、寒冷になれば作物育成不良で飢饉となるのです。


・国後島・・6300年前・・海面水位は現在よりも2.5mから3m高かった・・4500年前に寒冷化傾向となり・・海面水位も4mから5m低下した(p134)


大飢饉への対策

飢饉が起きると、食料の価格が高騰します。江戸時代の天明の飢饉の際、江戸の米不足を幕府は市場経済で解消しようと試みた結果、食料価格が急騰しました。松平定信は異常気象による全国的な飢饉に対して統制経済により価格を鎮静化させましたが、膨大な財政支出が必要となったのです。現在の新型コロナやエネルギー価格の高騰でも、膨大な財政支出が行われており、資本主義社会ではお金がなければ食料、エネルギーを得ることができなくなる可能性もあるのです。


著者の提案は、過去の歴史から、40年から50年の周期で起きている大飢饉に事前に準備しておくことです。大地震と大飢饉は忘れたころにやってくるので、準備が大切なのだとわかりました。田家(たんげ)さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・太陽活動は数百年単位で活発化し、あるいは低下してきた・・樹木の年輪・・氷床コアに含まれる放射性炭素やベリリウム10の含有量によって推定することができる(p14)


・『続日本紀』・・8世紀を通して全国的な飢饉の発生は、同時期に天然痘に限らず疫病の流行をもたらした(p49)


・寛喜2(1230)年の異常低温・・『立川寺年代記』・・全国でおよそ三分の一が死んだと記している(p98)


・1220年代後半から1230年代初めにかけて、世界各地に異常気象に見舞われた記録が残っっている・・寒冷化の理由として、まずは火山噴火が考えられる(p100)


▼引用は、この本からです
「気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年」田家 康
田家 康、日本経済新聞出版


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

プロローグ 太陽活動と火山噴火がもたらす気候変動
第1章 平城京の光と影
第2章 異常気象に立ち向かった鎌倉幕府
第3章 「1300年イベント」という転換期
第4章 戦場で「出稼ぎ」した足軽たち
第5章 江戸幕府の窮民政策とその限界
エピローグ


著者経歴

田家 康(たんげ やすし)・・1959年 神奈川県生まれ。1981年 横浜国立大学経済学部卒。農林中央金庫 農林水産金融部部長(森林部門担当部長)を経て、2011年より
(独)農林漁業信用基金 漁業部長。(株)農林中金総合研究所客員研究員。


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