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「国分町 花戦争 サロン・ド・たわらや」千葉勇作

2023/03/29公開 更新
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「国分町


【私の評価】★★★★★(91点)


要約と感想レビュー

バブル時代の仙台国分町

著者は石巻の俵屋旅館に生まれ、中学で敗戦を迎え、高校のとき父が胃がんで亡くなります。著者は戦後の混乱の中、旅館業をやりながら、米軍キャンプで働きました。その後、旅館を改造して「レストランたわらや」を開業するとこれがヒット。横須賀から奥様をもらうと、宮城県仙台で一番のバアを作ろうと考えたのです。


著者は仙台にバア「たわらや」、レストラン「たわらや」高級クラブ「サロン・ド・たわらや」と次々にオープンさせ、成功させていったのです。バブル崩壊前の昭和末期は、本物のサービスを提供したから、本物の客が来たのだという。カルーセル麻紀、宮城千賀子、五木ひろし、竹村健一、金田正一、野村克也などがよく来ていたというのです。


三越の帝王だった岡田茂社長・・たわらやから見える三越のネオンの消灯が早過ぎると言って怒鳴って威張って見せた(p62)

高級クラブ「サロン・ド・たわらや」

驚くべきは、当時銀座「マキシム」、大阪北新地ステーキハウス「ロン」しかなかった、アール・ヌーヴォー風のクラブ「サロン・ド・たわらや」を仙台国分町に建設したことでしょう。日本橋高島屋の特選売り場で、エミール・ガレの大きな花瓶を見たのが、アール・ヌーヴォー風の店を作ろうと考えたきっかけであったという。


建物はマキシムを設計した小林保治先生、シャンデリアはエミール・ガレ、壁画はロートレック模写と金に糸目をつけず本物を目指したのです。サービスも一流を目指し、ヴァイオリンは、東京の志賀清先生。バアテンダーは「青葉城恋歌」の作詞で有名な星間船一(本名星捷一)。ホステスの三上けい子は、「広瀬川慕情」を歌う歌手としてデビューしています。


メインホールの壁画はボッシュの愛と、月と、花の女神と決めて、京都の浜哲郎氏に模写を依頼しました(p47)

日本画家に転身

昭和56年に奥様ががんで逝去し、著者も闘病のため店を畳むことを決断します。サロン・ド・たわらやも解体されますが、著者の知らないところで、建設に関係した奥山(弘)氏の手で密かに千葉方面のホテルに売り渡されていたという。


その後、著者は病気から立ち直り、61歳で武蔵野美術大学を受験し、日本画を学びました。第二の人生は、日本画家として生きたのです。2021年12月25日、著者は90歳で亡くなりました。この本の最後にある亡くなった妻・美喜子を描いた「再会」と題する日本画と、最後の言葉が印象的でした。


「これでお終いです。長い間 いろいろとありがとうございました。」すべての文化は、一人の人間の意思から生まれるのだと思いました。千葉さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・サロン・ド・たわらやで一番多かったのは、不動産、土木、建築業者でした(p49)


・バアたわらや・・「我れ飲む。故に我れ有り(ビボ・エルゴ・スム)」とラテン語で太く刻み込みました(p72)


・東京で飲むと目立つので・・細川隆元先生と藤原弘達先生は一緒に文横たわらやによく来ました(p76)


・昭和末期・・たわらや、おろおろ、太田、クラブ潤、まんだら、ポンパドールなどが綺羅星のごとく豪華なインテリアで研を競い合った(p113)


▼引用は、この本からです
「国分町
千葉勇作、建設プレス


【私の評価】★★★★★(91点)


目次

1.サロン・ド・たわらや
2.バアたわらや
3.レストランたわらや仙台
4.くらぶ俵屋
5.千葉勇作と美喜子のあゆみ
6.たわらやおばば一代記
7.たわらやと私
8.対談「古き良き時代」
9.アールヌーヴォーとは
10.「アールヌーヴォー」と「アールデコ」
11.千葉勇作画集
12.千葉勇作氏と私



著者経歴

千葉勇作(ちば ゆうさく)・・・昭和6年生まれ。父のがん死で大学進学を断念。俵屋旅館を継ぐ。21歳で石巻初のレストラン開業。美喜子と結婚。仙台でバアたわらや開店。サロン・ド・たわらや、くらぶ俵屋など接客業を展開。美喜子52歳でがんで死去。事業を整理。自分も耳のがんとなり、闘病中に日本画家に転身。61歳で武蔵野美大を受験。河北展、日本画院展連続入賞。マンションの定期清掃員、管理人として請われて85歳まで勤務。90歳で逝去。


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