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「愛国のリアリズムが日本を救う」髙橋 洋一

2018/10/02公開 更新
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愛国のリアリズムが日本を救う


【私の評価】★★★★★(95点)


要約と感想レビュー

 元財務官僚であった高橋さんの一冊です。リアリズムとは現実を直視し、データに基づいた現実的で効果のある手を打っていくことです。


 まず、経済については、金融緩和により景気を良くし失業率を下げるのがアベノミクスです。しかし、高金利の方が儲かる銀行は、銀行は学者やマスコミを使って金融を引き締めに誘導しています。また、政権批判をしたい左翼系はジャーナリスト、マスコミを使って経済成長否定論で金融緩和の足を引っ張るのです。


・経済成長しないと失業が増えるという「オークンの法則」がある・・・第一次安倍政権では、最優先で改善すべき経済指標は失業率だったのだ・・・経済成長否定論は、これまでも経済運営がうまくいっている時に、戦後左翼系の識者がしばしば論陣を張ってきた。成長という実績の前に、政権批判したい時の常套手段である(p162)


 こうしたカネに目がくらんで日本全体のことを考えない人や、そもそも間違ったロジックで人を騙そうとする人、騙される人を高橋さんは「文系バカ」と言っています。


 「文系バカ」は、非武装が戦争を防ぐと真面目に主張します。「文系バカ」は、発言の一部を切り取って歪曲し相手を批判します。「文系バカ」は、財務官僚が政治家をバカにすることはあっても、忖度するはずがないことも知らずに、忖度、忖度と批判するのです。


・財務省の官僚は、政治家に従うどころか、逆らったり、政治家を使って自分の意を通すことによって省内で評価される。忖度などしたら、省内での評価を落とすのだ・・今回の忖度問題は実態を知らないマスコミの印象操作である(p187)


 高橋さんは、左翼系マスコミ、ジャーナリストを「文系バカ」としていますが、私はバカとは思いません。なぜなら、バカはどうやっても治りませんが、あえて嘘をついているなら真実を言いはじめるかもしれないからです。高橋さんの主張の集大成でした。★5つとします。高橋さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・デフレ不況からの脱却のめどを立てたアベノミクス・・・2009年度には38.7兆円まで落ち込んでいた一般会計税収が2017年度は58兆円台に達したことがわかった。前年度から3兆円前後増加し、58兆円を超えたのは1991年度のバブル期直後の59.8兆円以来、実に26年ぶりである(p70)


・超低金利政策を続け、デフレ脱却ということになって物価や賃金が上がり出し、その後に金利が上がり出すのだ。それなのに先に金利を上げたら、そもそも肝心のデフレ脱却を遠ざけてしまう・・・このような出口戦略を叫ぶのは銀行業界から恩恵を受けている学者やマスコミである。このあたりの情報操作はすべてお金で動いていると著者は考えている(p95)


・金融引き締めという高金利政策のもとでは、銀行は利ザヤを稼ぎやすくなるため、「銀行ムラ」に所属する経済学者やエコノミストは、自ずと金融緩和政策を否定する(p5)


・銀行ムラの経済学者やマスコミがはびこる中で、誘導記事を見極めて正しい情報や知識を選択していくことは結構難しいものだ・・・日本銀行にはコバンザメのような学者がたくさんおり、経済学会の中心を仕切っている。学者にとって最高のポストは日本銀行副総裁だから、自然とこういう構図になる(p97)


・朝日新聞は経済成長否定論が好きで、平成29(2017)年1月4日でも・・新年特集の記事の中で、・・《ゼロ成長はそれほど「悪」なのか・・・《いまのような経済成長の歴史が始まったのは200年前にすぎない》・・といった論評をしている。・・・この「200年前にすぎない」という指摘は、現代に流通しているモノのほとんどに成り立つことなので、論法としては説得力のないものになる(p161)


・中国や北朝鮮などと親和性の高いわが国の一部の学者、評論家、ジャーナリストは、「中国ムラ」から便宜を図ってもらっているのか、米国との同盟を忌み嫌う(p6)


・戦争のリスクを減少させる最終理論が次の5条件だ・・・( )内は各項目において戦争のリスクを減少させる確率。
 1 同盟関係を結ぶ(40%)
 2 相対的な軍事力が一定割合(標準偏差分、以下同)増加すること(36%)
 3 民主主義の程度が一定割合増加すること(33%)
 4 経済的依存関係は一定割合増加すること(43%)
 5 国際的組織加入が一定割合増加すること(24%)(p136)


・日本がなぜアメリカと同盟を結ばなければならないのか。単刀直入に言えば、現在アメリカが世界最強の軍事国であり、かつ利己的な国だからだ(p136)


・望月記者は、この同じ会見でも「(米国と韓国に)金正恩・朝鮮労働党委員長の要求に応えるように、冷静に対応するように政府として働きかけているか」とも質問していた。望月記者の質問は・・・「お花畑の平和論」であり、国際政治、安全保障に関するリアリズムの認識が欠落している(p183)


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【私の評価】★★★★★(95点)


目次

第1章 規制緩和は愛国・国益に適う
第2章 なぜアベノミクスは成功したのか―愛国的な左派政策を取り込んだ
第3章 国益に適う外交とは
第4章 「愛国のリアリズム」を喪失した左派の知的敗北
第5章 理念なき消費増税に執着する財務省を解体せよ
第6章 AI時代の突入で従来型の通念は様変わり



著者経歴

  高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。(株)政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞


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