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「幕末日本を救った「先見力と胆識」―逆風の中の名リーダー」新井 喜美夫

(2018年8月21日)|本のソムリエ
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幕末日本を救った「先見力と胆識」―逆風の中の名リーダー

【私の評価】★★★★★(90点)


■幕末の歴史書は多数ありますが、
 この本は明治維新が単なる
 クーデターであったという立場の
 珍しい一冊です。


 戊辰戦争は薩長連合が
 幕府の混乱を利用して起こした
 権力闘争にすぎない。


 幕府側が小栗忠順など優秀な幕閣の
 アドバイスを聞き、適切に対応していれば、
 違う形で新しい日本が作られていた
 であろうとしています。


 日露戦争で戦った戦艦の多くは
 小栗忠順が計画・建設した横須賀の
 製鉄所、造船ドックだったのです。


・軍艦そのものを購入する・・自己の技術によって軍艦を建造する・・・勝は前者を選んだが、忠順(ただまさ)は後者を目指していた・・・忠順がフランス人技師フランソワ・ワルニーとともに、まず第一に行ったことは、製鉄、造船のための工場を、どこに立地すべきかの検討であった(p105)


■面白いところは、井伊直弼が実行した
 安政の大獄は適切・適法な処置であり、
 井伊直弼を評価しているところでしょう。


 薩長連合から見れば、
 尊王攘夷、倒幕運動を弾圧したものであり、
 幕府側から見れば倒幕運動をする
 テロリストを処罰したもの。


 倒幕運動を達成した薩長連合からすれば、
 井伊直弼を評価することは
 絶対にできないのです。


・安政の大獄・・・忠臣蔵で有名な赤穂浪士の場合ですら47名は全員死罪となっている・・(井伊)直弼がこれだけの紛争をたった8人の死罪によって解決しえたことは、政治家としての器の大きさを示すもの・・(p58)


■歴史は多角的に見ると
 面白いと思いました。


 裁判のように検察側と弁護側の
 意見を聞くと、視野がぐっと
 広がるのです。


 新井さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・井伊直弼・・およそ武門の頂点に立つ者として、戦わざるうちに自らの敗北を悟り、これを認め、公言するほど勇気のいることはない(p47)


・幕末に活躍した人物の中には、忠順だけでなく、勝海舟、坂本龍馬、桂小五郎など、剣をとらせても一流の腕前の者が多数存在していたが、もっぱらその剣を利用したのは、近藤勇、河上彦斎、中村半次郎といった二流以下の人物に多かった(p82)


・(小栗)忠順(ただまさ)は、日本においても新聞発行の必要性を痛感し、随行の森田清行とともに新聞社を訪問、見学している。事実、帰国後、忠順は福沢諭吉とともに新聞発行を討議検討している(p77)


・朝廷派であろうと、幕府側であろうと、また攘夷派であろうが、開国派であろうが、それぞれの信念に基づいて、自己に忠実に生きんがために行動した者は、そのほとんどが非業の死を遂げている(p97)


・西郷は倒幕の時間かせぎのために江戸において相楽(さがら)総三という国学者崩れの男に、500名もの不逞浪士と金を与え、江戸城をはじめ江戸市民の密集している下町にまで放火などを行ない江戸の治安を極度に悪化させるという、あくどい謀略を用いている。しかも、この相楽を後に謀殺・・(p113)


・(勝)麟太郎は一計を案じ、この『ズーフハルマ』を所有している蘭方医を探し出し、一年間10両の後払いでこれを借り受けた・・一年後には二冊の写本を完成させてしまったのである。このうち一冊は自己の所有とし、残る一冊は30両にて売却・・(p189)


・徳川幕府の政治制度は極めて保守的であり、とくに勝のような貧乏旗本については、その優れた資質と並外れた努力に対してほとんど関心を示さなかった。その結果、勝の努力はもっぱらこのような老朽化した政治、行政システムに対する不満と改革に向けられるようになった・・(p190)


・忠順の主戦論対勝の恭順論である。この時、慶喜(よしのぶ)自ら恭順論をとるとの態度を表明した・・(p118)


・戊辰戦争では、有能な多数の幕臣をはじめ、中野竹子のような才媛や、白虎隊のような少年ら5000名を超える貴重な生命を失ったというのに、それらの棟梁たる慶喜の・・・優れた多数の部下を、まるで弊履のごとく顧みず、恭順、隠遁と称して、多数の側室や妾たちと戯れ、やがてはかつての政敵から侯爵や民間での最高の勲章を平然と拝受する・・(p286)


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【私の評価】★★★★★(90点)


■目次

井伊直弼―国家100年の大計に殉じた先覚者
小栗忠順―日本近代化の原点
河井継之助―維新政府に襟を正させた非凡な胆識
勝海舟―時勢を見抜いた無類の政治人間
徳川慶喜―時代の矛盾に身を晒した悲運の大君



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