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「幕末の三舟―海舟・鉄舟・泥舟の生きかた」松本 健一

2006/03/14公開 更新
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幕末の三舟―海舟・鉄舟・泥舟の生きかた (講談社選書メチエ)


【私の評価】★★☆☆☆(68点)


要約と感想レビュー

 「幕末の三舟」といえば、海舟・勝麟太郎、山岡鉄舟、高橋泥舟(謙三郎、精一)です。


 勝海舟は、幕府陸軍総裁として、西郷隆盛が率いる東征軍と交渉し、江戸無血開城を実現した人。山岡鉄舟は、勝海舟が西郷隆盛と交渉のために送った手紙を届けた人。そのとき、高橋泥舟は、最後の将軍慶喜の護衛役でした。


 この三人が戊辰戦争において果たした役割は、薩摩、長州のクーデターではあるものの過剰な戦闘を避け、日本の国力を維持したまま、明治政府に引き継いだということなのでしょう。


・明治末年から昭和初年にかけて定まった三舟観は、・・・この三人が協力して、江戸を戦火から救い、内戦を回避して、外国(英仏)の介入をふせぎ、日本の独立を守った、というものであった。(p17)


 同じ舟という名を持ち、幕末で大きな役割を持った三人ですが、それぞれ個性を持っているのが興味深いところです。まず、勝海舟は、合理の人。現実を直視し、現実的な対応を考える人です。政策については天才と言えるでしょう。


 外交においては理よりも武力が重要であるという現実を直視し、日本海軍の育成に関わりました。早々と官僚的な幕府の未来を見捨てたところは、時流を見る目があったのかもしれません。


・外交とか政治とかは、「万国公報」というような表面の「正理」がなければならないが、「正理」だけではダメだ。それを裏から支える「強さ」つまり力がなければ、「正理」など行われない。実行できない説というのは「空論」とならざるをえない(勝海舟)(p44)


 そして山岡鉄舟は、誠実の人。明治以後は明治天皇の侍従として忠義を尽くしたように、政治というより、自らの役割に徹する人でした。


 最後に、高橋泥舟は、明治以後、表に出ず、人知れず隠匿の生活を送りました。いずれ人間は死んでしまうのだ、と常に死を意識するような生死感を持っていたようです。


・(泥舟は)人間は最後はみんな髑髏(どくろ)になってしまうと考えれば、生きているときの栄華とか美貌などにとらわれるのは嫌だ。そんなものにとらわれる人間というものは愚かなものだといって、最後は髑髏の絵ばかり描いていたのだ(p148)


 三舟の人となりを読みながら、日本人というものを考えることができる良書ということで★2つとしました。


この本で私が共感した名言

・海舟は、忠義、忠義といっている人が国を滅ぼすのだ、と評しているが、じつは鉄舟も同じようなことを言っているのだ。(p139)


・江戸時代の処罰の仕方は、延々と牢に入れておくことによって病死させてしまうというやり方であった。(p106)


▼引用は下記の書籍からです。


【私の評価】★★☆☆☆(68点)



著者経歴

 松本 健一(まつもと けんいち)・・・1946年生まれ。東京大学経済学部卒業。評論家。専攻は日本思想史。京都精華大学教授をへて、現在、麗澤大学国際経済学部教授。


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