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「日本のリーダーにみる敗ける理由」新井 喜美夫

2018/08/30公開 更新
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日本のリーダーにみる敗ける理由


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

 1990年とバブルの余韻が残っている頃に書かれた、調子に乗っていた日本人への警告です。日本が日露戦争で勝ったのは国際情勢が勝たせたのであって、今のバブルも国際情勢によるものである。したがって、調子に乗っていると、第二次世界大戦で敗戦したように経済戦争でも敗戦するであろうと予言しています。


 今の私達は、予言はほぼ的中していた、ということを知っています。日本の経済的繁栄は、資本主義のモデルとしてアメリカからの支援が多かったからであり、アメリカから敵視されるようになると経済は停滞することになってしまいました。


・日露戦争で日本が勝ったのは、ロシアの極東進出を抑えようとする国際環境が英米中心にできあがっていたからである・・・現代日本の経済的繁栄もまた、その大部分は米ソの冷戦という国際環境に支えられたものである。これをもし日本の工業技術力の勝利とのみ考えているならば、日本は再び失敗するであろう(p2)


 日本の敗ける理由は、なぜか無能な人がリーダーになってしまう日本の組織と人事の仕組みです。日本人にも優秀な人は存在しますが、優秀がゆえに持論を展開するだけで、派閥を作る二流の人に権力闘争で負けてしまうのです。


 年功序列という硬直的な人事制度も、硬直化の原因となっており一流の人をリーダーにしにくい制約となっている可能性があります。特に戦時には、能力で人選するような仕組みが必要なのかもしれません。


・ミッドウェー作戦は、結果から見れば敗北であった・・・問題は、南雲のような水雷屋で、航空機についてはなに一つ知識のない人物でも、年功序列で、最も重要な機動部隊の司令官にしなければならなかったという、海軍ムラ人事にあったと見るべきであろう(p188)


 日本大学やボクシング協会の報道を見ていると、なるほど、こうした人が出世できる日本の仕組みがまずいのだな、と納得してしまいますね。簡単に変な人が組織を乗っ取ることができるのです。そして一度乗っ取ってしまえば、よほどのことがなければ安泰なのです。


 日本人の中にも一流の人材は存在するのでしょうが、そうした人を発掘し、リーダーとする仕組みが日本には不足しているのでしょう。新井さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・政友会の鳩山一郎は「『軍縮』ということは、天皇の軍に対する『統帥権』を干犯するものである。したがって、この条約締結の可否を国会で審議すべきものではない」という発言を行った(p19)


・陸軍では、「皇道派」と・・「統制派」・・この両派が決定的な対立に至ったのは、1935年(昭和10年)8月、統制派というよりは陸軍きっての逸材といわれた永田鉄山軍務局長を、皇道派の相沢中佐が斬殺した時点に始まる。さらに1936年(昭和11年)の二・二六事件もまた、皇道派による政治的意図を持ったクーデターであった(p21)


・陸軍はモノンハン事件(昭和14年)において、ソ連の機甲部隊の圧倒的強さを知らされていた。また海軍の首脳部は、緒戦の一、二年は互角としても、長期戦となれば、アメリカの経済力の前には屈服せざるを得ないという、ほとんど確信に近い考えを持っていた(p22)


・リーダーの質の低下・・・陸軍は東条英機の権力欲のために、優秀な人材は退役させられたり、最前線に送られたりして、本部には二流以下のリーダーしか存在しなかった(p25)


・浜口がライオン宰相たるにふさわしいのは・・軍部や右翼、それに無知な大衆を向こうに回して、「軍縮」と「財政改革」という大きな難問を、断固として処理しようとする態度にこそあったというべきであろう(p35)


・(高橋)是清は軍部に対し、軍事費の抑制を要請したのである・・・試みに、1936年度(昭和11年)予算を見れば、総額22億7800万円のうち、軍事費は10憶5800万円で、実に歳出の50%近くを占めるに至っている(p88)


・石原や永田のような、最高の頭脳と識見を持った者は、つねに自らの信ずる道を、是々非々として歩んでいた。しかし、その他の二流以下の連中は、自分一人では何もできず、とかく徒党を組み、派閥をつくりたがる習性がある(p107)


・本来からば、北進作戦をとるべきところを、対ソ戦に自信をなくしていた陸軍は、アメリカという地上最大の強敵をもっぱら海軍に押しつけ、中国だけではものたらず、本国が弱体化している仏領(現在のベトナム)、蘭領(現在のインドネシア)、英領(現在のマレーシア、シンガポール、香港)といった弱者を攻撃した。こうして先のことは考えずに、目先の功名心を満足させようとしたために、日本にとってはもっとも拙劣な作戦をとることになったのである(p127)


・近衛にかぎらず、太平洋戦争当時のリーダーと称するほとんどの人物に共通したものがある。それは、天皇に対する忠誠心はきわめて旺盛であるが、国民一般に対する責任感はほとんど皆無であるという点である(p145)


・近衛の遺言状もそうであるが、最後まで本土決戦を叫んで自決した阿南陸相の遺言状もまた・・・天皇に対する責任は感じていても、この十五年戦争によって失われた380万人の国民に対する謝罪の言葉は一言もないというのは、どういうわけであろうか(p145)


・1941年(昭和16年)に、東条陸相は戦陣訓なるものを発表し、「生きて虜囚の辱めを受けず」と訓令した。開戦と同時に、これは民間にまで応用され、サイパン、沖縄では、非戦闘員の婦女子までが、このために自ら尊い生命を絶った(p158)


・二・二六事件のときも同様である。青年将校たちを唆し、それによってあわよくば権力を掌握しようとした荒木貞夫陸軍大将や真崎甚三郎陸軍大将らは、天皇のご意思がまったく違うところにあると知るや、純粋で単純な青年将校らを見捨てて、身の安全を図っている(p159)


・日本は、15年戦争において、決定的な敗北を喫しながら、そのリーダーに対する責任追及をしようとはしない。それと同様の無責任体制が、今日においても、政界、財界、官界をはじめ企業のトップに至るまで、当然のことのように継承されている(p161)


・井上(成美)が海軍兵学校の校長に任命されたのは、1942年10月26日のことであった・・・井上はまず、海兵の授業科目の中に英語がないのに驚いた。理由を聞くと、英語は敵国語であるからあえてはずしたのだという。これに対し、井上は、「戦っている相手の国の言葉や実態を知らずして勝利を収めることはできない」と言って・・英語の授業時間を廃止前の倍の時間にまで増やし、英語の特訓を行ったという(p260)


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【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

序章 国際環境に疎い日本
第1章 軍縮の信念に殉じた価値あるリーダー 浜口雄幸
第2章 日露戦争を陰で支えた日本のケインズ 高橋是清
第3章 満州事変の成功を悪用された天才戦略家 石原莞爾
第4章 軍部に利用された現実逃避型貴公子 近衛文麿
第5章 軍部の罪と罰を凝集した理念なき独裁者 東条英機
第6章 "真珠湾"に結実した国際通軍政家の真骨頂 山本五十六
第7章 年功序列に阻まれた航空戦のトップリーダー 山口多聞
第8章 日本陸軍を終焉させた古武型リーダー 阿南惟幾
第9章 狂気の時代に抗した合理主義の軍政家 井上成美



著者経歴

 新井 喜美夫(あらい きみお)・・・1927年、東京都に生まれる。太平洋学会理事長。東京大学経済学部卒業後に明治生命に入社。1961年東急グループ総帥の五島昇氏にスカウトされ、東急エージェンシー入社。1986年東急総合研究所所長、1993年東急エージェンシー社長、1999年同社会長。2000年退社


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