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「神の子どもたちはみな踊る」村上 春樹

2018/01/25公開 更新
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神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)


【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

1999年に書かれた「地震の後で」という副題で書かれた6つの短編小説です。地震とは1995年の阪神・淡路大震災なのでしょう。人の命、人生についてのコメントが多い印象でした。でも、それぞれの小説が、まったく違う場所、境遇、不思議な空間でした。


面白いのは、闇の力と戦って、地震を止めて東京を救ったかえるくんの話です。でも、その戦いは想像の中で行われたのだという。そして、かえるくんは亡くなった。東京を地震から救って。かえる・・地震・・わからん。そして、ヘミングウェイ、トルストイやドストエフスキーが会話に出てくるところが、読書を強要するのです。


・片桐は眠りの厚い衣に包まれたかえるくんの姿を、長いあいだ眺めていた。病院を出たら、『アンナ・カレーニナ』と『白夜』を買って読んでみようと片桐は思った(p183)


主人公はコーヒーに砂糖を少しだけ入れて、スプーンでかきまわし、一口飲んで、コーヒーは薄くて、味がなく、俺はこんなところでいったい何をしているのだろうといったふうで、何を言いたいのだろうか。いや、何も伝えるつもりはないのかもしれない。


ただ、無常な自然の驚異である大震災のあとで、頭に浮かんだストーリーを書いたのでしょうか。わからないというところが、村上ワールドなのですね。村上さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・更年期という問題は、いたずらに寿命をのばしすぎた人間への、神からの皮肉な警告(あるいはいやがらせ)に違いないとさつきはあらためて思った(p116)


・これからあなたはゆるやかに死に向かう準備をなさらなくてはなりません。これから先、生きることだけに多くの力を割いてしまうと、うまく死ぬことができなくなります・・生きることと死ぬることとは、ある意味では等価なのです(p142)


・新宿歌舞伎町は暴力の迷宮のような場所だ。昔からのやくざもいるし、韓国系の組織暴力団もからんでいる。中国人のマフィアもいる。銃と麻薬があふれている(p159)


・ちょっと脅したんです。ぼくが彼らに与えたのは精神的な恐怖です。ジョセフ・コンラッドが書いているように、真の恐怖とは人間が自らの想像力に対して抱く恐怖のことです(p169)


・アーネスト・ヘミングウェイが看破したように、ぼくらの人生は勝ち方によってではなくその破れ去り方によって最終的な価値を定められるのです。ぼくと片桐さんはなんとか東京の壊滅をくい止めることができました(p180)


▼引用は下記の書籍からです。
神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
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【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

FOが釧路に降りる
アイロンのある風景
神の子どもたちはみな踊る
タイランド
かえるくん、東京を救う
蜂蜜パイ



著者経歴

村上 春樹(むらかみ はるき)・・・1949年生まれ。小説家。ジャズ喫茶の経営を経て、1979年『風の歌を聴け』でデビュー。1987年『ノルウェイの森』は400万部を売るベストセラーとなる。『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』など著書多数。


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