村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」
2020/09/16公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
■村上春樹のデビュー作ということで
手にした一冊です。
1970年代、大学生の僕は
海に近い町で、
バーで友人とビールを飲み、
少女と親しくなった。
金持ちの友人は大学を辞め、
小説家になるという。
何もしなくても食べていける
自分は何者なのか、と友人は
考えているようだった。
・時々ね、どうしても我慢できなくなることがあるんだ。自分が金持ちだってことにね。逃げだしたくなるんだよ。わかるかい?(p116)
■レコード店で知り合った少女の片手には
指が4本しかなく、彼女は家族のことを
言おうとしなかった。
自分を否定するような言葉、
お前なんか死んでしまえ、
などという幻聴が聞こえるという。
どうやら彼女の家庭は複雑で、
両親から虐待を受けてでも
いるのだろうか。
僕は「いつか風向きは変わるさ」と
いうことしかできなかった。
・ずっと嫌なことばかり。頭の上をね、いつも悪い風が吹いているのよ」「風向きも変わるさ」「本当にそう思う?」「いつかね。」彼女はしばらく黙った(p145)
■この本にでてくる小説は
ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、
音楽はビーチ・ボーイズ、ベートーベン、
マイルス・デイビスと海外の風が
吹いているように感じました。
翻訳家であり、ジャズ喫茶を経営していた
村上春樹さんの知性を感じさせて
くれるストーリーでした。
村上さんの経営していたジャズ喫茶も
「ジェイズ・バー」だったのかな、などと
思いながら本書を閉じました。
村上さん、
良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・僕にとって文章を書くのはひどく苦痛な作業である・・・それにもかかわらず、文章を書くことは楽しい作業でもある。生きることの困難さに比べ、それに意味をつけるのはあまりにも簡単だからだ(p12)
・小さい頃、僕はひどく無口な少年だった。両親は心配して、僕を知り合いの精神科医の家に連れていった・・・文明とは伝達である、と彼は言った。もし何かを表現できないなら、それは存在しないのも同じだ・・・僕は君にクッキーをあげる。食べていいよ・・・君が何も言わないとクッキーは無い(p30)
・ずいぶん本を読んだよ。この間あんたと話してからさ。『私は貧弱な真実より華麗な虚偽を愛する。』知ってるかい?・・・ロジェ・ヴァディム。フランスの映画監督さ(p67)
・空が好きなんだ。いつまで見てても飽きないし、見たくない時には見なくて済む(p116)
・人並み外れた強さを持ったやつなんて誰もいないんだ。みんな同じさ。何かを持っているやつはいつか失くすんじゃないかとビクついているし、何も持っていないやつは永遠に何も持てないんじゃないかと心配してる・・・・だから早くそれに気づいた人間はほんの少しでも強くなろうって努力するべきなんだ(p121)
・彼が一番気に入っていた小説は「フランダースの犬」である。「ねえ、君。絵のために犬が死ぬなんて信じられるかい?」と彼は言った(p124)
・東京に帰る日の夕方、僕はスーツ・ケースを抱えたまま「ジェイズ・バー」に顔を出した・・・8月26日、という店のカレンダーの下にはこんな格言が書かれていた。「惜しまずに与えるものは、常に与えられるものである。」(p152)
▼引用は、この本からです
村上春樹、講談社
【私の評価】★★★★☆(80点)
著者経歴
村上 春樹(むらかみ はるき)・・・1949年生まれ。小説家。ジャズ喫茶の経営を経て、1979年『風の歌を聴け』でデビュー。1987年『ノルウェイの森』は400万部を売るベストセラーとなる。『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』など著書多数。
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