【書評】「変見自在 サンデルよ、「正義」を教えよう」高山 正之
2017/10/15公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
言い方が辛辣
高山さんは産経新聞の記者です。非常に頭の良い人ですが、言い方が辛辣ですね。頭が良いので、頭の悪い人の気持ちが分からないのでしょう。
例えば、スーパーの生協は共産党系の組織であり、共産党の資金源になっていることを指摘しつつ、中国毒餃子の事件の時、回収した餃子を日本の捜査当局でなく、中国に引き渡したことを証拠隠滅と表現しています。事実なのでしょうが、表現が悪いのです。
また、中国人永住者が十年前の3万人から15万人に増えたことを指摘して、その理由が竹中繁雄法務省入管局長時代に永住資格の条件を「日本在留20年」から「勝手に」半分の10年に短縮したと書いています。確かに、国会の審議もなしで官僚が勝手にやったことですが、事実を書くと官僚から刺されることを恐れないのです。
一橋大教授の藤原彰は空に立ち上がる真っ黒な煙幕を「日本軍の毒ガスだ」と朝日新聞で断言した。毒ガスは無色で空気よりやや重いことはオウムのサリン部隊だって知っている(p22)
お人好しは殺される
ただ、歴史の見方として、西欧も中韓も日本人のようなお人好しではありません。お人好しが歴史に消えてしまったという事実もあるのです。そうした事実は、歴史に学ぶべきなのでしょう。
例えば、アメリカのウィリアム・シャーマン将軍が「白人国家の優れた力を思い知らせ、戦いを挑んだことを悔やむように兵士もその家族も徹底的に殺す」と表現したように、一千万人のインディアンはほぼ絶滅させられ、数千万頭の野牛もほぼ絶滅し、二億三千万羽の旅行鳩は絶滅したのです。
戦争でも、日本軍がコレヒドール島に上陸すると敵は白旗を掲げ日本は開戦初期から30万人もの捕虜を抱え、彼らのために収容所を建て、三食を食わすことになりました。反対に敵は、捕虜となった日本軍兵士を、メシを喰わせる義務が生じる捕虜(POW)とせずに、JSP(降伏日本軍兵士)としたというのです。
面白いところでは、強いセルビアが復活しないようセルビアの都、コソボにイスラム教徒のアルバニア人を住まわせ混乱させたという。この手法は、戦争のあとGHQが都会のいいところに三国人に不法占拠させ、パチンコ屋をやらせて日本人をギャンブル中毒にさせたのと同じ手法だというのです。
米国の戦法はインディアン討伐が原型だ。まず滅ぼす相手の兵糧を絶つ。それでバイソンを皆殺しにした。戦士が決起すると、それを避けて銃後の家族の方を襲って殺した。米国のフィリピン制圧も同じ手法だ。植民地支配に抵抗するアギナルド軍二万将兵とは戦わず、彼らの故郷の田畑を焼き払い、彼らの妻子二十万人を殺した。対日戦でもまず、鉄屑石油の禁輸で糧道を絶ち、日本が決起すると、兵士の持つ戦場を飛び越えて日本本土をひたすら爆撃した(p81)
朝日新聞が嫌いな理由
著者は朝日新聞が嫌いなようです。嫌いな理由は、朝日新聞が慶応大教授の添谷芳秀氏に「日本は大国を目指すな。二流国家という選択がある」と書かせているからだという。つまり、蓮舫の二番でいいという主張と、連動しているわけです。
また、伊丹では空港周辺の住民がジェット機の騒音に毎日のように抗議していたとき、朝日新聞の吉野太一記者は、実はここの住民は「戦前、空港拡張のため朝鮮半島から集められた人々」で「戦後一転して不法占拠者にされた」と記事を書いたという。著者はそれは嘘で、朝日新聞で徴用朝鮮人はほぼ全員が半島に帰ったと書いている矛盾を指摘しているのです。
さらに、ニューヨーク・タイムズ東京支局は朝日新聞社屋の中にあるのですが、その記事の内容が朝日新聞にそっくりだというのです。
例えば、デビッド・サンガー特派員は小錦が横綱になれないのは日本人の人種差別のせいだと書いたし、ニコラス・クリストフ特派員は、日本人女性には人権はなく、日本兵は中国人の子供を殺してすき焼きにして喰うのが趣味などと、五年間記事を書き続けたという。次のハワード・フレンチ特派員も、オーストラリア人女性を殺した犯人が帰化した在日韓国人であることを知ってか知らずか「日本人は紅毛碧眼に歪んだ性欲をもつ。その好例」と書いているという。
お人好し日本人を覚醒させる一冊でした。本書の内容が事実かどうか、もう少し内容を検証していきます。高山さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・朝日新聞が生みだしたコピーが「国民総背番号制」というあざとい言い換えだった。「あなたは番号で管理されていいのか」「個人情報を国が握るのに耐えられるのか」。このキャンペーンが奏功して世論は後ろ向きになり、廃案に至った。・・反対のためには白鷗大教授の石村耕治を使って「SSNでなりすまし詐欺が横行」といかにも欠陥のあるシステムのように思わせる嘘も並べた(p39)
・トリッキーとは相手を嵌めるほどの意味で、例えば文相になったばかりに藤尾正行に「日本が朝鮮を一方的に併合した」とけしかける。「いや日韓併合は向こうにも責任がある」と言わせて辞任に追い込んだ朝日新聞流のやり口を言う(p45)
・フランスは植民地仏印で阿片を売って儲けた。その阿漕さにベトナム人が抗議するとフランス人は旧式の爆撃機ポテを飛ばし、彼らに機銃掃射と爆弾を降らせた(p17)
・ベトナム史について学会の泰斗という明治学院大学教授を取材した・・泰斗は「日本軍の長い占領時代に」・・とか、句読点代わりに言う・・いや日本軍の支配は昭和20年3月に仏軍を追っ払ってからの5か月だけど。「えっ、ウソ」・・フランス人たちは昭和18年にサイゴンに四階建てチーホワ刑務所を完成させている。「戦場にかける橋」を書いたピエール・ブールは脱走罪でここに収容された。彼が描いた「残忍な日本軍捕虜収容所」のモデルはこの刑務所だった。残忍な拷問をやったのはフランス人で、やられたのは抗仏のベトナム人だった。明学の泰斗はそれも知らなかった(p22)
・後藤乾一早大大学院教授はインドネシア学の権威だそうだが・・「日本軍はスマトラの底なし穴に原住民三千人を突き落として殺した」とやった。調べたら穴には底があったうえ骨一つ出てこなかった(p22)
・マレーシアは英領時代に阿片が広まったが、それも英国人の下僕となった華僑がマレー人労働者に売り付けたからだ。・・マレーの華僑は阿片で稼いだ金で農園や錫鉱山を買って長者になった・・マハティールが登場して「阿片売人と一緒に国づくりはできない」と華僑絶縁を宣言し、売人たちは南の島に追放された。それが今日のシンガポールになる(p89)
・高峰譲吉がアドレナリンの結晶抽出に成功した・・それにジョン・エーベルが「高峰が俺の発見を盗んだ」と言い掛かりをつけた。彼は羊の副腎から抽出したと主張したが、それは後に嘘と分かった・・同じ時期、北里柴三郎の血清療法は部下だったエミール・ベーリングがノーベル医学賞を横取りした(p96)
・東北大の西澤潤一教授は東京五輪のとき、光を使って情報を伝える光ファイバの特許を申請した。しかし特許庁は意味が分からないと不受理にした。中国人のチャールズ・カオは苦笑する教授を慰めた足で米国に渡り、西澤の理論をちゃっかり頂いたうえで光ファイバにはガラス繊維がいいという論文を書いた。それに米コーニング社が乗っかって光ファイバの特許を取り、今日はのカオもいただいた理論でノーベル賞を取った(p195)
・東ティモール問題は中国が尖閣の領有権を言い出したのと同じパターンだ。オーストラリアがティモール沖に豊富な海底油田があると知って、インドネシア領の東ティモールを独立させ、石油利権に与ろうとした国際詐欺事件だ(p215)
▼引用は、この本からです
新潮社 (2017-08-27)
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【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1章 ウソつき新聞は今日も健在
第2章 真実は歴史を知ることで見えてくる
第3章 恥を知らない人々
第4章 美談はまず疑ってかかれ
第5章 悪人ほど「正義」を気取る
著者経歴
高山正之(たかやま まさゆき)・・・1942年生まれ。ジャーナリスト。1965年、東京都立大学卒業後、産経新聞社入社。社会部デスクを経て、テヘラン、ロサンゼルス各支局長。98年より3年間、産経新聞夕刊1面にて時事コラム「異見自在」を担当し、その辛口ぶりが評判となる。2001年から07年まで帝京大学教授
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