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「だから医者は薬を飲まない」和田 秀樹

2016/10/07公開 更新
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だから医者は薬を飲まない (SB新書)


【私の評価】★★★★★(94点)


要約と感想レビュー

 精神科医の和田さんが、医学界についてぶっちゃけた一冊です。まず薬については、日本人を対象とした長期間・大規模の薬の効果を調査したデータがないことを問題視しています。医者自身も本当にその薬が長期的視点で患者の寿命を伸ばし、生活レベルを良くするのかわからないのです。医者としては、症状に対する標準的な薬を処方するしかないのでしょう。


 例えば、多くのヒトが血圧を下げる薬を飲んでいいますが本当にどの程度予防になるかどうか実はわかっていないのです。血圧を下げる薬を飲んだ場合と飲まない場合の長期間比較したデータを、著者は見たことがないという。さらには、一般的に血糖値が高いのは良くないと言われていますが、世界で最も権威のある医学雑誌に、一万人規模の大規模調査で、血糖値をやや高めにコントロールした人のほうがそうでない人よりも死亡率が低かったという調査結果が掲載されて医師の間で話題になったという。


・日本で、特定の薬について大規模に長期フォローをしたデータは私も見たことがないのです(p36)


 著者が問題としているのは、次の3つです。まず、製薬会社の副作用の調査も「副作用がある」と書くと、詳細について書く必要があって忙しい医師は書かない場合もあり信用できないこと。二つ目は、副作用の調査シートを書くことにより謝礼をもらえるので調査が実質的なキャッシュバックになっていること。三つ目は、そもそも大学の教授制度は現場で腕を磨いていては教授になれないし、データに基づく学術調査をする意欲もないし、メタボのような変な制度を作るなど問題が多いとしています。


 特に二つ目については、製薬会社から渡されるケースシートに、「副作用があった」という欄に〇を付けると、裏面にその詳細を書くのに一時間ぐらいかかるというので、製薬会社は医師ができるだけ副作用を書かないように誘導しているわけです。


・薬の副作用をチェックすることが目的なら、どんな薬であってもケースシートの謝礼の金額は同じはずです。ところが実際は・・金額が違っていて・・「高い薬を使ってくれれば、キャッシュバックも上がりますよ」というわけです(p42)


 最後に抗がん剤については、その効果に疑問を投げかけています。がん治療で苦しみながら、少しでも長生きしたほうがいいのか。それとも、がん治療をせずにしばらく普通の生活を送りながら人生を閉じるのが良いのか。そもそもがん治療の大規模調査がほとんど行われていないので、比較検討もできないのが現状なのです。


 現状では、抗がん剤の副作用で患者の体調が悪化しても、がんがわずかでも小さくなると、「抗がん剤が効いている」ということになってしまいます。多く医者は抗がん剤はほとんど効果がないわりに、副作用だけはあるということがわかっていても標準治療として抗がん剤を投与しているのです。私も50代になりましたので、その時に備えた覚悟が必要ですね。和田さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・たいていの医者は、できればあまり薬を飲みたくないと考えている・・その理由は、やはり薬は何らかの形で体に悪いからです(p48)


・外国人と日本人ではさまざまな違いがあると考えられるわけですが、それでも日本人を対象とした学術調査をほとんどせず、安易に外国のデータを日本人に当てはめて偉そうな顔をしているのが日本の医学者、大学の教授たちなのです(p69)


・絶対にやめたほうがいいのは、ちゃんと説明してくれない医者です。それから、具合が悪くなったときに薬を替えてくれない医者。(p92)


・海外では・・大学病院で治療する場合は一般の病院に比べて治療費が安く設定されています。それは、大学病院が患者さんの病気を治すことを専門にしているのではなく、研修医に学ばせたり、病気の研究のために患者さんの体を利用している部分が大きいからです。・・手術の練習台や薬の実験台になる覚悟が必要なわけです(p220)


・薬の処方については、日本よりもアメリカのほうが慎重です。・・複数の薬を投与すればどういう副作用が出るかわからないので、薬を一つだけ出す単剤処方が多いのです。患者さんが複数の薬を服用してその副作用で具合が悪くなった場合、医者が訴えられる可能性があるからです(p151)


・効果のある抗がん剤の国際基準は死亡率が五%ぐらいあるという話をしましたが・・厚生労働省は、20人が服用するとそのうち一人が死ぬようなロシアンルーレットのような薬は認可しないのです(p194)


だから医者は薬を飲まない (SB新書)
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和田 秀樹
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【私の評価】★★★★★(94点)


目次

序 章 患者が知らない〝薬大国ニッポン〟の裏事情
第一章 患者には薬を出しても、自分じゃ飲まない医者の実態
第二章 本当は総合的な診療ができないニッポンの医者たち
第三章 〝処方すれば儲かる〟はウソ! 「薬漬け」になる本当の理由
第四章 医学部と製薬会社が作った「正常値」神話の大罪
第五章 医者が教えない薬との上手な距離の置き方



著者経歴

 和田秀樹(わだ ひでき)・・・1960年大阪府生まれ、精神科医。東京大学医学部卒、東京大学付属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学を専門とする


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