「禁欲と強欲 デフレ不況の考え方」吉本佳生、阪本俊生
2014/11/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
■金融経済論、消費社会論のプロが、
デフレ不況というものの
本質を考える一冊です。
デフレ不況とは何かといえば、
生産が消費より多いということ。
したがって、
生産力をリストラしたり、
消費を増やせばいいのです。
もちろん消費には
設備投資も含まれます。
・100兆円の所得のうち70兆円しか消費に回さず、30兆円も貯蓄してしまうような状況が続くなら、巨額の投資(設備投資など)をして生産能力を大幅に拡大しても、将来それだけの消費の伸びがあるとは思えない。企業がそう考えて、合計10兆円の投資計画しか立てないので、計画上で貯蓄が投資を上回った20兆円分は、モノやサービスが売れなくなっているのです(p179)
■企業の投資が増えないとすれば、
個人の消費を増やすことが必要です。
そのためには、
個人がお金を使いたいという
欲求を持たなければなりません。
その方法として3つ例をあげています。
一つ目は、株価を上げて
バブル時代のようにお金持ち感覚で、
お金を使ってもらう方法。
これはアベノミクスで実証中。
二つ目は、今おカネがなくても
物が買えるローン。
しかし、政府は消費者ローンの金利上限を
決めるなど、徹底的に規制しています。
三つ目は、消費税を下げること。
これもまた逆に増税しようとしている。
これでは個人消費は伸びないのです。
・毎月の携帯電話利用料金のなかで少しずつ携帯電話機のおカネも支払っていくというやり方は、完全に一般化しましたが、これも一種のローン(借金)と考えられます(p237)
■最後には、我々はなぜ働くのか、
という問題にも触れています。
それは自分が生きていくことに必要な
必要最低限の消費以上に消費するから。
その消費を満たすために
生産が必要となります。
その生産のために私たちは
働かされているのです。
自分の欲求が増えれば増えるほど、
自分の仕事が増えてしまう。
なんだか不思議ですね。
吉本さん、阪本さん
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・本来「解放者」となるべき機械が「自由人を奴隷に落とす凶器」と化している、トラファルグはいいました(p129)
・私たち自身の余剰消費が、私たちに労働を強いてゆくのが近代の生産システムだということです。・・ですから、近代の消費とは生産のためにつくり出される消費なのです(p138)
・バブルが発生すると、たいていは消費が伸びるのは、保有している資産の値上がりで豊かになったと思った人が、モノやサービスの消費を増やすことで豊かさをより現実的に感じたいと考えるからです(p203)
・日本やアメリカなら六~八割は賃金として支払われるのに、中国では三~四割しか労働者の賃金にならないのです。マクロ経済の所得の大部分は、企業に出資している人たちが分けてしまうわけです。だからこそ、急に大金持ちが多数出現したのです(p211)
・有益なモノやサービスを生産する仕事をしているからといって、高い賃金(所得)が得られるわけではない。(p123)
・テレビに出る芸人のうち、自分ではギャグもいわず芸もしない司会者のほうが、ずっと高額の報酬を稼ぐ・・だから、おカネを稼ぎたくて芸人になる人であれば、当然、最終目標は番組司会者となります(p98)
・世界全体では、誰かが株式を買ってリスクを引き受けることになります・・デリバティブなどの金融技術を駆使しても・・世界全体ではリスクの総量は減らせないのです(p28)
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【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第一章 賢者の消費、愚者の金融
第二章 有益は低価値、無益だからこそ高価値
第三章 禁欲が生み、金融が増幅させる、消費への欲望
第四章 消費と金融は、現代人をどこに向かわせるか?
著者経歴
吉本佳生よしもと よしお)・・・1963年、三重県生まれ。大学卒業後、銀行勤務を経て、エコノミスト・著述家・関西大学会計専門職大学院特任教授。専門は金融経済論、生活経済学、国際金融論。NHK教育・総合テレビで放送された、経済学教育番組「出社が楽しい経済学」の出演・監修者
阪本俊生(さかもと としお)・・・南山大学経済学部教授。専門は、消費社会論、理論社会学
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