「大往生したけりゃ医療とかかわるな」中村 仁一
2012/01/28公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
年をとったら延命治療はするな
老医師による大往生のための提案です。つまり、年をとったら延命治療はするな、ということです。現代の医療でも完治できない病気があります。年を取ってそうした病気になったら、自然に死を迎えるのがいい。延命治療を選択すれば、若干の延命と引き換えに地獄が待っているのです。
老化にもっともらしい病名をつけ、発達した医療に頼れば何とかなるように煽り、期待を持たせているのが医療業界なのです。仮に、「年をとればこんなもの」と日本国民が分かったら、病院は潰れ、医療関係者が失業することになってしまうのです。
「できるだけの手を尽くす」が、「できる限り苦しめて、たっぷり地獄を味わわせる」とほぼ同義になっている(p78)
点滴注射や酸素吸入は、幸せに死ねる過程を妨害
つまり日本の現状は、延命治療が常識になっていることに著者の苦悩があるようです。点滴注射や酸素吸入は、本人が幸せに死ねる過程を妨害するものとして、著者は原則として推奨しないという。介護では、無理やり食事を食べさせたり、栄養チューブを鼻から突っ込むようなことが行われています。親切のつもりが、人によってはありがた迷惑ということもあるのです。
年寄りが骨折すると入院させますが、入院して骨はつながったのに寝たきりになってしまうことがあります。年寄りに「過度の安静」は寝たきりにつながり、寿命を短くしてしまうのです。
無理やり飲ませたり食べさせたりせず、穏やかな"自然死"コースにのせてやるのが本当の思いやりのある、いい"看取り"のはずです(p56)
老人は「がん検診」に近づくな
著者は老人に「がん検診」をお勧めしません。年寄りは余命は少ないのであり、仮に「がん」が見つかったりすれば、抗がん剤を飲まされ、苦しみのうちに死ぬことになってしまうのです。
今のうちに自分の死を考えておく必要があるようです。ボケてしまったら、無理やり延命治療されかねない。医師による医療への箴言に、びっくりしました。私が老人になった頃には、常識が変わっているといいな、と思いつつ、中村さん、よい本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「自分の死」を考えるのは、「死に方」を考えるのではなく、死ぬまでの「生き方」を考えようということなのです(p148)
・抗がん剤が「効く」として採用、承認される基準があります。それは、レントゲン写真など画像の上で、がんの大きさ(面積)が半分以下になっている期間が4週間以上続くこと、そして、抗がん剤を使った患者の2割以上がそういう状態を呈すること・・8割もの患者が反応しないようなものが、薬として認可されるなど、他では考えられません(p110)
・医者にかからずに死ぬと「不審死」になる・・・そのまま自宅で亡くなると、「不審死」ということで警察が入って厄介なことになるので、至急、往診医を探すようにと助言しました(p118)
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【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
第1章 医療が"穏やかな死"を邪魔している
第2章 「できるだけの手を尽くす」は「できる限り苦しめる」
第3章 がんは完全放置すれば痛まない
第4章 自分の死について考えると、生き方が変わる
第5章 「健康」には振り回されず、「死」には妙にあらがわず、医療は限定利用を心がける
終章 私の生前葬ショー
著者経歴
中村 仁一(なかむら じんいち)・・・1940年長野県生まれ。社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長、医師。京都大学医学部卒業。財団法人高雄病院院長、理事長を経て、2000年2月より現職。96年から市民グループ「自分の死を考える集い」を主宰
日本の医療問題関連書籍
「医療経済の嘘」森田 洋之
「続 ムダな医療」室井一辰
「医療の限界」小松 秀樹
「大往生したけりゃ医療とかかわるな」中村 仁一
「神の手の提言―日本医療に必要な改革」福島 孝徳
「在宅医療の真実」小豆畑 丈夫
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