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「医療の限界」小松 秀樹

2010/05/27公開 更新
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医療の限界 (新潮新書)


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

医師不足、看護婦不足の病院が増える

秋田県で医師が辞めるなどして、市民病院などの運営が難しくなっているとの報道がありました。この本は、現在、医師が直面している医療事故による訴訟リスク、長い勤務時間、大学病院を含めた医師の教育の問題を示した一冊です。


まず、全体的な傾向として大学病院や市民病院などから小規模の病院に医師がシフトしているのは事実のようです。労働時間と収入、そして訴訟リスクを考えれば、当然の結果なのでしょう。そのため医師不足、看護婦不足の病院が増える傾向にあるわけです。


・全国の意思がリスクの高い病院診療から、小規模の病院に、さらに、開業医にシフトし始めています。患者との紛争、労働時間、収入とあらゆる面で開業医が有利でした・・・しかし、これからは開業も楽ではない(p190)


大学院生を研修医として安い給与で酷使

また、大学病院にも問題が多いようです。この本で指摘しているのは、「手術のできない外科教授がいる。」「大学院生を研修医として安い給与で酷使している」「論文だけで評価されて、実際の能力で評価していない」といったところです。


つまり、日本の大学病院では、ろくな研究もできず、基本的に臨床医として働くことになるのですが、月に四~五万円しか給与をもらえずに、逆に授業料を払うのだという。死亡した女性患者を担当していた研修医は、四日連続で当直していたというのです。


・アメリカやヨーロッパでは、基礎研究の多くは学位を持った理学、薬学あるいは農学部の出身者が担っています。しかし、日本の大学は、臨床医であっても基礎研究を重視します・・・「手術ができない外科教授」は、決してめずらしくないのです(p129)


「手術ができない外科教授」はめずらしくない

また、日本では大学院を修了して学位を得ると人事上、優遇されるので、医師としての能力とは全く関係なく臨床医としてのポジションを得るという。つまり日本では、医師としての実務能力のある人は偉くなれず、基礎研究ばかりして医療のできない人が偉くなってしまうのです。


お医者さんの世界を、少し見ることができました。小松さん、よい本をありがとうございます。


この本で私が共感した名言

・「日本では恨みで医事紛争になる。アメリカではお金が目的になる。アメリカの意思は、紛争が表ざたになる前に、患者にお金を渡すことが多い」と聞きました。(p59)


・パチンコ産業の市場規模は年間約三十兆円ですから、医療費とほぼ同じぐらいです。葬儀関連の費用も十数兆円といわれています。(p153)


医療の限界 (新潮新書)
小松 秀樹
新潮社
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【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第1章 死生観と医療の不確実性
第2章 無謬からの脱却
第3章 医療と司法
第4章 医療の現場で―虎の門病院での取り組み
第5章 医療における教育、評価、人事
第6章 公共財と通常財
第7章 医療崩壊を防げるか



著者経歴

小松秀樹(こまつひでき)・・・1949(昭和24)年香川県生まれ。東京大学医学部卒業後、山梨医科大助教授などを経て、現在、虎の門病院泌尿器科部長。2006年に『医療崩壊--「立ち去り型サボタージュ」とは何か--』で、病院医療の危機を克明に描き、発言する第一線の臨床医として注目される。


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「医療経済の嘘」森田 洋之
「続 ムダな医療」室井一辰
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「在宅医療の真実」小豆畑 丈夫


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