「自壊する帝国」佐藤 優
2008/09/01公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(93点)
要約と感想レビュー
外交官はある種、スパイのような活動をしているわけですが、最も困難であろうと思われるのは、信頼できる人間関係を作ることではないでしょうか。盗聴や、買収で情報は取れますが、本当にレベルの高い情報源からはよほど好かれないと、情報は引き出せないでしょう。
・大使館は政務班十人、経済班十五人の体制でソ連情報をフォローしているのだが、記者たちは二、三人で取材し、分析し、それを記事にしている。しかし、マンパワーの圧倒的に少ない記者たちが大使館員がとることのできない情報をとってくる(p119)
1987年、佐藤氏はモスクワの大使館勤務を始め、モスクワ大学で興味のある神学を学ぶなかで、ロシア人脈を広げていきます。そして、1991年、ゴルバチョフ軟禁にはじまるソ連崩壊の過程で、情報収集だけでなく、ソ連共産党とロシア共産党の間に立ち、ソ連崩壊のなかで一つの役割を持つまでになっていくのです。
その後、日本とロシアは、北方領土問題を解決し、平和条約が締結されるのではないかという流れのなかで協力関係が進むものと思われました。
・日本国家が生き残るためには、今後、国力を増大し、自己主張を強める中国を牽制する必要がある。そのためにはロシアとの関係を改善することが日本の国益に適うはずだと、地政学的発想に立つ外交官たちは考えたのである。(p15)
しかし、2002年には田中真紀子外相と鈴木宗男議員との確執があり、鈴木宗男議員バッシングと共に、佐藤氏は外務省から切られるのです。圧倒的な描写力で描かれる外交の世界に引き込まれました。外務省の組織の雰囲気だけでなく、有能な外交官は何をしているのか、何を考えているのかが伝わってくる重厚な一冊です。本の評価としては★5つとしました。みなさんもお楽しみください。
この本で私が共感した名言
・イラクはカネになるんだよ。・・・イラクで戦争が起きれば、アメリカ、イギリス、ロシアで石油利権を再配分する。そのときに備えてロシアのカードを増やすことが僕たちの仕事だ。(p325)
・何度もタダ飯を食べていると、「協力者」ということにされてしまう。それがこの世界における「ゲームのルール」なのだ。奢られたら奢り返す。(p150)
・スターリンははつての同士を銃殺した晩に必ず宴会を開いて「いい奴だったのになあ」と言って、粛清した同士を偲んで「キンズマラウリ」か「フバンチカラ」で乾杯したという(p276)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★★★(93点)
目次
序 章 「改革」と「自壊」
第一章 インテリジェンス・マスター
第二章 サーシャとの出会い
第三章 情報分析官、佐藤優の誕生
第四章 リガへの旅
第五章 反逆者たち
第六章 怪僧ポローシン
第七章 終わりの始まり
第八章 亡国の罠
第九章 運命の朝
著者経歴
佐藤 優(さとう まさる)・・・1960年生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了。外務省入省。在英国日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館。95年より外務本省国際情報局分析第一課。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年、執行猶予付き有罪判決を受ける。控訴中。
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