「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」武田 邦彦
2007/06/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
著者が主張する大きな環境問題のウソは3つです。
まず、プラスチックのリサイクルです。膨大な税金と、分別に膨大な手間がかかっているにもかかわらず、実際に再利用されているのはごくわずかというのが現実のようです。
・ペットボトルの販売量が51万トンなのに、再利用が3万トンである・・・実にバカらしい。(p18)
2つめはダイオキシン騒動です。
実はダイオキシンには、動物実験による毒性評価だけであり、人間に対する毒性が認められていないのです。言い方を変えると、現状のダイオキシン濃度では、本当に健康被害があるのかわからないのです。
例えば、醤油やワサビは少量であれば美味しさを強めますが、一升瓶で飲めば命にかかわります。どんな物質でも、毒性があるのは当たり前なのです。 それなのに、マスコミ騒動により、膨大な税金が焼却炉の更新に使われてしまいました。
・報告書を筆者は読み、また驚いた・・・「ダイオキシンは人間ではほとんど毒性が認められていない。急性毒性としてはニキビが最も重い症状であり、それ以外には認められていない(p87)
そして、3つめは京都議定書です。
京都議定書は米国や中国などの発展途上国が削減義務を持たないことから、実質的に温暖化防止に効果はありません。そもそも温暖化しているのかどうか、二酸化炭素などの温暖化ガスが温暖化に関連しているのかは状況証拠でしかないのです。
温暖化と温暖化ガスの因果関係が証明されす、さらに削減しても実施的に効果がないにもかかわらず、日本は自分で目標を決め、目標を達成できなければ、数兆円かけて排出枠を買うという仕組みなのです。
・ある国が二酸化炭素を削減する約束をしておきながら、実際には二酸化炭素を削減することができない時には、二酸化炭素を削減する余裕のある国から削減枠をお金で買取り、それを約束に充てることができる・・・お金で問題を解決できる(p162)
著者は結論として、資源リサイクルや温暖化の環境問題は日本に存在しないと断定しています。国際的な視点で日本を見てみれば、日本は他国に比べゴミを出さない社会であり、GDP当たりの二酸化炭素の排出量も少ないのです。例えが良いかわかりませんが、肥満が問題となったときに、やせ細った人にもっと痩せろと要求して、目標を達成できなければ罰金を取るような矛盾に満ちたものなのです。
・プラスチックのリサイクルに1700億円、家電リサイクルに1000億円、さらにリサイクル推進のために2000億円だから国民がリサイクルのために余分に支払ったお金は1年間でトータル5000億円にもなる(p42)
こうした環境問題よりも、資源の枯渇こそが環境問題である、とうのが武田先生の主張です。いずれ石油が取れなくなれば、資源リサイクルの必要性もなく、温暖化ガスも発生しなくなるのです。環境問題について都合の悪いことは公表しないという官僚とマスコミの性質を再認識する一冊でした。★4つとします。
この本で私が共感した名言
・ダイオキシンの騒ぎが起こった直後、多くの自治体はごみ焼却炉をお金をかけて改造した・・・国が用意したお金は毎年600億円~1800億円に上った。それが10年以上続き、必要もない施設に巨額の税金が投入されたのである。(p89)
・1950年頃には、南極の気温はマイナス49.0度だったが、記事が書かれた1984年頃は気温が49.5度まで下がり、最近ではマイナス50度に近づきつつある(p117)
・日本国民の多くは京都議定書を守ることで地球温暖化が改善されると信じているが、それも程度である。1度上がるところを0.993度上がるというのではどうにもならないではないか。つまり、残念ながら京都議定書というのは地球温暖化にはほとんど何の影響もない。(p159)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★★☆(88点)
著者経歴
武田 邦彦(たけだ くにひこ)・・・1943年生まれ。名古屋大学大学院教授を経て、中央大学総合工学研究所教授。内閣府原子力安全委員会専門委員。文部科学省科学技術審議会委員。
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最近一番ビックリした本です。
私は環境問題に関心を持っており先頃eco検定を受験しました。
テキストは東京商工会議所の公式テキストです。
その公式テキストでは地球温暖化の例として
キリマンジャロの積雪面積の減少、キリバスの海面の上昇、サンゴ礁の白化の写真が載せられており
ショックを受けました。
しかし、地球温暖化の話は単なる仮説という
本書の主張を読み違った意味で
ショックを受けました。
Eco検定の前に読まなくて良かったと思います。