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「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」武田 邦彦

2011/03/07公開 更新
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環境問題はなぜウソがまかり通るのか2 (Yosensha Paperbacks)


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

 環境省が所管する京都議定書と資源リサイクルの欺瞞について切り込んだ一冊です。


 私は温暖化ガス排出権取引に仕事で関わったことがありますので、京都議定書を批准した日本は、環境やエコといった名誉のためにお金を支払わざるをえなかったものと理解しています。悪い表現で言えば、東欧を統合して努力せずに目標達成できる西欧諸国と、議会の反対で批准するはずのない米国にまんまと騙された。こうした国際政治における判断ミスは、ナチスドイツを組んだ世界大戦前と同様に、記録し歴史的評価を下すべきと考えます。しかし、なぜかこれをテーマの書籍は少ないのが現実です。


・日本は、たとえばホンダの車を買えばこのくらい減る、松下電器の製品を買えばこのくらい二酸化炭素排出量が減るという交渉をすべきだったのだ(p89)


 京都議定書については、日本だけが金を払うという状況に懲りて、延長されないことで軌道修正がなされましたが、資源リサイクルについてはあまり変化がありません。


 武田さんの主張は、リサイクルする価値のあるものだけ資源リサイクルしてはどうか、というものです。ペットボトルや再生紙は再生にエネルギーを使うので、燃やしてしまう、という選択肢が有望と考えているようです。


ペットボトルを一度使う時に消費する石油(換算量)は次のようになる。
 1)1回使って焼却する場合・・・96.0グラム
 2)リサイクルする場合・・・・238.0グラム・・・(p158)


 なんでもかんでも資源リサイクルしようとする役人には経済性の視点が欠落しており、天下りの温床と指摘しています。これからは資源リサイクルについて、本質を踏まえたうえで見直しが検討されるとうれしいですね。武田さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・何でもかんでも本格的にリサイクルを始めようとすれば、手間がかかり、資源を余計に使い、管理もしなければならない。そこに膨大な税金を注ぎ込むことができ、天下りの際の特殊法人や団体をつくることもできる(p173)


・プラスチックを燃やしてもダイオキシンは危険なほどには発生しない・・・ダイオキシンの毒性はこれまで過剰に報道されてきた。実際には毒性は弱い・・・焼却炉でプラスチックを燃やしても炉は傷まない・・・(p164)


・目の前に畑がある。そこに石油1カロリーを使って作物を育て、作物を1カロリー得るとする。そしてできた作物に0.5カロリーの石油を使い、バイオエタノールに変える。・・・一方原油に0.5カロリーの石油を使ってガソリン1カロリー分をつくる。どちらが効率的だろうか。(p129)


京都議定書・・・温暖化防止の役に立たず、日本だけが圧倒的に不利な条約(p25)


・1 1980年から地球の温暖化は進んでいる。
 2 その前の30年間、地球は寒冷化していた。
 3 その時も二酸化炭素は増加していた。・・・
 7 地球温暖化がもたらす未来予測はいくら議論しても決着しない。現代の科学でわからないことを言っているからだ。
 8 わからないものはわからない。(p147)



【私の評価】★★★★★(93点)



著者経歴

 武田 邦彦(たけだ くにひこ)・・・1943年生まれ。名古屋大学大学院教授を経て、中央大学総合工学研究所教授。内閣府原子力安全委員会専門委員。文部科学省科学技術審議会委員。


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