「失敗の教訓―もう一つの「ゼロ戦」論」日下公人
2004/06/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
●読んでいて怖くなる本でした。
日本軍の失敗を分析しているのですが、
いかに「判断」が組織の運命を
左右するかということが、
いやなくらい書かれています。
●そして、最も恐ろしいのは、
自分が、自分の会社が同じような過ちを
犯しそうだと思うからです。
恐ろしい。恐ろしい。
この本で私が共感した名言
・(ゼロ戦は)完成したときからすぐに量産を始めていれば、開戦時には1000機以上をそろえることができたはずである・・・これは『日本の工業力の限界』などではなく、単に軍上層部の判断だけでできたことである。意思決定能力の欠如である。(p28)
<決定し実行する力ですね。スピードも大切です。自戒>
・アメリカの底力は第一に民間に飛行機マニアがいること、第二にその人たちが画期的なことをあえてプロに対しても提案する雰囲気があること、そして第三は軍がそれを採用することで、この三つは日本にはまったくと言ってよいほど欠けていた。(p32)
<アイデアを採用する実績と、雰囲気が必要ですね>
・一機に機銃が三種類 「幕の内弁当」が悲劇を招く
<3種類の弾が必要とは・・・。何を考えているのでしょう。もしかして、3種類の会社に発注するためだったりして。>
・アメリカは二交代どころか三交代制を採用していた。戦場から帰ってくる組、待機して次に乗り込む組、そして訓練をしている組という具合に、余裕ある戦闘体制を採用していた。・・・ところが、日本は「月月火水木金金」で不眠不休だから、疲れ果ててしまう。(p59)
<日本では残業で仕事をつめようとしますが、どうせなら2交代にしたほうが合理的だと思うのですが、>
・南雲中将は「ミッドウェーの責任をとって、私はここで死ぬのが仕事だ」と言って、サイパン島では看護婦さんとテニスばかりしていたと、生き残った看護婦さんが書いている。しかし高い月給を取っていたのだから、月給分くらいは米軍を手こずらせることを何か考えろと言いたい。死ねばすべては帳消しというのは日本の美風であるが、まだ生きているうちはプロとしての責任があるはずだ。美風はときに無責任と表裏一体である。(p91)
<死ねばすべては帳消し・・・・確かに無責任ですね。>
・日本が潜水艦を無駄にした原因のひとつに「等間隔配備主義」がある。要地の周辺に潜水艦を等間隔に配備していたので、一隻が見つかると、残りがどう並んでいるかを読まれてしまい、それでずいぶんやられてしまった。艦長たちは「もっと自由に動かせてくれ」と嘆願したが、参謀は上層部に対して「隙間なく並べました」と言いたかった。形式が第一で艦長たちの声を聞こうとしなかった。(p113)
<参謀の気持ちがわかるがゆえに、恐ろしいことですね>
・官僚制の致命的な弱点をどう制度的に補えばいいのかだが、そのひとつは「ツー・プラトーン・システム」だと思う。・・・二組の司令部を作っておいてお互いに批判的な目で相手のやり方を見て、新しい戦い方を工夫するのである。・・・アメリカは現にそういう形でやっていた。同じ機動部隊を、スプルーアンスとハルゼーが交代で指揮を取っている。(p122)
<日本に必要な仕組みかもしれません。しかし、実際にどう運用するんだろう・・・>
・志をなくした官僚が権力や権限をもてあそぶのは非常に困る。・・・わかりやすい話をすれば、大蔵省が予算を持ち、国有財産を持ち、それに加えて国税庁をもっているのがそれにあたる。・・・新聞についても「東京国税局長が電話をかけると記事が変わっちゃう」という噂が前々から囁かれている。・・・権力がにらみをきかすことが、いかに国家・国民に不利益をもたらすかが、あの戦争のときの軍部のことを振り返ると、非常によく理解できる。合理的な思考や論議を封殺するからである。戦争なら負けるし、経済なら不景気になる。(p135)
<合理的な思考や議論をしたいですね>
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【私の評価】★★★★★(92点)
著者経歴
日下 公人(くさか きみんど)・・・1930年生まれ。日本長期信用銀行取締役を経て、ソフト化経済センター専務理事。多摩大学教授、東京財団会長などを歴任。
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