「成功の法則―松下幸之助はなぜ成功したのか」江口克彦
2004/01/19公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(95点)
要約と感想レビュー
松下幸之助との仕事は感動の連続
PHP研究所の秘書から経営者となるまでの22年間、著者は松下幸之助のもとで働いてきました。その22年間は、朝4時に松下から電話がかかってくる。夜中に電話がかかってきて、今、すぐ来いと言う。土曜日曜もなく、夜はしばしば松下幸之助と食事を共にし、10時、11時まで過ごすというすごい生活だったのです。
しかし著者は、辛いこと、苦しいことはなかったという。むしろ楽しい22年間だったといいます。それは、松下幸之助との仕事は、感動の連続であったからです。江口氏の語る松下幸之助のエピソードに、いちいち私が感動してしまうのですから、その現場にいた江口氏の感動は、よほどのものであったのでしょう。思わず、その松下幸之助の世界に入り込んだような気持ちになる一冊です。
「ああ、江口君か、わしやけどな。夜遅く電話をしてすまんな。けどな、わし、君の声を聞きたかったんや。君の声を聞いたら、元気が出るんや」(p40)
的外れの批判にも「なるほど」
松下幸之助は、仮に相手が的外れの批判をしたとしても、いつも「なるほど、なるほど」と頷いて聞いていたという。そして、部下の話を聞くときには、部下の話の内容を評価して良いとか悪いとか言ったらあかん。部下が提案を持ってきてくれる、その誠意と努力と勇気をほめんといかんと言っていたというのです。
これは松下幸之助が「衆知を集める」ために、謙虚に相手の話を聞いていたということなのでしょう。著者は松下幸之助から「衆知を集める」ということについて、少しできる人なら全世界は自分のものだけれども自分で持っているのはめんどうだから他の人に預けていると考えているものだと言っていたという。
松下は、自分の言葉で、謙虚に話していた。それだからこそ多くの人が感動したのだと思う・・・人間は、相手が自分を本質的にどう捉えているかということを、正確に察知する(p179)
人間は誰でも偉大な存在である
そして松下幸之助は、常に熱意を持っていました。熱意については、「尋常一様な熱意ではあかんで。きっとこの事業を発展させようという、からだごとの、正しい熱意でないとな」と言っていたという。部下を叱るときも、「本気で叱らんと部下は可哀想やで。策でもって叱ってはあかんよ。けど、いつでも、人間は誰でも偉大な存在であるという考えを根底に持っておらんとね」と言っていたというのです。経営者は1000パーセントの思いを持っていなくてはならないと考えていたのです。
久しぶりに本を読みながら涙して、妻の実家のお父さんに涙を見られないように、壁に向かって寝そべって読みました。松下幸之助の言葉は、読んで涙するくらい感動するのですから、言われた人は、「この人のために死んでもいい」と思うに違いありません。やはり、経営者は人の心を打たなくてはならない、そう思いました。
話変わって、今、中小企業診断士入門講座という通信教育を受けていますが、「成功の法則」を純金とすれば、中小企業診断士のテキストは金メッキですね。表面的な知識だけのテキストです。中小企業診断士を取るくらいなら、この本を読みましょう。数多くのエピソードに、松下幸之助がそばにいるような感覚さえおぼえる心からお勧めの名著として★5つとしました。
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この本で私が共感した名言
・「きみ、風の音を聞いても悟る人がおるわなあ」(松下)(p22)
・世間は誰ひとりとしてきみの成功を邪魔したりせんよ。やれないというのは、外部の事情というよりも、自分自身に原因があるものなんや。(松下)
・塩の辛さ、砂糖の甘さというものは、何十回、何百回教えられても、ほんとうにはわからんやろ。なめてみて、初めてわかるものや(松下)
・私は次第に、経営というものは日常の一見些細なと思われることが積み重ねられた叙事詩であることがわかってきた
・(松下は)改革をするにあたっては「今あるものに継ぎ足すな。今あるものをゼロにして、どうするかを考えよ」と強調した。
【私の評価】★★★★★(95点)
目次
第1章 成功の入口で
第2章 成功の途上で
第3章 成功の達成で
補章 松下幸之助は、何を基軸に考えたのか
著者経歴
江口 克彦(えぐち かつひこ)・・・1940年生まれ。大学卒業後、松下電器に入社。その後PHP研究所。1976年より経営を任され、1994年より副社長に就任。
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