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「稲盛和夫の実学―経営と会計」稲盛和夫

2002/09/20公開 更新
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稲盛和夫の実学―経営と会計


【私の評価】★★★★★(91点)


今日の名言

値決めは経営である。

適正な価格とはなんでしょうか。ある人は製造原価と利益から考え、ある人は市場に受け入れられる価格を考える。値段が高くないと売れない商品もあります。つまり、正しい価格は本来存在しないのであり、経営者の考える戦略で決まるものであるということででしょう。


その奥深さ、重要性ゆえに値決めを部長クラスに任せてはいけません。製造部門は高く売ってもらえばコスト削減が楽になり、安くすれば営業部門が楽に売ることができるのです。値決めこそは経営者が決めなければ、適切な値段を設定できるものではないのです。 稲盛さんはそういう値決めの重要性を伝えたかったのでしょう。


要約と感想レビュー

稲盛和夫さんは理系ですので、会社経営する中で会計というものが重要であると感じたという。つまり、物を作って売るという商売がうまくいっているのか、うまくいっていないのか、会計が指針となるからです。


まず、最初にぶつかった壁は減価償却費です。減価償却費は何かといえば、長期間使用できる設備の費用をその使用できる期間で均等に費用化しようという経営としては当たり前の考え方によるものです。ところが実際の減価償却費を計算してみると、法定耐用年数と実際の耐用年数が異なることがあるのです。例えば6年でダメになるものを、法定耐用年数の12年で償却しているとしたら最初の5年は儲かっているように見えて実は最後の年に残額を償却してみたら赤字であったということにもなりかねないのです。京セラでは実際の償却期間に近い「自主耐用年数」を定めて償却しているという。もちろん税金を支払うための会計は別にやって税金は支払っています。例えば変化の激しい通信機器設備は法定10年に対し、大幅に短縮して有税償却しているというのです。


また、京セラでは現金(キャッシュ)ベースで利益を計算します。もし、在庫を増やしたとすれば、現金が減って在庫が増えます。現金が減ったのですから、費用が発生したと考えるのです。通常の税務会計では在庫や売掛金を資産として考えますが、現金がないわけなので資産に計上するとあたかも現金(利益)が増えたかのように誤解する人が出てきます。在庫を売って売掛金を回収して、はじめて利益となるということが京セラでは徹底されているのです。


・経営はあくまで原点のキャッシュベースで考えるべきである・・・本当に財産としての価値を持つものなのか、そうでないのか(p51)


京セラでは固定費の増加を極力減らす努力していることがわかります。例えば、設備を買うならまず中古を検討します。売れない在庫はすぐに償却します。人件費も固定費であり、間接部門などはできるだけスリムにすることを注意していることがわかります。


また購買部門ではまとめて買うことで安くする方法を取りたがりますが、京セラでは必要なものを必要な分だけ買うことを徹底しています。仮に安くても在庫が増えれば倉庫が必要となり、その在庫を本当に使えるのかわからないからです。購買部門はまとめ買いで安く買ったと威張りますが、そこにはリスクがあることを経営者として知っているわけです。


また、会計では不正が起こりがちですが、社員を犯罪者としないために、かならず二人でチェックする体制を作っています。一人では何もできないようにして、不正を防いでいるわけです。こうした会計の基本を押さえつつ、多くの社員に経営者と同じ視点で仕事をしてもらう仕組みが、アメーバ会計です。労働者の時間当たりの利益を計算して、時給以上に稼ぐことができたかどうか、月次でチェックするものです。その職場(アメーバ)が付加価値をどれだけ生んでいるのか、見える化するのは素晴らしいことだと思います。


アメーバ経営はやる気のない人にとっては地獄ですが、やる気のある人にとっては面白いゲームといえるのではないでしょうか。京セラの会計の考え方がよくわかる一冊でした。何度も読みたい一冊です。


この本で私が共感した名言

・売上と仕入れが一対一の対応・・・一対一対応の原則(p70)


・中古品で我慢する(p80)


・管理会計報告としての時間当たり採算制度(p136)


▼引用は下記の書籍からです。
稲盛和夫の実学―経営と会計
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稲盛 和夫
日本経済新聞社
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【私の評価】★★★★★(91点)


目次

まえがき  今こそ求められる「経営のための会計学」
 序章 私の会計学の思想
第一部 経営のための会計学―実践的基本原則
 第一章  キャッシュベースで経営する(キャッシュベース経営の原則)
 第二章 一対一の対応を貫く(一対一対応の原則)
 第三章 筋肉質の経営に徹する(筋肉質経営の原則)
 第四章 完璧主義を貫く(完璧主義の原則)
 第五章 ダブルチェックによって会社と人を守る(ダブルチェックの原則)
 第六章 採算の向上を支える(採算向上の原則)
 第七章 透明な経営を行う(ガラス張り経営の原則)
第二部 経営のための会計学の実践―盛和塾での経営問答から



著者経歴

稲盛和夫 (いなもり かずお)・・・京セラ名誉会長、ディーディアイ名誉会長(97年より)、京都商工会議所会頭。1932年生まれ。鹿児島大学工学部卒業。 59年京都セラミック(株)を設立、66年社長、85年会長。 84年第二電電、87年セルラー電話会社を設立し、それぞれ会長に就任。


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