【書評】「最高の結果を出すKPIマネジメント」 中尾隆一郎
2026/05/29公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
リクルートの儲かるKPIマネジメント
リクルートでスーモカウンター推進室長として6年間で売上30倍・店舗数12倍・従業員数5倍という驚異的な成長を実現した著者が、リクルートで11年間にわたって社内講師を務めてきたKPIマネジメントの知識をまとめた一冊です。
KPI(Key Performance Indicator)とは「事業成功の鍵を数字目標で表したもの」です。会社全体のKGI(重要目標達成指標)が利益だとすれば、その利益を生み出す最重要プロセスをCSF(Critical Success Factor)として特定し、そのCSFを数値目標として表したものがKPIです。
KPIマネジメントで大切なのは、施策の承認をする際に、同時に施策の「振り返り」についてもいつ、だれが、何について行うのか確定しておくことです。また、KPI数値が悪化した場合の対策を事前に決めておくと、短時間にPDCAを繰り返すことができて、成果が出やすいといいます。
リクルートグループには「メディアの学校」という勉強会があります・・11年間「KPI」と「数字の読み方」の社内講師をしていました(p4)
成果のでるKPI事例
本書に登場する実践事例のなかで特に具体的なのが、営業組織でのKPI設計です。
リクルートで取引額の大きい企業を分析したところ、共通点は、「理由が明確な自社独自の提案を準備」して、「その価値が分かり、決断できる人に提案ができている」という2つのことを実行していることがわかりました。そこで、その2つをCSF(最重要プロセス)としてKPI管理したところ、2ケタ成長を達成したというのです。
また、ある組織では「複数案の提案」がCSF(最重要プロセス)と分かりました。顧客に1種類の提案をした場合の受注率が10%だったのに対し、複数案を提案すると受注率が33%に跳ね上がったというのです。この事実からKPIを「複数案提案率」に設定し、営業活動の焦点を絞ったのです。
プレゼンテーション額をKPIに設定した事例も興味深いものです。過去データを分析すると、プレゼンテーション額の約50%が実際の受注につながっていることがわかりました。さらに顧客に検討している金額を自筆でサインしてもらう工夫を加えることで、発注確度が高まったといいます。
営業プロセスの時間を短縮して改善した事例も実践的です。ヒアリングと提案を別日程で行っていたプロセスを、同一訪問でヒアリングとプレゼンテーションを同時に行う形に変更するだけで、営業活動量を大幅に増やすことができたといいます。
営業プロセスを分解して売上向上策を練る・・・営業先リストアップ→アプローチ→ヒヤリング→プレゼンテーション→クロージング→納品(p125)
ダメなKPIの事例
本書が素晴らしいのは、失敗事例が豊富なことでしょう。KPIマネジメントが機能しないケースとして著者は、数値目標をたくさん設定してしまうケースを挙げています。
著者自身の失敗談として、「営業活動量を増やす」「受注率を向上させる」「平均単価を上げる」という三つの改善を同時に進めようとして大コケした経験が語られています。
シンプルなKPIを一つに絞ることの難しさは、バカと思われないかという抵抗感を伴うものだという著者の指摘は、多くの人が共感できるでしょう。
割り算をKPIに使う際の落とし穴も具体的です。提案率(提案数÷来店数)を80%以上というKPIに設定した場合、最終日の閉店間際に来店した顧客への接客を担当者が躊躇する可能性があります。割り算の指標は分母が変動することで現場の行動を歪めるリスクがあり、野球の首位打者争いで選手が打席を避けるのと同じ構造だと著者は説明します。
KPIの数字が現場の営業活動を阻害してしまうという隠れた問題を、具体的な事例で解説しているところが素晴らしいと感じました。
限られた集客予算の中で、最大限の集客目標の達成を求められます。すると手段の目的化が起きる・・・マッチングに至らなくても集客すること自体が目的になりがちです・・・「集客担当」にもこの「マッチング目標」をKPIとして持ってもらいます(p183)
KPIで注意すべきポイント
KPIマネジメントを機能させるうえで著者が強調するのが、事業の「構造」を把握することです。全体像とメカニズムを理解せずにKPIを設定しても、的外れな指標になってしまいます。
例えば、ABC(Activity Based Costing)を用いて企業ごと・商品ごとの利益を把握すると、取引額が大きいにもかかわらず利益が出ていない顧客が見えてきます。そうした構造がわかれば、最初に取り組むべきは値上げであるとわかるのです。
本当に儲かるKPI管理ツールや数値目標の設定に悩む多くのマネジャーにとって、本書は「何を測ると成果が出るのか」という根本的な問いに立ち返るきっかけを与えてくれるはずです。
成功事例と失敗事例を豊富に示しながら、KPIを一つに絞ることの重要性と難しさを繰り返し論じる本書は、成果を出し続けるリクルートらしいと感じました。
中尾さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・従量課金モデルは歩留まり向上から始める・・・売上は「リーチ×歩留まり×商材価格×手数料率」(p160)
・集客担当に「目安の集客単価」を与えておく・・・「目安の集客単価」の範囲であれば自由に集客できるという自由度を与えておく(p184)
・顧客数を増やすには、広告宣伝を強化する・・1顧客増加のための平均広告宣伝費を決めてしまいます(p121)
・採用活動で最も重要なCSF(最重要プロセス)は何か。それはずばり「スピード」「採用選考スピード」です・・・1日でも早く内定を出すしかないのです(p171)
▼引用は、この本からです

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中尾隆一郎 (著)、フォレスト出版
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第1章 KPIの基礎知識
第2章 KPIマネジメントを実践するコツ
第3章 KPIマネジメントを実践する前に知っておいてほしい3つのこと
第4章 さまざまなケースから学ぶKPI事例集
第5章 KPIを作ってみよう
著者経歴
中尾隆一郎(なかお ちゅういちろう)・・・株式会社FIXER執行役員副社長。1964年生まれ。大阪府出身。1987年大阪大学工学部卒業。1989年同大学大学院修士課程修了。同年株式会社リクルート入社。スーモカウンター推進室室長時代に6年間で売り上げを30倍、店舗数12倍、従業員数を5倍にした。
リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、2018年から現職。2017年より株式会社旅工房社外取締役を務める。良い組織づくりの勉強会(TTPS勉強会)主催。
29年勤めたリクルート時代は、約11年間にわたって社内勉強会において「KPI」「数字の読み方」の講師を担当。
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