【書評】「beの肩書き[完全版]本来の自分とほしい未来をつなげる 「人生の肩書き」のみつけかた、そだてかた」 兼松佳宏
2026/05/28公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
「beの肩書き」とは
「beの肩書き」とは何でしょうか。
「課長」「編集長」「大学教員」という肩書きは、所属や職種など役割を示す「do」の肩書きです。著者は「勉強家」という肩書きを持っていますが、これは「be」の肩書き、「私はこんな人です」という肩書きなのです。私の場合は、「本のソムリエ」が「beの肩書き」なのでしょう。
「beの肩書き」は、自分が貢献できることの源泉であり、「本来の自分」のことなのです。例えば「小説家になりたい」という夢を持っていたら、「小説家のような保育士」という肩書きでオリジナルの絵本を書いて子どもたちに読んでもらう、といった活動につながります。
弘法大師・空海は、出家して修行する者を意味する「沙門(しゃもん)」という「beの肩書き」を使っていました。偉くなっても「あくまでいち修行僧である」という宣言だったのでしょう。
「beの肩書き」って会社にとっての企業理念に近いのかもしれませんね・・・迷ったときにひと所に立ち戻るためのもの(内沼晋太郎)(p49)
「beの肩書き」ワークショップ
どうすれば「本来の自分」が表現された「beの肩書き」が見つかるのでしょうか。
例えば、「時間が経つのも忘れてしまうくらい、集中して作業してしまうことは?」と自問してもよいでしょう。
自分のことは自分がいちばんわかっていないということで、自分では「飽きっぽいなあ」と思っていても、まわりからは「好奇心が旺盛だね」と言われるようなことをチェックしてもよいでしょう。
著者はこの本で、7年でのべ5000人以上が実施した「beの肩書き」ワークショップを紹介しています。
具体的には、3人一組となり、「職業リスト」から心が動いた職業に印をつけます。それらの心が動いた職業を参考に、何をしているときにユーダイモニア(個人的な充実感としての幸せ)を感じていそう?という問いの答えになりそうなものを探していくのです。
参加者同士メッセージカードで感じたことを伝えあいながら、「beの肩書き(仮)」をひとつ選ぶというワークになります。最後に、一番下に自分の名前、真ん中に選んだ「beの肩書き」、一番上に現在の「doの肩書き」を書いてまとめます。
「本来の自分」(be)とつながっていないと、他者からの評価や世の中の変化によって簡単にブレてしまう(p119)
社会的な課題を解決するソーシャルデザイン
「beの肩書き」の次にあるのは、その肩書きでどんな素敵な未来をつくるのか?という問いです。著者は、素敵な未来をつくるのは、個人的な願いに根差したマイクロプロジェクトであるという仮説を立てています。
モヤモヤマップでは、人にわかってもらえない悩み、実は気にしているコンプレックス、ずっと感じているモヤモヤ、世の中で違和感があること、いつも怒りや悲しみを感じてしまうニュースなどを書き出していきます。
MOYA→WAKUシートでは、モヤモヤの問題を書いて、その正反対の素敵な未来を書き出します。モヤモヤを文字化して、それを解決する未来をつくるプロジェクトのアイデアを考えるのです。
プロジェクトの例としては、奈良のお寺で「おそなえ」を仏さまからの「おさがり」として、子ども食堂などと協力して困っているご家族へ「おすそわけ」する「おてらおやつクラブ」という活動があります。
またスウェーデンでは、車の平均速度を下げるため、スピード違反のドライバーには違反切符を、制限速度を守ったドライバーには宝くじの当たり券をプレゼントする取り組みが行われたといいます。
ソーシャルデザイン・・・・社会的な課題の解決と同時に、新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくること(p124)
ワークショップで人は動く
著者はワークショップを通じて、人々に見えていない自分の可能性を引き出す活動をしているのだと感じました。
「beの肩書き」「モヤモヤマップ」以外にも、モヤモヤしたことについて3分くらい語り合う「エンパシーサークル」というワークがあります。話し手の「感情」を聞き手が感じ取ってフィードバックするものです。
また、著者が主催する「さとのば大学」では、1年で1地域、4年で最大4地域に移住し、地域で暮らしながらプロジェクトを実践しています。
教える・動かすのではなく、自ら動くことができるのも、ワークショップでの気づきがあるからなのでしょう。兼松さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・漠然としている「自分らしさ」を何かに例えてみる・・・食べ物編では「熱せられてはじける「ポップコーン」のような人」・・・道具編は、「いいにくいことをしっかりと伝えてくれる、心優しい「イエローカード」のような人」(p41)
・ジョーカー・・「これって誰に頼めばいいんだろう?」というときに「内沼くん出しておけば大丈夫」って思い出してもらえるような存在でありたい(内沼晋太郎)(p47)
・教育分野で注目されている、アイデアではなく質問をブレストする「質問づくり」・・・教師が質問することをやめ、「生徒が自ら調べたい質問をつくり出し、それについて考えたり、調べたりすることが生徒の学びを促進する(p277)
・アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)のワークショップ・・・具体的には「今までの経験のなかで、最もいきいきとしたとき、最も価値を感じていることははんですか?」といった・・質問に対して答えを急がずゆっくり語りながら言葉にしていく(p234)
▼引用は、この本からです
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兼松佳宏 (著)、英治出版
【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
Part1 「beの肩書き」とは?
1 「do の肩書き」と「be の肩書き」
2 あの人の「beの肩書き」
3 「beの肩書き」をやってみよう
Part2 「beの肩書き」から「ソーシャルデザイン」へ
4 ソーシャルデザインってなんだろう?
5 モヤモヤを起点にほしい未来を描く「MOYAMOYA研究」
6 すでにある資源に光を当てる「リソース・クイズ」
7 自力と他力でアイデアを広げる「スタディホール」
8 発起のためのフレームワーク「ソーシャルデザイン曼荼羅」
インターミッション2 inter-doing宣言
エピローグ
著者経歴
兼松佳宏(かねまつ よしひろ)・・・勉強家/「さとのば大学」学長。1979年秋田県生まれ。ウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。その後、ウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わり、2010年から2015年まで編集長。2016年より京都精華大学人文学部特任教員として、ソーシャルデザイン教育のためのプログラム開発を手がけ、現在は地域を旅する大学「さとのば大学」初代学長としてカリキュラムデザインを担当。
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