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【書評】「はじめのコーチング―本物の「やる気」を引き出すコミュニケーションスキル」 ジョン・ウィットモア

2026/05/27公開 更新
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「はじめのコーチング―本物の「やる気」を引き出すコミュニケーションスキル」 ジョン・ウィットモア


【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー


ビジネスコーチングの原典

プロのレースドライバーとして活躍した後、ビジネスの世界に転じてスポーツコーチングの手法を経営に応用したジョン・ウィットモア氏による一冊です。ビジネスコーチングの原典と呼ばれており、現在広く普及しているコーチングのノウハウの多くは、本書を参考としています。


本書を読んでわかるのは、現代のビジネスコーチングがティモシー・ガルウェイの「インナーゲーム」という概念に深く影響を受けているということです。従来のテニスコーチが「ボールを見ろ」と命令していたのに対し、ガルウェイは「ボールはどう回転していますか?」と質問することで、選手が自然とボールに集中できるよう導いたのです。


従来のテニスコーチが自分の技術を選手に押しつけるのに対し、ガルウェイは命令ではなく問いかけによって、相手の内側から意識と行動の変化を引き出したのです。この発想がビジネスコーチングに応用されていることが、本書を読むとわかります。


従来の上司が「成果を出せ」と人事評価の査定で動機づけていたのに対し、コーチングでは、「この行動計画で目標をどれくらい達成できそうですか」と質問することで、部下の当事者意識を生み出しているのです。


コーチングは命令・統制型マネジメントの対極にあり、アドバイスやカウンセリングのようなアプローチがコーチングの肝なのです。


マネジャーは給料の小切手と昇進の鍵、それに首切り用の斧を持っている(p38)

コーチングの四つの段階「GROW」

著者がコーチングで活用しているフレームワークが「GROW」モデルです。Goal(目標設定)、Reality(現在の状況の把握)、Options(選択肢の検討)、What/When/Who/Will(行動計画の確定)という四段階の順序で質問を出していきます。


目標設定では「できそうだと感じられる最初のステップは何ですか?」「あなたの仕事上の目標は何ですか?」「心の奥底で、本当に仕事に求めているのは何ですか?」などと問いかけます。


現在の状況の把握では「いつ」「どこで」「だれが」「何」「どれくらい」という細かい質問を積み重ねます。例えば、「仕事で一番不満を感じることは何ですか?」「その不満の後ろにある心配は何ですか?」「職場ではどういう活動がもっとも好きですか?」などと問いかけるのです。


「あなたにはどんな選択肢がありますか?」と選択肢を洗い出した後は「これらのうち、どれを実行するつもりですか?」と決断を促し、最後に「いつそれをするつもりですか?」「どんな障害にあう可能性があるでしょうか?」「どんな支援が必要ですか?」と詳細を確定していきます。


このプロセスを通じて、あくまで部下自身が選択するという形を保つことが重要です。選択の主体が部下自身であることで、責任と当事者意識が自然と生まれるのです。


よいコーチは相手の関心や考えの展開に従おうとする・・・横道にそれすぎていると思ったら、「これはどういう点で問題に関係があるのですか?」というように質問する(p120)

コーチングで「協力」チームを作る

著者は職場のチームが「受け入れ」「主張」「協力」という三つの段階を経て成熟していくと説明しています。


新しいメンバーが加わった当初は「受け入れ」段階にあり、チームへの帰属感を得るまでに数週間から数カ月かかります。


その段階を経ると「主張」段階に入り、各メンバーが力を試し、成果を競うようになります。この段階では団結力は低いものの、短期間に成果が出やすい一方で、自尊心に飢えているメンバーが「自分勝手」になったり、リーダーへ「挑戦」する人が出たりします。


ここで優れたリーダーは、この「挑戦」を脅威として命令で封じるのではなく、メンバーに責任を持つ機会を与えることでその欲求を満たします。仮に命令で部下の「挑戦」を封じれば部下の当事者意識はゼロになり、反感と妨害行為を招くだけです。


選択と責任を持たせることで「主張」段階から「協力」段階へと職場を移行させることができるのです。これこそがコーチングの役割だというのです。

                            
ソビエト帝国の崩壊は、社会が段階を経て有機的に発展する機会を許さずに、「協力」段階に無理やり押し上げようとする企てが必然的に招いた結果だった(p240)

コーチングとは支援やサポート

コーチングの職場での実践として著者が示すのは、部下の報告書への向き合い方です。上司が論評するのではなく、「報告書の目的は何ですか?」「この報告書はその目的を満たしていると思いますか?」「どういう読者を想定していますか?」と質問することで、部下が自ら気づくよう導きます。


新しいプロジェクトを計画する場面でも、「この計画の中で確信が持てないことは何ですか?」「障害になりそうなことは何ですか?」と問いかけることで、責任感と当事者意識を自然に生み出せるといいます。


従来の職場が「飴と鞭」によって人を動かしてきたのに対し、コーチングは、恐怖や報酬ではなく、内側から湧き出る動機によって人を動かすことを目指しています。


職場でマネジャーが部下の言葉に耳を傾け、部下の意見に基づいて判断すれば、部下は満足し、成果が上がり、離職率は激減するというのが著者の結論です。コーチングとは、部下が安心して発言でき、生き生きと働ける「協力」チームをつくるための技術であると、本書を読んで感じました。


ウィットモアさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・この状況のうち、自分でコントロールできるのはどれくらいだと思いますか?(コーチングを受ける人にとって、自分の状況は結局自分が選んだことだと気づくのは、大変な問題であることが多い。自分は被害者だと思っていて、そのために無力感を経験していることが非常に多い)(p188)


・「その不満の後ろにある心配は何ですか?」(p188)


・コーチングのセッションでは、相手が求めている結果を出させることがもっとも重要だ・・・自己信頼を育てるには、成功体験を積み重ねることに加えて、その成功は自分が努力した結果であると認識する必要がある(p35)


・「フレッド、はしごを取ってきてくれ。道具置き場にある」その場所にはしごがなかったら、フレッドはどうするだろう?・・・もし代わりにこう言ったとしたらどうだろう。「はしごが必要だな。道具置き場にあるんだが。だれか取りに行ってくれるかな?」(p67)


・コーチングをチームに適用する・・・すべてのメンバーが意見を出して、全員が受け入れることのできる基本原則や行動原理を定める(p247)


▼引用は、この本からです
「はじめのコーチング―本物の「やる気」を引き出すコミュニケーションスキル」 ジョン・ウィットモア
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ジョン・ウィットモア (著)、ソフトバンククリエイティブ


【私の評価】★★★★☆(82点)


目次


第1章 コーチングとは何か
第2章 コーチとしてのマネジャー
第3章 変化の本質
第4章 コーチングの本質
第5章 効果的な質問
第6章 質問の順序
第7章 目標設定
第8章 現実とは何か
第9章 どんな選択肢があるか
第10章 意思を決定する
第11章 成果とは何か
第12章 学ぶことを楽しむこと
第13章 モチベーション
第14章 目的を見つけるためのコーチング
第15章 意味を見つけるためのコーチング
第16章 企業をコーチする
第17章 フィードバックと評価
第18章 チームの成長
第19章 チームをコーチする
第20章 コーチングの障害を克服する
第21章 コーチングの多用な利点
第22章 終わりに
巻末付録 パフォーマンスコーチングの基礎


著者経歴


ジョン・ウィットモア(John Whitmore)・・・1937年生まれ。1960年代を中心にプロのレースドライバーとして活躍、世界最高峰の耐久レースであるル・マン優勝などの実績を持つ。その後英国、スイス、米国で事業を行い、仲間とともに「インナー・ゲーム」社を共同設立。ビジネスに新しいスポーツコーチングの手法を取り入れた訓練法を導入し、高い評価を得た。現在は、新たに設立した「パフォーマンス・コンサルタンツ」社において、コーチングとチームワークについて助言やレクチャーを行っている


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