【書評】「「後継者」という生き方」牟田 太陽
2026/05/26公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
三年は前社長の考えを踏襲する
事業承継は「一番会社が揺れるとき」だ、と著者は言います。おとなしかった後継者が社長に就任した途端、人が変わったように恐怖政治を始め、ベテラン社員が離れていく、そんな失敗例が多いというのです。
その根本的な原因は、社内の人間が「前社長の魅力についてきた人たち」であるという事実を、後継者が理解していないことにあると解説しています。
だから著者は、社長就任後は最低三年間、前社長の考えを踏襲することを勧めているのです。社員に本当に認められてはじめて、少しずつ自分の色を出していけばよいのです。
また、後継者が発する「言葉」の重要性についても強調しています。言葉に傲慢さが感じられれば、トラブルが起きます。後継者だからといって偉ぶり、相談なしに独断したりすることは論外だと著者は断言します。
リーダーとなる自覚を持ち、それにふさわしい立ち居振る舞い、目配り、気配り、心配りをすること、これが後継者に伝えたいことなのです。
社長になったとき,最低三年は前社長の考えを踏襲する(p184)
親子のコミュニケーションが重要
著者が2000社を超えるオーナー企業と関わる中で実感したのは、「親子の関係がうまくいっていないと、会社もうまくいっていない場合が多い」という事実です。
京都の老舗には「創業者が苦労をして、息子が楽をして、孫が乞食をする」という家訓があるといいます。この言葉が示すように、創業者と後継者が経営の理念や戦略を共有しながら、次世代へ伝えていかなければ、企業の存続はおぼつかないのです。
そのための実践的なツールとして、著者は「社長の人生計画表」と「事業発展計画書」を紹介しています。
「社長の人生計画表」は自分の年齢と,子どもの年齢,幹部の年齢、資産の推移などを書き、5年後,10年後にどうなっているのか,後継者は誰で、中継ぎは必要なのかなど計画していくのです。
「事業発展計画書」では、経営理念,人生観といった創業者が何のために経営してきたのか、儲かる方向性、危機の時の縮小戦略,社内の戦術,販売力,企画力,技術力,組織力,財務力を数字で経営目標に落とし込みます。
経営理念から目標まで文書化することで、後継者に何を期待しているのか、事業承継の道筋が見えてくるのです。親子の対話を通じて、未来を「見える化」することが、円滑な承継への近道なのでしょう。
親子の関係がうまくいっていないと,会社もうまくいっていない場合が多い(p4)
師匠となる人を見つける
著者は後継者に対し、親の会社に直接入社するのではなく、まず外で就職し、お金の苦労を経験することを勧めています。入社後も最低三年間は現場の第一線で働くべきだとも勧めているのです。
そして経営者として成長するうえで欠かせないのが「師匠となる人を三人つくれ」という教えです。著者自身も、理念・営業・哲学・人間学とそれぞれの分野に師匠を持ち、学び続けてきました。
著者の父・牟田學も戦争で父親を亡くし、父親の代わりとして多くの講演を聴きに行き、日本経営合理化協会の初代会長の船田中先生や,中村天風先生を師匠としていたという。
また人脈の大切さについては、後継者は、10歳以上年上の社長の親友をつくることを著者は勧めています。親友であれば、ドン底のときに助けてくれることがあるかもしれません。また、親友の気配り・手配り・心配りに学ぶこともあるかもしれません。すべては、人脈で大きく変わるのです。
アメリカで無一文から「紅花」という鉄板焼きチェーンを創業した故・ロッキー青木氏の言葉だが,「本当に重要なのは,ノウハウではなくノウフーだ」と,彼は公園のなかで何度も言っていた(p129)
会社を継ぐ覚悟があるか
中小企業は日本の法人の9割を占めますが、その6割に後継者がいません。著者はこれを「すごいチャンス」と捉えています。後継者がいない会社は潰れるので、ライバルは自然と減っていくからです。
しかし同時に、著者は後継者に「会社を継ぐ覚悟があるのか」と問いかけます。つまり後継者とは、事業を承継し発展させるリーダーとして尊い仕事ですが、創業者の苦労を知らないという意味では大きなハンディを負っており、苦労することが予想されるからです。
覚悟を持って事業承継に臨む後継者であれば、本書は実践的な羅針盤となると感じました。覚悟のある方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。牟田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・人を集める独特の空気を持つ経営者のことを,我々は「花のある経営者」と呼んでいる・・「あの方には,花があるよね」(p12)
・幹部にすべき人は,会社への忠誠心で決める・・・独立して同業を始めてしまったり,その際お客様を持っていってしまったという話は山ほどある(p208)
・滋賀ダイハツ販売の後藤昌幸先生のところでされている「分社経営」・・・10人以下の小集団を形成することで,「誰が頑張っているのか一目で見てわかる組織」をいくつもつくっていくものだ(p160)
・新将命先生から理念を学び,三愛の元社長の田中道信先生から営業を学び,BE訓練の行徳哲夫先生から哲学を学び,滋賀ダイハツ販売の後藤昌幸先生から人を学んだ(p85)
▼引用は、この本からです

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牟田 太陽 (著)、プレジデント社
【私の評価】★★★★☆(88点)
目次
第1章 「花」のある経営者を志す
第2章 事業承継のための心構え
第3章 苦労が後継者の心を強くする
第4章 後継者が知るべき経営者の手腕
第5章 社長になったらまずやるべきこと
第6章 いつまでも強く必要とされる存在であれ
著者経歴
牟田 太陽(むた たいよう)・・・日本経営合理化協会専務理事。1972年東京生まれ。大学卒業後、アイルランドで和食レストランを創業。帰国後、入協する。以来、社長専門の勉強会「実学の門」「無門塾」「後継社長塾」などを企画・運営。企画部長、事務局長を経て2010年4月より現職。2000社を超すオーナー社長や後継者と親密な関係を築く。
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